グレー情報・流言・デマなどを広める人達を類型化しましたが、そこから今回に当てはまりそうなものをピックアップします。
1.放射線恐怖症を広げることで反原発をしている人達・組織。
2.自分の糧を多く得たいがために発信している人達。(売れれば、視聴率さえ上がれば、というメディア関係にも多い)
3.科学より主義・主張が先で、自分の主義・主張を通すためならどんな手段でも使えると勘違いしている人達。
6.単なる勉強不足で科学的な間違いに気が付かない人達。(可能性がゼロでない事を隠れ蓑にして恣意的に詭弁・煽りを発信したり、定量情報に恣意的に目を瞑り定性情報のみ発信する事もある様だが、)
・・・
ポストさんてん日記から
http://icchou20.blog94.fc2.com/blog-entry-244.html
週刊文春 郡山4歳児と7歳児に「甲状腺がん」の疑い のデマ記事のまとめ
[ 2012/03/01 (木) ]
表記に関する情報をまとめてアーカイブします。
時系列に沿って、
1.週刊文春に「言ってないこと書かれている」 「甲状腺がん疑い」記事に医師が反論
2.[togetter]おしどりマコ・週刊文春編集部緊急記者会
3.[togetter]PKAnzug さんの、文春記事関連、甲状腺癌・検査事情説明(含む、経過観察)
の順になりますが、アーカイブとして価値があるのは3項であり、本エントリーの真の目的は、このPKAnzug先生による解説のアーカイブです。
1.「J-CASTニュース」2012/2/24 週刊文春に「言ってないこと書かれている」 「甲状腺がん疑い」記事に医師が反論
(全文引用)
福島県から札幌に避難している人に対して超音波(エコー)検査を行ったところ、甲状腺に異常が発見されたなどと報じた週刊文春の記事をめぐり、波紋が広がっている。
検査を行った医師と弁護士が記者会見を開き、記事には「事実と違うことや、言ってはいないようなことがある」と反論したのだ。これを受け、文春側も会見を開いて改めて説明する予定だ。
「児童にはほとんどないことですが、がん細胞に近い。二次検査が必要です」
問題とされているのは、首都圏では2012年2月23日に発売された週刊文春3月1日号に、「衝撃スクープ 郡山4歳児と7歳児に『甲状腺がん』の疑い!」と題して掲載された記事。
それによると、
7歳女児(検査当時)の小さな喉にある甲状腺に、8ミリの結節(しこり)が、微細な石灰化を伴ってみられた
といい、記事の筆者は、このように連絡を受けたという。
4歳児で10ミリと4ミリの結節がある子がいる。郡山から来た7歳の女の子や、その他にも異常が出ている。みんな、福島からの自主避難者だ
また、超音波の画像を見た医師は、女児の母親に対して、
児童にはほとんどないことですが、がん細胞に近い。二次検査が必要です
と発言したという。
エコー検査行った医師、「甲状腺がんの疑い」の根拠を否定
この記事を受け、エコー検査をした「さっぽろ厚別通内科」の杉澤憲医師と弁護士が12年2月23日夕方に会見し、記事の内容に反論した。
杉澤医師によると、甲状腺の検査を受けた18歳以下の人は170人おり、そのうち「5.1ミリ以上の結節や20.1ミリ以上の嚢胞」が確認され「B判定」だとされた人が4人いたが、精密検査の結果、いずれも良性だと判定された。「甲状腺の状態等から判断して直ちに二次検査を要する」とされる「C判定」の人はいなかった。
杉澤医師が会見で配布した正誤表には「明らかな事実誤認」6点が指摘されている。中でも、記事中の、
札幌で甲状腺エコー検査を実施した内科医が言う。
『しこりのあった7歳女児と4歳男児の2人に加え、19歳以上の「大人」9人の計11人に、甲状腺がんの疑いがありました。うち成人女性1人は既に甲状腺がんが確定、切除手術を行うことも決まっています。いくら「5歳以下で5ミリ以上の結節ができることはない」と言われても、今回検査をして、これが出たことは事実です』
という記述について、
「そのような話はしておりません」
と全否定している。「甲状腺がんの疑い」だとされる、記事中の大きな根拠が否定された形だ。
杉澤医師は、
「僕自身は良かれと思ってやったことが、このように(記事として)出されてしまったことが多くの人を不安に陥れてしまったかもしれないと思うと、少し残念でならない」
