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2013/8/5 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
予想通りである。国会のねじれが解消したとたん、安倍政権の暴走が始まった。
それも、麻生副総理が「ナチスの手口を学べ」と暴言を吐いた直後、内閣法制局長官の交代人事を固めたのである。さながら、ナチスのように、気がついたら憲法解釈が変わっている。集団的自衛権を容認し、事実上の改憲が行われてしまう。あまりに露骨で乱暴な話だが、安倍は本気だ。
小野寺防衛相は、きのう(4日)のNHK番組で、年内にまとめる防衛大綱に集団的自衛権の容認を反映させたいと意気込んでいた。そうなれば、米国の戦争に自衛隊は自動的に組み込まれ、火器をぶっ放すことになる。事実上の9条放棄ということになる。
かと思うと、閣内ではウルトラ右翼の筆頭とされる稲田行革相が終戦記念日の靖国神社参拝を希望し、官邸は了承。党の方では高市政調会長が8月15日に靖国を参拝する気でいる。まさしく、選挙が終わったとたん、タカ派の本性むき出しではないか。
「参院選が終わるまで猫をかぶっていたのですよ。安倍首相はそうやって、選挙で『親のカタキ』のリベンジを果たした。数さえ押さえれば、あとは念願のやりたいことをやっていく。そこには熟議の謙虚さがなく、『俺たちは信任された。文句あるか』という傲慢な態度が見え隠れします」(政治評論家・野上忠興氏)
これでは、またまた中国、韓国の反発を招くのは間違いない。安倍は中韓に対し、「対話のドアはオープンにしている」と言うが、口だけだ。やっていることは正反対。中韓を刺激することばかりだからどうにもならない。
もちろん、他国も極右政権を危険視していて、例えば、米NYタイムズ紙は麻生のナチス発言をこう報じた。
〈(麻生発言は、この政権が)ナチス・ドイツと結んだ大日本帝国の歴史をより肯定的に捉えたいと願っているとの不安を裏付けたと思われる〉
ここまで書かれるなんて、異常、異様だが、実際、安倍は従軍慰安婦の強制連行に疑問を投げかけ、侵略の定義にかみつき、「村山談話」の見直しを示唆して、物議をかもした。トドメが麻生発言なのである。
世界が不安になるのも無理はない。
◆戦前を彷彿させる「経済協力」と「価値外交」
尖閣や歴史問題で中韓との関係が冷え切っている中で、安倍がやたらと東南アジアに外遊するのも不安になる。
インフラ輸出などの経済協力やODA(政府開発援助)で恩を売り、「民主主義を共有する国々と連携する価値外交」とか言いながら、中国を牽制するわけだ。
この光景は日中戦争が泥沼化すると、「大東亜共栄圏」をうたった手口を彷彿(ほうふつ)させるのである。
戦前の日本は、自らを盟主とした共存共栄の広域経済圏をつくり上げるとして、アジア各国に鉄道や学校を建設した。植民地支配で欧米を敵に回し、無謀な戦争に突き進み、何百万人もの犠牲者を出した。中国と敵対し、東南アジアと連携を深めようとするのは、外交上の思惑がある。そこが戦前とダブるのである。
「安倍さんの言う『普通の国』とは、いつでも戦争できる国家ということです。選挙後、予想以上の急ピッチで憲法改正に突き進んでいることに大きな不安を覚えます。憲法改正は国民投票だけではないのです。憲法9条の捉え方を変える解釈改憲。自衛隊法などの法律を変える立法改憲。閣議決定だけで変える行政改憲というやり方もある。
日米首脳会談の共同宣言で9条の無効化を国際公約にする外交改憲という“ウラ技”もある。いまの国会で野党は無力ですから、国民運動で、なし崩し改憲を止めなければいけません」(九大名誉教授・斎藤文男氏=政治・憲法)
現在、日本の総人口に占める65歳以上の割合は23%、75歳以上は11%だ。戦争を知っている昭和10年代前半までの世代は約20%。つまり、80%以上が日本の負の歴史を知らないのだ。この世代が安倍の暴走に気づき、歯止めをかけないと、とんでもないことになる。
◆中韓は底の浅い安倍政権を嘲笑
安倍は側近に「東南アジアに行くと本当に大歓迎される。そのうち中韓もすり寄ってくる」と、大口をたたいているという。外務次官を中国に送り込んだりしてはいるものの、官邸には「無理してまで関係改善に急ぐ必要はない」という空気が漂っているそうだ。恐ろしいほどの「上から目線」ではないか。「すり寄ってくる」なんて、よく言う。足元を見てみろ、と言いたくなる。
いまや、中国はGDPで日本を追い越し、米国に次ぐ世界第2位の経済大国だ。韓国は、その中国との貿易額が全体の4分の1を占める。今年2月に就任した朴大統領が、まず北京に行ったのも、中国が大事だからである。政治でも経済でも中韓が接近し、「日本は相手にせず」というムードだ。
日本はますます、米国のポチになるしかないのだが、オバマ大統領はG8サミットで安倍との会談を事実上蹴った。
中韓はこうした国際情勢を冷静に見ている。そんな中で、日本との関係改善に積極的に動こうとするわけがない。向こうが「すり寄ってくる」なんて、勘違いもいいところだし、中韓と張り合うのは愚の骨頂なのである。
「日米関係は対米従属の関係なんです。その典型例がオスプレイの配備ですよ。米軍の司令官が横田基地への配備を検討していると発言しているのに、日本政府は米軍から何も知らされていない。オスプレイを何機、どこに飛ばすのかも知らされていません。米保険会社のアフラックのために日本郵便が全国2万カ所の販売網を差し出すのだって、どこの国の政府か、と言いたい。中国の対外広報メディアである『環球時報』は日本との関係改善を『急がない』と書きました。その書きっぷりは極めて辛辣で、日本の底が浅い外交を笑っていました」(元外交官の評論家・天木直人氏)
環球時報は〈せいぜい安倍政権には踊らせておこう。我々はひまわりの種をつまみながらお茶を飲み、彼らが踊りに疲れて全身汗だらけになる様子を楽しめばよい〉と書いた。安倍はバカにされているのである。
◆世界の常識か懸けけ離れていく日本
朝鮮日報の社説も痛烈だ。
〈第2次世界大戦終戦後、世界各国はヒトラーとナチスを肯定的に捉える言葉や行動をタブーとしてきた。日本は第2次大戦でヒトラーのドイツと手を組み、ドイツがユダヤ人や欧州諸国に対して行った以上の虐殺や蛮行を、韓国や中国をはじめとするアジア各国に対して行った。このような国が本当に歴史を振り返ることができれば、いかなる場合でも「ナチスの手口を参考に」などと語るべきでないことくらいは分かるはずだ。それが政治指導者に求められる最低限の常識であり教養だ。日本の政治家のレベルはなぜここまで落ち込んでしまったのか。「安倍の日本」は徐々に世界の普遍的価値と常識から懸け離れようとしている〉
それなのに、何様のつもりなのか、拳を振り上げ、中韓を敵視し、改憲を急ぐ安倍政権。国民運動を起こさないと、取り返しがつかなくなる。