http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE97M05R20130823
2013年 08月 23日 18:30 JST
[東京 23日 ロイター] - 米量的緩和の縮小懸念をきっかけにして、ファンダメンタルズの脆弱な新興国通貨への売り圧力は当面残るとの見方が多い。しかし、米国や日本など先進国のファンダメンタルズは比較的しっかりしていることから、ドル/円への下押し圧力が高まる可能性は低いとみられている。
米量的緩和の縮小懸念から、今週はインドネシアルピア、インドルピーを筆頭に新興国のとりわけファンダメンタルズが脆弱な国の通貨に強い売り圧力がかかった。インドネシアルピアは2009年4月以来の安値圏に急落、インドルピーは史上最安値の更新が続いた。各国の当局が対策を打ち出し、23日には売り圧力が一部後退したが、経常赤字、財政赤字に苦しむ新興国の通貨は、引き続き強い売り圧力にさらされるとの見方が根強い。
ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの村田雅志シニア通貨ストラテジストは、新興国通貨への売り圧力が高まるかを決めるのは米国債の利回りだと指摘する。23日、新興国通貨への売り圧力が後退した背景には米金利の上昇が一服したことがある。来週はインド、ブラジルのGDPなど重要な経済指標の発表が相次ぐが、米金利との観点で、来週は新興各国より米国の経済指標が重要になると話す。
<ファンダメンタルズの違い>
新興国の金融資産に売り圧力がかかるなかでグローバルレベルで株安傾向に陥ったり、新興国通貨が急速に下落する場合には円買い圧力が強まる可能性もある。ただ、今週のドル/円は堅調に推移し、23日には99円前半に上昇した。
三井住友銀行の岡川聡シニアグローバルマーケッツアナリストは、先進国と新興国の景気のトレンドに明確な違いがあることでドル/円、ユーロ/円という先進国同士の通貨ペアには新興国通貨安の影響が及びにくいと話す。
足元、米国景気は量的緩和の縮小が視野に入るほどに回復し、ユーロ圏景気も底打ち観測が広がっている。対照的に中国景気は脆弱で、中国の資源需要に多くを依存する一部の資源国や新興国の景気は逆風に見舞われている。
「新興国に売るべきものはまだたくさんある」(大手信託銀行)――市場関係者は、少なくとも9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で量的緩和の縮小について詳細が明らかになるまでは、新興国の通貨に売り圧力が継続するとみている。ただ、リスクオフムードが高まるような急落が起こらない限りは、ドル/円という先進国同士の通貨ペアにとっては当面、影響の少ない「対岸の火事」のように映るかもしれないという。
(ロイターニュース 和田崇彦 編集:伊賀大記)