と述べる一方、小児甲状腺がんは被ばくから4〜5年で発症するとされていることから、出来るだけ多くの人について詳細に経過を観察できるようにする検査態勢づくりを訴えた。
なお、この文春の記事は、「自由報道協会理事おどしりマコと本誌取材班」とクレジットされている。自由報道協会の上杉隆代表は、記事について、
長期に亘る取材と綿密な裏取り作業があったことは証明できます
とツイートしており、自由報道協会は、おしどりマコ氏と週刊文春の編集部が2月25日19時から記者会見を開くと発表している。
2.[togetter]おしどりマコ・週刊文春編集部緊急記者会見
動画と書き起こしを掲載しているtogetterですが、コメント欄のみを見ても“押して知るべし”です。むしろコメント欄の方がレベルは高いです。
その中から、池田信夫さんのコメント
自由報道協会の自爆。「甲状腺癌」も嘘だし、「原発事故との因果関係もわからない」と認めた。最大の責任は、こんなあやふやな話をトップ記事にした文春にある。
取材した相手が記者会見で事実を否定したのに、「見解の相違だ」と主張する文春と「向こうが話を翻した」という上杉某。こういう言い訳が許されるなら、どんな作り話もできる。
【追記】
ここまでの詳しい経緯、具体的には「本来取り上げるべきテーマが、見事に明後日の方へねじ曲げられてしまっている姿」を、OSATOさんがまとめています。
●「杜の里から」2/29 週刊文春のトホホな見出し
3.[togetter]PKAnzug さんの、文春記事関連、甲状腺癌・検査事情説明(含む、経過観察)
PKAnzug先生(北海道大学病院核医学診療科)の解説は“知る人ぞ知る”、甲状腺関係で的確かつ判りやすいものと思います。本ブログでの登場は2回目です。前回は下記のエントリー。
●“福島の子 10人の甲状腺機能に変化”に関する情報まとめ
今回もございました。
(原意を損なわない範囲で改行、太字加工して、全文引用)
さて、例の文春記事に関してはいろいろ言われているようですが、かなり正論を言ってる人でも微妙に間違っていたりする部分があるので、甲状腺癌について少し書きましょうかね。
まず確認ですが、あの記事に関連して重要なのは、子供2人の甲状腺腫瘍が良性か悪性かではなく、良性であれ悪性であれ原発事故とは関係がないということです。単に子供の甲状腺癌がスクリーニングで見つかった、という話なら普通にありうる話で、原発に絡めて煽ってるのが致命的に間違ってる。
実際にあの子供の甲状腺腫瘍が良性か悪性かに関しての見立ては、直接診察してない以上何とも言い難いですが、伝聞で判断する限りは「多分良性だけど悪性の可能性も無視しちゃダメ」レベルかなと。
細胞診ってのも実は悪性と出るまでは確定できない物なので、細胞診もしてないなら尚のこと確定できない。
なので「二次検査で悪性が否定されたから良性」は概ね正しいけど「100%良性」って意味で言ってるとしたら誤りだし、「細胞診をしていないから悪性を否定できない」は「悪性の可能性が色濃く残ってる」という意味でなければ正しいわけです(実際に細胞診をやるべきかは別の話)。ややこしいですね。
良悪性判断についてもう少し書きましょう。
今回の件では「細かい石灰化があった」という話が気になっています。甲状腺癌には砂粒状石灰化という特徴が見られることが多く、もし本当に細かい石灰化があったなら、それが甲状腺癌である可能性はかなり上がります。
ただ、「砂粒状石灰化→甲状腺癌」というのは医師の多くが知っていても、実際にエコーでプローベを動かしながら見ないと確認しにくい所見である関係上、それまで甲状腺診断をあまりしてない人がいきなり見て判断するのは結構難しいんですね。
ちょっと専門的な話をすると、エコー検査ってのは超音波の反射で物を見る検査なので、腫瘍の中身が少し不均一なだけでもザラザラして見えます。慣れてない医師がそれを見て判断しかねた場合、一番簡単なのは二次検査で専門的に診てもらうことです。一般内科からの紹介ではそういうのは非常に多い。
で、専門科がそういう患者を紹介された場合どうするか。
もし本当に砂粒状石灰化があって甲状腺癌の疑いが強い場合、子供だろうと薬で寝かせて細胞診すると思うんですよね、普通に考えて。甲状腺癌は癌としては大人しいとはいっても、癌かもって紹介されたのを経過観察して転移したら責任問題ですし。
