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2013年08月15日 在野のアナリスト
エジプトで、モルシ前大統領派のデモ隊を、治安部隊が強制排除にでて戦闘状態となり、混乱がつづいています。ムバラク政権の経済失政にはじまり、次に選挙でえらばれたムスリム同胞団系のモルシ氏が、1年で経済が回復しないからと引きずり下ろされ、混迷の一途となっています。短期で経済を回復させないと、国民の支持が移ろいやすい現在、どの政党が政権を担っても同じでしょう。それが分かっていても、閉塞感を打破するために行動せざるを得ない、苦境が見え隠れします。
原油相場が右肩上がりですが、イランで穏健派の政権が誕生したものの、中東がふたたび混乱する、その材料で買いが膨らんでいる状況です。米国が原油採掘を増やしている現在、供給懸念は低いのですが、投機マネーは材料がある方向に傾く。エジプト情勢の混迷は、まさに投機マネーの材料として、今はもっとも熱い視線が注がれているのでしょう。
日本株が大幅下落です。菅官房長官や麻生財務相が、安倍首相による法人税減税については、まだ指示すら出していない、効果に疑問、と述べたことで、ここ2日ばかりの上げを帳消しにした形です。財務省の反発が凄まじく、政権側が腰砕けになった形ですが、ここに来て面白いデータがあります。法人税の実効税率は、米国に次いで日本が高い、が語られていましたが、2011年1月時点で、GDP比での法人所得課税負担率は、日本が1.9%、英国が3.6%、韓国が3.9%というのです。つまり、国として生み出された利益からみると、日本企業は如何に税負担を逃れているか。数字として表れている、というのです。
一部には、2000年代前半に処理した不良債権により、金融機関が繰越欠損金を抱えていた、という事情もあります。しかし日本が抱える問題は、法人税の実効税率の高さより、国の経済活動における法人税収の少なさ、であることがこの数字で分かります。小泉政権下で、繰越欠損金の年限を延ばしていますが、こうした仕組みを改めて見直し、税収アップに務めた方が、財政への寄与も高い。消費税は景気を冷やしますが、繰越欠損金の年限を短くしても、景気は冷やさない。むしろ、こうした経済政策の方が、安倍ノミクスの目的に合致しているといえるのでしょう。
エジプトは、短期の成果をもとめる余り、国が荒れています。安倍政権は、短期の成果をだしたので評価されている面もありますが、安倍ノミクスは長期間、継続できるようなものではありません。むしろ、長期になればなるほど弊害が目立つ、といえる経済政策です。そして、日本の世論調査をみても、未だに経済政策がお願いしたい政策のトップに挙げられるのは、国民に実感がないことの証左です。このタイミングの消費税増税が、景気を冷やすことは語るまでもありません。
経済政策で迷走をはじめた安倍政権、ガソリン価格の値上がり、賃金上昇がない中での物価高騰など、国民の悲鳴が怨嗟に変わるとき、政権を引きずり下ろす動きが、国民の中から上がることにもなるでしょう。今日は終戦記念日ですが、霞ヶ関との開戦日として、今後の政権運営に暗雲も漂い始めたのかもしれませんね。