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2013/8/29 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
最も重要な中国、韓国との関係改善には全く動かず表向きは大歓待してくれ居心地の良さを求める弱虫首相外交の卑屈な現状
ゴルフ漬けの夏休みを終えた安倍首相は、24日から中東とアフリカを歴訪している。訪問先はバーレーン、クウェート、カタール、ジブチの4カ国。官邸によると「地球儀俯瞰外交」と呼ぶそうだ。
バーレーンでは国王から勲章を授与されるなど、首相は訪問した先々で歓迎され、ゴキゲンだという。
よほど外遊が楽しいのか、首相は「月に1回は外遊を入れていこう」と周囲に伝えているそうだ。実際、首相の外遊は異常なハイペース。昨年12月の就任以来、8回も外遊を重ね、訪問先は20カ国に達している。
驚くのは、その訪問先だ。なぜか中東と東南アジアに偏っている。東南アジアは、ベトナム、タイ、インドネシア、ミャンマー……など、ASEAN加盟10カ国のうち7カ国に行っている。中東も4〜5月にアラブ首長国連邦とサウジアラビアを訪ねたばかり。短期間に2回も中東を訪ねるのは異例のことだ。
なぜ、中東と東南アジアにばかり行っているのか。答えは明らかだ。
「行けば歓迎され、居心地がいいからです。ASEAN諸国にとって日本は、ODA支援してくれる大スポンサーだし、中東諸国にとっては原油を買ってくれるお得意さま。首相が足を運べば、下にも置かない扱いをします。友好国だから会談で関係が悪くなることもない。首相は王様気分でしょう」(政治評論家・山口朝雄氏)
要するに、自分をヨイショしてくれる“優しい国”を選んで訪問しているということだ。首相は「東南アジアに行くと歓迎してくれるんだよ」とうれしそうに話しているそうだ。
◆なぜ中国、韓国との関係改善に乗り出さないのか
しかし、「地球儀俯瞰外交」だかなんだか知らないが、こんなもの外交と呼べるのか。本来、首脳外交は、国益が激しくぶつかっている国と行うべきものだろう。
いま首相が向き合うべき相手は、中東や東南アジアではなく、国益がぶつかり関係が悪化している中国や韓国のはずだ。なのに、中、韓との対話から逃げているのだから、どうしようもない。
そりゃ、東南アジアの発展途上国に行ってカネをバラまけば歓迎してくれるだろうが、それを首脳外交と思っているとしたら大間違いだ。
「外交は重要な国から手をつけるのが基本です。いま日本にとって一番の外交案件は、中国、韓国との関係です。隣国なのに首脳会談は1年半も開かれていない。これは異常なことだし危険なことです。日本は嫌でも中、韓と付き合っていかなければならないのだから、首相は大急ぎで関係改善に取り組むべきです。国益を考えると、このまま放置していたら、いいことはなにもない。とくに世界第2位の経済大国である中国との関係は、日本経済にとっても死活問題です。ところが、首相は動こうともしない。これでは無策と批判されても仕方ありません」(元外交官の天木直人氏)
首脳外交とは、時には命がけでやらねばならないものだ。困難でも、逃げずに取り組むことが求められる。冷戦時代、旧ソ連と対峙してきた歴代の首相や外相は「クレムリンに行ったら生きて戻れないかもしれない」と覚悟して首脳外交をしてきた。
なのに、安倍首相は、中、韓との対話に背を向け、「東南アジアに行くと歓迎してくれるんだよ」とニタついているのだから、話にならない。
◆カネをバラまいている東南アジアも従わない
安倍首相が滑稽なのは、笑いものになっているとも知らず、自分は「戦略的外交」をしていると思っていることだ。
東南アジアを集中的に訪問しているのは、ASEAN諸国を日本のシンパにし、中国を友好国で「包囲」するためらしい。しかし、本気で包囲網を敷けると考えているのなら、オメデタイにも程がある。
たしかに、首相が行けば東南アジアは歓迎してくれるだろうが、ASEAN諸国は「カネをくれるのだからヨイショしておこう」「もらわなければ損だ」と、舌を出しているのが実態である。首相の考えに従うつもりなどサラサラない。
「東南アジアのなかで、日本とタッグを組んで中国と対抗しようと考えているのはフィリピンくらいのものです。他の国は日本より中国の影響力の方が強い。日本が自分たちの陣営に引き込むのは簡単じゃありません。象徴的なのは、ミャンマーです。安倍首相は5月、ミャンマーに対して、2000億円の対日債務を帳消しにすることを約束しています。ところが、8月に行われた国際空港建設の入札で、日本企業は敗退し、韓国企業に落札されてしまった。もし、経済援助することで日本の勢力圏に置けると考えているなら勘違いです」(天木直人氏=前出)
しょせん、安倍首相のオツムでは、複雑な外交は手に負えないということだ。嫌なことから逃げ、自分を大事にしてくれる国としか付き合おうとしないのだから論外である。
◆世界中が「アメリカの属国」とバカにしている
このまま安倍首相に外交をやらせていたら、日本は国益を損ねるだけだ。中、韓との関係も一歩も前に進まないだろう。
「戦略外交」をやっているつもりの安倍首相は、「いずれ中国はスリ寄ってくる」と大口を叩いているそうだが、中国がスリ寄ってくるとは考えにくい。
中国の対外広報メディアである「環球時報」はこう書いている。
〈せいぜい安倍政権を踊らせておこう。我々はひまわりの種をつまみながらお茶を飲み、彼らが踊りに疲れて全身汗だらけになる様子を楽しめばよい>
安倍外交はバカにされているのだ。これでは、いつまでたってもウィン・ウィンの関係にならない。
前出の山口朝雄氏が言う。
「安倍外交が致命的なのは、世界中から『どうせ安倍首相は、アメリカの言いなりだろう』と見透かされていることです。中国もアメリカと話をつければいいと考えているフシがある。実際、安倍首相はアメリカに文句ひとつ言わず、従属している。危険なオスプレイを唯々諾々と受け入れ、アメリカの意向に従ってTPPに参加しようとしている。TPP交渉では、マレーシアやベトナムといった国でも、アメリカとケンカしているのに、首相は絶対に逆らわない。アメリカと対等な関係を築こうという気概はゼロです。これでは中東諸国も、ASEAN諸国も、日本を尊敬しませんよ」
安倍首相の外交は、あまりに品がない。なぜ、難問と真正面から対峙しようとしないのか。ただでさえ日本は経済力が落ちて国際社会での影響力が低下しているのに、首相が訪問先で税金をバラまいて浮かれているようでは、ますます世界からバカにされるだけだ。