専門科で診たらどうも癌ではなさそうだって場合、「多分良性ですよ」と言いつつ、比較的簡単にできる血液検査などをやって、経過観察になります。さっき書いた通り、癌の可能性を完全には否定することはできないので、万一の時にちゃんと対応できるようにするわけです。
今回の流れがその2パターンのどっちに近いかは、言うまでもないでしょう。ということで、今回の甲状腺癌?騒動については、医師側が記者会見で言っていた内容だけでなく、あの記事に書かれていた情報からも、あまり悪性ではなさそうだなと言えちゃうわけです。
次に、あれが万一甲状腺癌であった場合、原発との関連はどうなのかというお話。
甲状腺癌は非常に成長が遅い種類が一般的で、成人の甲状腺癌は「見つかった時には10年もの」とも言われます。ただ、種類も個性もあるので一概には言い切れない。ではなぜ原発事故と無関係と言えるのか。
まず、甲状腺癌の種類について。
甲状腺癌でダントツで多い(8-9割)のは甲状腺乳頭癌というタイプ。この乳頭というのは組織学的構造の名称なので、おっぱい星人の方々に出番はありません。
次いで甲状腺濾胞癌で、これが1-2割弱。
残りは非常に珍しくて、日常診療でもあまりお目にかからないものと思って下さい。未分化癌は甲状腺癌のくせに非常に悪性度が高いことで有名。
髄様癌はもっと珍しくて、出会ったら地方会くらいの小規模学会で発表できます。
甲状腺原発悪性リンパ腫はもはや甲状腺癌ではありませんが、甲状腺の悪性腫瘍。
先に挙げた多い2種類は、さらに分化度というもので分類されるんですが、
これを簡単に説明すると、分化度の高い甲状腺癌は甲状腺細胞の本来の形に近くて大人しく、分化度の低い甲状腺癌はよくわからない細胞塊に化けていて凶悪(増えるのが早く、転移も起こしやすい)という傾向があります。
で、甲状腺癌の性質として言われる「非常に成長が遅い」というのは、甲状腺癌の大半を占める甲状腺乳頭癌、特に高分化型甲状腺乳頭癌で特に顕著な性質です。ただし、濾胞癌も乳頭癌ほどではないけど成長が遅く、それぞれの低分化なタイプも癌発生から1年で見えるほどになる早さはありません。
そして、重要な点として、成長の極端に早いタイプはエコー検査などでの見た目もおかしいんですよ。成長が早い癌は甲状腺の正常細胞からかけ離れたおかしな細胞塊になっていて、周囲の組織に浸潤したりすることで検査上も「いかにも悪性病変」な格好になっています。そんなの絶対に経過観察しません。
今回の件では
「甲状腺未分化癌はすごく早いらしいから、原発事故が原因で未分化癌が出来たとすれば1年で見つかったとしても辻褄が合う」的な言説も見かけましたが、未分化癌はそもそもが非常に少ない上に、あんなもんエコーで見て経過観察になるわけがない。
ちなみに、今回の記事で悪性の可能性がって話の根拠の1つにされている砂粒状石灰化というのは、基本的には甲状腺乳頭癌で見られる所見。もし本当に砂粒状石灰化があったのであれば、尚のこと原発事故との関連性は低いと言えます。
簡単にまとめると、
甲状腺癌の大半は成長が遅く、そんなのが発生1年以内にエコーで見つかるような大きさになることはない。甲状腺癌の中にごく僅かに存在する成長の非常に早いタイプ(未分化癌や極端に低分化な乳頭癌・濾胞癌)は明らかに格好が違うから、経過観察になんかならん。そういうことです。
あと、これ書いてる時に飛んできた質問に答えておきますね。
甲状腺癌の疑いがあるのに細胞診をやらないのは山下医師の指示という説についてと、ベラルーシでは最初は良性のしこりから始まったと言ってる人がいることについて。
まず山下教授の指示についてですが、
この場合は細胞診をやるかどうか決めるのは二次検査目的に送られた医療機関(記事によると北大病院らしい)です。で、山下教授は患者が北大に送られたことをどうやって知るのでしょうか?無関係の医師にどこそこに紹介しましたーなんて報告しませんよ。
陰謀論らしく北大病院に潜入していたスパイが山下教授に報告していたと仮定して、山下教授から指示が行ったとします。癌を放置してえらいことになったら診た医師の責任問題なわけですが(特に子供は大変)、他所の大学の教授からの指示があったからって、現場の医師がそんな危ない橋を渡るでしょうか?
