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2013/9/6 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
政府発表の色々な数字は景気回復傾向で消費税増税の環境が良くなっていると麻生愚鈍財務相はおトボケだが政府とグルの大新聞はなぜ現実や真相を伝えない
日銀がきのう(5日)、金融政策決定会合で景気判断を「緩やかに回復しつつある」から「緩やかに回復している」に引き上げた。
その根拠になったのが、直前の2日に財務省が発表した数字だ。4―6月期の法人企業統計で、設備投資が前年同期比0・02%増の8兆3106億円と、3四半期ぶりにプラスに転じたのである。
この動きはロコツだ。8月12日に発表された4―6月期のGDP速報値では、景気回復の指標となる設備投資がマイナスだった。それで、甘利経済再生相も「設備投資回復をピンポイントで後押しすることが重要」と言っていた。そうしたら、ぎりぎりプラスの数字が出てきたのだ。
設備投資がプラスになったことで、内閣府が9日に発表するGDP改定値は、速報値の2・6%から大幅に上方修正される見通しだ。民間シンクタンクの予想では、年率4%前後に上昇するとみられている。
◆鉛筆ナメナメで微増のマヤカシ
この数字を安倍首相が消費税増税の判断材料にするワケで、すべてがシナリオ通りの展開だ。ハッキリ言えば、設備投資なんて、どうにでもなるのだ。
「政策的な思惑を背景にした景気指標には、恣意的な部分が見え隠れし、“ホンモノ”の数字かどうかは疑わしい。設備投資の数字が『良くなった』というより、鉛筆ナメナメで『良くした』と言う方が正しいと思いますね。少なくとも、増加のトレンドが数カ月は続かないと、景気が回復基調にあるとは言えません。それに、今回、設備投資の改善に寄与したのは非製造業ばかりです。サービス業や不動産などの伸びが全体を底上げしている。一時的なバブルの要素が大きいのです」(経済ジャーナリスト・有森隆氏)
実際、子細に見ると、製造業は前年同期比でマイナス9・1%と大幅マイナスだ。しかも、3四半期連続で減少している。中国、韓国の経済が鈍化している上に、安倍政権になって外交関係が険悪になり、ますます輸出が不透明になっているので、とても設備投資どころじゃないのだ。
「国内消費はなおのこと増える見込みがありません。投資減税をやったところで、国内に投資しようという企業は皆無でしょう。なぜなら、アベノミクスを信用していないからです。多くの企業が、このまま景気が良くなるとは考えていない。先が見えないのです。だから、給料も増やさない。そこは、経営者はシビアですよ。アベノミクスは、なんとなくムードに流されているだけで実体がない。幻想が冷めれば、あっという間に底が割れます」(有森隆氏=前出)
こういう視点で見ると、経済の実相が鮮明になる。設備投資が伸びているのは、ムードに左右される業界だけだ。株高もあったし、メディアが浮かれて、景気回復ムードを煽った。それでサービスや不動産関連がちょっとマシになっただけのこと。それでも0・02ポイントの微増なのだ。景気は本来、製造業の設備投資が増えなければ、力強い回復は望むべくもない。それがドシャ降りなのに、こんなマヤカシの数字で増税されたら、たまらないのだ。
安倍は他にも各種指標を参考にして増税の是非を判断すると言っているが、中でも重要なファクターになるのが、3カ月に一度の日銀短観だ。次回は10月初めに公表される。
その日銀が、今回の政策決定会合で景気判断を引き上げたのも、増税に向けた“一連の流れ”なのだろう。消費税増税のための景気指標。そう言ってもいいくらいだ。
◆金融緩和の結果が出るまで「1年半待ってくれ」
それじゃあ、実際の景気はどうなのか。
日銀の岩田副総裁は先月28日に京都市内で講演した際、「金融緩和を粘り強く続ければ、必ず実体経済は良くなる」と強調したが、その一方で、賃金上昇などの明確な好影響が出るまでには「長ければ1年半かかる」とも言っていた。実体経済が良くなるまで、あと1年半待ってくれというのだ。
安倍のブレーンである浜田宏一内閣官房参与や本田悦朗内閣官房参与も、「いま消費税を8%に上げるべきではない」と言っている。
断っておくが、これはアベノミクス反対派の発言ではない。どっぷりアベノミクスにつかった“シンパ”たちの見解だ。彼らの意見は、盛んに景気回復を喧伝する日銀や政府の「公式見解」とは全然違う。この矛盾が、すべてを物語っている。
埼玉学園大教授の相沢幸悦氏(経済学)が言う。
「いまの日銀は政府の手下でしかありません。無理をしてでも景気回復を宣言し、増税を確実に実行する下地づくりをアシストしている。しかし、それが危ういことは黒田総裁だって分かっている。だから、5日の政策決定会合後の会見では追加の金融緩和にも言及したのです。日銀はもはや政府と一蓮托生。マネーをジャブジャブにして資産バブルをつくるしかない。増税で株価が暴落すれば買い支える。政府と心中するつもりで、見せかけの景気回復を演出し続けるしかないのです」
麻生財務相らは「指数は総じて景気が上昇しつつあることを意味している」「消費税を上げる環境が良くなっている」とスットボケたことを言っているが、口先だけだ。
◆増税のために大型補正を組む支離滅裂
安倍政権の発足から9カ月。この間、異次元緩和で余ったカネが投機に回り、株価を一時的に押し上げたが、その化けの皮もはがれて、今は毎日のように乱高下。円安だって、シリア情勢などに振り回されてジェットコースターだ。
これがアベノミクスの正体で、景気を下支えするような強固な回復は、てんで見られないのである。
「アベノミクスの最大のポイントは給料が増えるかどうかですが、基本給は14カ月連続のマイナスです。これがあと1年半も続けば、物価だけが上昇するスタグフレーションによって、庶民生活は圧迫され、ますます景気は悪くなる。そうなれば、デフレ脱却なんて不可能です。日本経済はガタガタになってしまう。もちろん、増税時には景気対策の補正予算をバーンと組むのでしょうが、それが10兆円だとして、消費税4〜5%分に相当する。それなら、ハナから消費税を上げなければ済む話です。増税のために大型補正を組むなんて、アクセルとブレーキを同時に踏むようなもので支離滅裂です。安倍首相は精神分裂かと疑いたくなります」(経済アナリスト・菊池英博氏)
◆五輪招致に失敗すれば後がない
その安倍は、G20に出席するためロシアを訪れているが、きょう(6日)にもIOC総会が開かれるアルゼンチンのブエノスアイレスに飛ぶ。2泊6日の強行軍だ。
なぜ、そうまでしてアルゼンチンに行くのかといえば、オリンピック招致を逃せば、アベノミクスはおしまいだからだ。
「この秋には消費税増税の判断に加え、シリア問題、米FRBの次期議長選出など、さまざまな問題が顕在化します。シリア情勢次第では、原油価格がハネ上がり、超円高に振れるかもしれない。FRBの新議長がQE3の終了を宣言すれば、米国の株価が下落し、そうなれば日本はひとたまりもありません。ムードだけで引っ張ってきたアベノミクスにとって、この秋は正念場なのです。3本の矢といっても、中身がなく、オリンピック招致が唯一の成長戦略と言っていい。招致に成功すれば、期待ムードを引っ張ることもできますが、これに失敗すれば、後がないのです」(相沢幸悦氏=前出)
だから、必死なのだが、ウラを返せば、日銀や政府がアピールする「景気回復」は、その程度のものだということだ。
政府が発表するあらゆる景気指標はマユツバと思った方がいい。