米国よ、戦争によって国際ルールを守るだと?
国連調査団にもう少し時間を与え、平和に機会を与え、政治的手段でシリア危機を解決せよ。(人民日報「鍾声」国際論評)
国際社会の正義の声は米国の独断専行を阻止できず、米政府は戦争準備を整えつつある。大義なきイラク戦争、およびそれがイラクの人々にもたらした苦難に、米国が全く道義的引け目を感じていないのは明らかだ。
オバマ米大統領は8月31日の声明で、時機を選んで軍事攻撃命令を下すと発表。米議会の承認を求める方針も明らかにした。また「残虐行為を行った者は代償を支払わねばならない。化学兵器の使用禁止という国際関係の基本ルールを破壊する行為は制止されなければならない」との「メッセージ」を軍事行動によって発する考えをはっきりと述べた。
国連を避けて、主権国家に対して勝手に戦争を発動する。これが国際関係の基本ルールを守っているのか?「武力行使の禁止」は国際法の基本原則であり、国連憲章の核心でもある。これには例外が2つだけある。憲章にのっとり合法的自衛権を行使する場合と、安保理が憲章の規定にのっとり集団的安全保障行動に出る場合だ。それ以外の武力の使用または武力による威嚇は、全て不法だ。
米国とその追随国は「人道目的の介入」を説得材料とし、「保護責任」を軍事介入の理由にしようと企てている。だが「人道目的の介入」も「保護責任」も政策的概念に過ぎず、成熟した国際法の規則となるにはほど遠く、現有の国際法に取って代わるなどとはなおさらに言えない。英フィナンシャル・タイムズでさえ「法的に言って、国連安保理の決議がなければ、こうした原則も用いようがない」と明確に指摘している。
米国は強大な軍事力を持つだけでなく、力を行使する「道義上の高みにある」とのロジックも使っている。このロジックは、いつでも始まりうる軍事行動と比べても、さらに悪質だ。米国は国際社会には理解しがたく、受け入れることもできないロジックを用いて問題について考え、決定をしている。これは全くの傲慢さ、唯我独尊の横暴さ、我が道を行く傍若無人さを意味する。また、米国が必要と考えさえすれば、いつでも軍事行動を起こす可能性があるということも意味する。これがもたらす安全喪失感は国際関係システムにとって大きな衝撃だ。
現行の国際関係の基本ルールは、二度にわたる世界大戦の痛ましい経験に基づき、一歩一歩構築されたものであり、多大な苦難と引き換えに得た覚醒と知恵の結晶だ。平和と同様、国際関係の基本ルールも空気や陽光のように恩恵を受けている間は意識しないが、失えば生きていけないものだ。この点については、米国も全く知らないわけではなかろう。さもなくば、オバマ大統領が国際関係の基本ルールを守ることを軍事行動の理由とすることもあり得ない。強調しておく必要があるのは、武力行使はジャングルの掟を強化するだけであり、この原始的掟は低級で、劣等で、血腥さと暴力をもたらすだけであり、国連憲章に凝縮された国際関係の基本ルールのように世界に平和と安寧をもたらし、素晴らしい明日へと向かう希望を人類に与えることは全くあり得ないということである。
誰が化学兵器を使用したのであれ、厳しい非難と制裁の対象となる。この点において、国際社会になんら溝はない。事実関係をはっきりさせることが、行動に出るための前提であり条件だ。戦争と平和に関わる重大な問題において、各国は慎重かつ歴史に責任を負う姿勢で臨むべきだ。もし米国が国際関係の基本ルールを一体守っているのか破壊しているのかの識別力を完全に失い、国連の権威ある調査結果を待つ忍耐心を失ったのならば、世界にとっての悲哀であるのみならず、それ以上に米国にとっての悲哀だ。歴史上、識別力と忍耐心を失った強国は枚挙にいとまがない。繁栄と衰退の法則は示唆に富む。(編集NA)
「人民網日本語版」2013年9月2日