山下教授が「従わなかったら医学界を追放する」と脅していた、くらい派手な陰謀論を説いてる方には、「スーパードクターK」の同人誌でも描いてろと言ってあげれば十分。まともに相手するだけ損です。
次に「良性のしこりから始まった」の件。
まず大前提として、甲状腺の良性腫瘍は癌化しません。良性だと思ったら実は悪性でしたってことはあっても、良性だったものが悪性になることはない。というのは、甲状腺の良性腫瘍って大半は渦形成で、本質的には腫瘍ですらないんですよ。
ただ、最初に良性腫瘍の増加があって、その後で甲状腺癌の増加が見られた、という文脈であれば、「最初に良性腫瘍から始まった」というのもありうる話。これは元発言の意図が分からないので何ともいえません。ただ、あの記事で甲状腺腫瘍が見つかった数が多いとは全く思いません。
あと、「実際には何も分かっていない。わかった顔で語るやつがいるだけ」というツッコミ?が来てましたが、
自分が分からないことと科学的・医学的に分からないことは別です。自分が理解してないだけのことを「分かっていない(からこういう可能性も)」って言っちゃう方も多いので要注意です。
1つたとえ話をしましょう。
皆さんの住んでる場所で空中に10円玉を持ち上げて手を放すと下に落ちるのは誰でも知っています。では、火星で500円玉を持ち上げて放したらどうなりますか?
当然「下に落ちる」が正解。重力が10円玉にも500円玉にも作用すること、火星でもその法則は通じることは、皆さん知ってるわけです。実際に火星で500円玉を落としたことはないのに、それでも「下でなく上に飛んで行く」とは誰も答えないでしょう。
科学的な現象というのはある程度普遍性があって、十分に蓄積された情報があれば未知のものでも推定可能なものは多いわけです。医学的なものは多少不確定要素が多くなりますが、それでも全く突拍子もないことはそうそう起こりません。
極端な話、個別の病気は「その個体に初めて発生した病気」がほとんどなわけで、推論が一切通じないなら医学自体が成り立ちません。人体だからよく分らんことがなんぼでも起こると思ったら大間違いです。
で、今回の場合、国内の原発事故で放射性物質が撒かれたのは初めてでも、I-131の医療目的投与や核実験でのCs-137降下などは経験済みなわけで、そこに甲状腺癌の標準的知識が入れば、そんなに疑問の余地は残らないわけですよ。でなきゃこんなに自信満々で「大丈夫」なんて言いません。
また1つ質問が。
「検査が増えたために見つかった良性腫瘍が増えたのか、実際に増えていたのか、チェルノブイリのケースで判断可能か」。
これはかなり難しいと思います。あちらの検査体制は詳しく知りませんが、網羅的にできていたとはちょっと考えにくいですし。
ということで、思いつくがままにズラズラ書いてみました。そろそろ仕事が積み上がってきてますが、また何かあったら書きますね。
追加。
「5ミリ以下の結節が5歳以下で見つかることはあり得ない」って本当?という質問が。
まず5歳未満に甲状腺の検査をすること自体が稀なんで、そういう意味で見つかることは通常ないのと、年齢的にかなり少ないだろうとは思います。ただ、「ありえない」は言い過ぎじゃないかなと。
というのは、甲状腺の良性腫瘍である腺腫様甲状腺腫は、さっきも書いた通り本来の腫瘍ではないんですね。腺腫様甲状腺腫をフォローしてると、中には増えたり減ったり変化する症例もあるんです。普通の良性腫瘍と違って、単純にゆっくり大きくなるだけではないので、幼児にあってもおかしくはないかと。
「幼児にはありえない」という発言は、恐らく「良性腫瘍は癌以上にゆっくりだから、その年齢ではありえない」って発想ではないですかね。実際に調べたわけではないでしょうから。臨床的には、腺腫様甲状腺腫の一部症例の方がコロコロよく変わる印象なので、私にはその発言はできないです。
オピニオン(見立て、意見)
どうもさっきの一連のツイート(ブログ主注:上記のこと)が自由報道協会主張への「対論」として認識されたようですが、あんなのは甲状腺診療を本格的にやってる医師に聞けば普通に聞ける話ですよ。取材するには核医学的な知識より遥かにやりやすい情報ですんで、報道者は報じる前に知っておくべき内容なのではないでしょうか。
今回報道の症例について
事情あって、詳細が書けませんが、ほぼ確定、との事。
(留意事項: 医療者は患者に対しての「守秘事項」があります。みだりに情報開示できないことを、ご留意ください。)
本当の詳細は書けませんが、あの方が情報源として信頼性が高いことと、あの方が公に書かれている呟きの内容から「例の子供は甲状腺癌疑いなどではなく、ほぼ間違いなく良性病変である」ことは断言できます。コロイド嚢胞とは言ってしまえば水膨れで、腫瘍ですらないですから。
症例オピニオン(参考意見)
※ 実際の事例の場合は、医療機関での診療を行ってください。
※ 参考意見という点に、ご留意ください。
(ブログ主注:AがPKAnzug先生の答えです。少々長くなってしまうので、これ以降はスルーして戴くのも良いかと。)
Q:甲状腺異常についてのツィート、とても参考になりました。質問がひとつあります。万一チェルノブイリのような放射線由来の甲状腺がんが福島第一原発の事故の結果として起こるとしたら、早期に発見するには、どのような検診の体制が有効だと思いますか?
