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2013/8/13 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
本欄は書評欄ではないのだが、今回はどうしても紹介しておきたい本がある。リチャード・E・ルーベンスタイン著、小沢千重子訳「殺す理由――なぜアメリカ人は戦争を選ぶのか」(紀伊国屋書店)。米国ジョージ・メイソン大学教授(専攻は国際紛争解決)による歴史書だが、私にはその内容が大ニュースだと感じられたのである。
アメリカは世界で最も好戦的な軍事大国だ。本書によれば、第2次世界大戦の以後だけでも、本格的に武力を行使した事例が優に150を上回り、数百万人もの外国人の命を奪ってきた。
1830年代にはフランスの政治思想家トクヴィルの名著「アメリカのデモクラシー」で、「平和愛好者」と評された人々が、なぜ? 著者の分析は多岐にわたるが、特に興味深いのは「自衛」概念の変質に関わる記述だ。アメリカの戦争はどれも合理的な自衛権の行使だと説明されてきたのだが、実は直接の攻撃など受けていないケースがほとんどであるという。
〈彼らの多くが脅威と感じれば、それに対する行動も自衛と見なされるようになった〉
しかも“自衛権”が発動される基準は、時代とともに低く軽く、簡単になっている。
国民や領土ばかりが自衛の対象ではない。国内の諸制度、さらにはアメリカ的な価値観も自衛する。そして今日、超大国としての権益の何もかもが、断じて脅かされてはならないものなのだ――。
〈いかなる前進拠点であれ(引用者注・たとえば多国籍企業の営業所)、それがわれわれの拠点であるというだけの理由でその防衛が正当化されうるなら、既得の拠点を守るために新たな征服行動を始める権利があることになるからだ。これは典型的な帝国主義的領土拡張のロジックである〉
そのようなアメリカとの一蓮托生路線を、わが安倍晋三政権は従来にも増して進めようとしている。彼らが目指す集団的自衛権行使の範囲拡大が実現した暁の自衛隊、あるいは自民党憲法改正草案がうたう国防軍が帯びさせられる役割は、火を見るよりも明らかなのではあるまいか。
アメリカは世界中から憎悪されている。強大すぎるから報復されにくいだけの話だ。 日本が憲法9条を捨て去れば、それはアメリカへの同化宣言にも等しい。帝国主義の手先に成り下がった国民は、それ相応の復讐がなされる可能性を覚悟する必要があるだろう。いわゆる日米同盟の深化とは、つまり、そういうことなのである。