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2013/9/14 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
これのどこが、美しい国の「お・も・て・な・し」なのか。福島原発の汚染水は日に日に深刻化しているのに、能天気に五輪招致に浮かれているニッポン。マトモな人なら、「ちょっと違うゾ」と思うところだが、案の定、東京五輪批判が噴出してきた。
作家の高村薫氏は毎日新聞の夕刊(11日付)で「五輪が東京に来ることはとても喜ばしい」としつつも、こんな懸念を示していた。
「世界が懸念している福島第1原発の汚染水漏れについて、本当に国が前面に出て税金を投入して解決する気があるのなら、まずは東京電力という組織を解体する必要があります」「この国が今、本腰を入れて取り組まなければならない産業構造の転換や財政再建などの問題が、五輪の陰でなおざりにされてしまうのではないか」「本当に東京は安全な都市なのか。関西に住んでいると、南海トラフ地震がいつ起きるか心配です」
◆「お・も・て・な・し」ができる状況なのか
原発から放射能がダダ漏れしているだけではない。今年、政府の地震調査委員会が「M8以上の地震が起きる確率は30年以内に60〜70%」という衝撃試算を出した。南海トラフ地震や首都直下型地震がいつ起きても不思議ではないということだ。そりゃ、地震を怖がっていたら、投資も何もできないが、「お・も・て・な・し」ができる状況なのか。ちょっと冷静になった方がいい。
◆東電「制御できない」と安倍のウソを完全否定
きのう(13日)、東京電力の山下和彦フェローは「今の状態はコントロールできているとは思わない」と言った。「港湾内で(汚染水は)完全にブロックされている」という安倍発言の完全否定で、首相のウソが改めてクローズアップされている。
実際、外洋から目と鼻の先にある排水溝内で11日に採取した水からは、1リットルあたり220ベクレルという放射性ストロンチウムが検出された。その前日はタンク近くの井戸で1リットルあたり9万7000ベクレルの放射性トリチウムが検出された。それやこれやで、東電も「お手上げ」を認めざるを得なかったのだ。
崎山比早子氏に改めて聞いてみた。
「よくもまあ、何の根拠もない発言を世界の舞台で言ってしまったものだと、安倍首相の無責任ぶりには呆れ果てました。だって、毎日400トンの地下水が原子炉建屋の地下に流れ込んでいるんですよ? 遮水壁で防ぐ方法も確立でき染水が湾外にダダ漏れになる状況であることは小学生でも分かる。もし分からないとしたら首相の知的レベルを疑うしかないし、分かっていて『コントロール下にある』と言い切ったのであれば、世界をダマした大ウソつきということになる。どちらにしても、そんな人がこの国の首相でいることは恥ずかしい」
ハッタリをかまして五輪を招致しておいて、汚染水がどうにもならなければ、日本の信用はガタ落ちだ。そうなったら五輪で国威発揚どころか赤っ恥もいいところ。株価は暴落し、消費税大増税に苦しむ国民生活はダブルパンチを食らってしまう。五輪がアダになるのである。
◆放射能、大地震、ゲリラ豪雨…不安をすべて隠して強行
こうして見ていくと、今度の五輪では浮かれる神経が分からない。放射能の恐怖、地震のリスク、ゲリラ豪雨や竜巻など、何だか、不吉な要素がいっぱいだ。しかし、こうした不安もすべて隠し、あるいはウソついて、ダマして、五輪招致を強行したのがニッポンだ。黒を白と言いくるめ、無理に無理を重ねた招致である。
大メディアは滝川クリステルらの最終プレゼンがIOC委員の心を掴んだと騒いでいるがまったく違う。最終プレゼンの前に委員を“落とさなければ”勝負にならない。無理筋だった招致成功の決め手となったのは、カネとスシだ。つまり、見返りと接待である。これは五輪では常識だ。
JOCは昨年7月、5000万円強をかけてロンドンに活動拠点の「ジャパンハウス」をオープンさせた。IOCの副会長や委員ら200人を招き、銀座の有名店の職人に寿司を握らせ、大盤振る舞いした。
「“陰の立役者”といわれている招致委員会副理事長の水野正人氏は、田園調布の自宅にIOC委員を招き、ロビー活動に励んだと報じられました。IOCは接待を禁止していますが、“友人同士の交際”は認めていて、水野氏にはミズノ社長時代から家族ぐるみの付き合いをしているIOC委員がいる。『マサトの家での寿司パーティーを楽しみにしている』と言ってはばからない委員もいたそうです」(スポーツライター)
◆地方は置き去りの「人でなし」
安倍は中東を中心に外遊を繰り返し、自ら招致外交を繰り広げた。もちろん、手ぶらのわけがない。浅ましい招致活動について、ジャーナリストの斎藤貴男氏は本紙コラムで〈3・11の被災者や被曝者が何らの展望も抱けずにいる中で、招致活動を続けたこと自体が人でなしなのだ〉と書いていた。
切り離した福島を尻目に、自分たちは招致活動と称して、怪しい会合を重ねてきたのだから、まさに「人でなし」と言われてもグーの音も出まい。
こんな無理筋の五輪が成功するのか。どこかで無理が露呈するのではないか。2020年までの7年にもっと不吉なことが出てくるような気がする。
財政がカツカツなのに、東京一極集中のインフラ整備に巨額のカネをかけるのか。そんな異常な使い方をしていれば、ただでさえ過疎化が進んでいる地方は置き去りにされてしまう。
今年の集中豪雨で深刻な被害を受けたのは地方のお年寄りだ。もちろん、東日本大震災の被災地も取り残されたままだ。それなのに原発はなし崩しに再稼働。すべては五輪のためで、ワッショイワッショイ……。どこかタガが外れてしまっているこの国は今後、ロクなことにならないような気がするのだ。
元国会事故調査委員の医学博士・崎山比早子氏は同日の毎日新聞でこんな心配を吐露していた。
「『福島の状況はコントロール下にある』というIOC総会での安倍首相の言葉には言葉を失いました」「航空写真を見ると、汚染水タンクが設置された地盤の基礎工事は万全とはいえないように見える。漏水や大雨で地盤がゆるんだらと思うとぞっとします」