A:やはり、チェルノブイリで発症増加が確認されてる子供に対して、頚部エコーによるスクリーニング検査でしょうね。エコーは痛みもリスクもないので最適だと思います。実際の増加があるかどうかは、継続的にやって、2回目以降の検査で見つかった症例数の推移を見るのがいいのでは。
Q:@PKAnzug 先生、たとえば甲状腺に癌が見つかれば治療・手術は必要なのでしょうが、良性腫瘍の場合、大きいものは手術が必要な場合があるのでしょうか?あと、治療・術後の予後はどうなのでしょうか。
A:甲状腺癌の種類にもよりますが、ある程度以上の年齢で単発の小さいやつ1個とかなら、切っても切らなくても予後は一緒(寿命に影響しない)という報告もあるんですよ。まぁ大抵は手術になりますけどね。
良性の場合、大きすぎたら手術で取ることもありますし、PEITという純エタノールを注射器で流し込んでぶっ壊す方法もあります。良性腫瘍は多発しやすいので、新しいものが出てくることはままあるんですが、基本的に同じものが再発はしません。PEITで壊し足りない時くらい。
Q:まだ原発の影響も分からないと。分かるのは何年後でしょう?
A:甲状腺癌の増加が実際にあると仮定して、熱心にスクリーニングしたとして、変化の出始めは3〜5年後くらいからですかねぇ。ただ、摂取量があまりにも少なくて、I-131の検査量(この量で甲状腺癌増加がないのは確認済み)にも全く足りないくらいだから、増加しないと思いますよ。
Q:甲状腺乳頭癌、低分化型が肺に転移して放射性ヨード治療中です。3月に6回目をやります。原発事故後、?????なことが多くなり、どこにも回答がなかったのですが、PKAさんの説明がとても解りやすかったので、フォローさせていただきました。
I-131が甲状腺に蓄積して癌になる人と、甲状腺に癌があってI-131をGBq単位で飲んで治す人。なにがなにやらです。主治医に聞いたら「ストロンチウムなんかも治療に使いますよ〜」とかわされてしまいました。
A:あの事故の後、I-131はまるで未知の有毒物質みたいに言われ続けましたからね。治療を受けている側としても気掛かりな部分が多かったのではないでしょうか。私の説明がお役に立てたのであれば幸いです。
ストロンチウムは乳癌などの骨転移に使うんですよ。メタストロンって名前の薬。ただ、これはI-131と違って原発事故で問題になってるのとは少し違う種類になります(半減期がかなり短い)。
Q:教えて下さい。『もし全国の幼児に同じエコー検査をして「福島周辺の幼児に良性腫瘍、多検出の傾向」であれば、原発由来の甲状腺癌の前兆かも知れない』『逆に言えば、全国平均が分からない限り、良性腫瘍の検出では、事故の影響など言えない』と理解して良いでしょうか?
A:残念ながら、それは必ずしも言えません。というのは、甲状腺疾患というのは比較的遺伝性が強いと言われているので、単なる地域差によって福島が多くなったり、逆に少なくなったりする可能性があるんですよ。特定の遺伝子を持ってる人は特定地域に多くなりますから。
もちろん、発症と推定被曝量との間に明確な相関がある場合は、その可能性があるとは言えると思います。ただ、今回の事故で摂取しえたよりも遥かに大量のI-131投与を行う医療行為(I-131シンチ)でも、特に甲状腺の病気は増えないことがわかっています。
Q:それにしても、子供の細い首にそんなしこりがあるなんて、体調不良などはないのかな。自覚症状がないのが怖いとこか。今は経過を見守るしかないが。
A:普通の腺腫様甲状腺腫は邪魔にはならないですし、体調にも影響しません。成人でたまにある巨大なのは要治療。
Q:10年前に腺腫様甲状腺腫みつかりましたが、現在まで経過観察。サイズも変化なしです。病院行くの忘れちゃいそうなのが困るくらい。
心配するような症状ではないこと、焦って必要のない手術に踏み切らないように(お医者さんによって「切除」or「経過観察」判断異なりますよね)など、きちんとカウンセリングがなされているのかが気になります。
A:それだけ変化ないなら、かなり心配要らない感じですね。引き続き主治医の先生の判断に沿って、病気と付き合っていって下さい。(甲状腺の病気ってどうも「長く付き合っていく」系統が多いんですよね)
手術とかは複数の医師が絡んでの判断になりますから、臨床的におかしなことにはならないと思いますよ。ただ、子供の病気に関して「自分たちが福島にいたせい」と親御さんが自責しないかどうかは気になるところです。今回の事故絡みではとにかく精神的ストレスの問題が大きいんですよね。
Q: はじめまして。会見ではデスク氏が「他の甲状腺の専門医にも何人も取材して確認してる」と。ホントでしょうか?
A:仮にちゃんとした専門医に取材してるとしたら、適切な情報を引き出す能力が小学校の壁新聞ちびっこ記者にも劣ると言わざるを得ません。
Q:PKA先生、シンチの時1110MBqも投薬するんですか???何故死なないのでしょうか?こちらが死ぬくらい不思議です。人って8SV以上被爆すると死ぬんじゃないのですか? http://t.co/VFzYjg0y
A:シンチではなく甲状腺焼灼といいます。1110MBqどころか7ギガベクレル(7000MBq)以上投与することもありますよ。I-131は甲状腺に極端に集まる薬剤なので、甲状腺や甲状腺癌が極端な被曝してぶっ壊れる一方で、全身の被曝はそこまででもないんですよ。
この治療の甲状腺以外の全身被曝量は確か200〜400mSv程度だったはずで、まぁこれでも結構な量ではあるんですが、一瞬で浴びるのでなく時間をかけて浴びる関係で、一瞬で同量浴びるよりはかなり影響が小さくなるんです。投与量が多いと白血球減少くらいはしますけどね。
Q:@PKAnzug 先生、お暇な時で構わないのでもう一個だけ。ゆっくり浴びる方が一気に浴びるより安全との事。言い換えるとある種の低線量の長期被爆は一瞬でCTスキャンを受けるよりまだ安全?っと考えても良いのでしょうか?
A:CTは撮りかたにもよりますが10mSv程度浴びますんで、現状で人間が住んでる地域の公衆被曝なら、ずっと住んでもCT1回よりも問題ないような地域が大半じゃないですかね。どちらも影響が小さすぎてもうイメージでしか比較できない世界ですが。
つぶやき
以前のエントリーの“つぶやき”で、グレー情報・流言・デマなどを広める人達を類型化しましたが、そこから今回に当てはまりそうなものをピックアップします。
1.放射線恐怖症を広げることで反原発をしている人達・組織。
2.自分の糧を多く得たいがために発信している人達。(売れれば、視聴率さえ上がれば、というメディア関係にも多い)
3.科学より主義・主張が先で、自分の主義・主張を通すためならどんな手段でも使えると勘違いしている人達。
6.単なる勉強不足で科学的な間違いに気が付かない人達。(可能性がゼロでない事を隠れ蓑にして恣意的に詭弁・煽りを発信したり、定量情報に恣意的に目を瞑り定性情報のみ発信する事もある様だが、)
“煽り系ワースト2”の地位は不動である。
●週刊誌との付き合い方――放射能の人体への影響を読む
その後のまとめ的情報
●「復興アリーナ WEBRONZA×SYNODOS」2012/7/19 放射線の健康影響をめぐる誤解 片瀬久美子
●床次(とこなみ)氏らの論文についてのメモ 田崎晴明教授
「床次(とこなみ)氏らの論文についてのメモ」2012年3月の報道で世間を騒然とさせた弘前大の床次氏らによる甲状腺被曝調査の論文が出ていることを先ほど早野さんのtwで知ったので簡単なメモ。線量評価は低くなり、ETV特集でやった推定は消えた。gakushuin.ac.jp/~881791/d/1207…
― Hal Tasakiさん (@HalTasaki_Sdot) 7月 18, 2012
●「toshi_tomieのブログ」2012/2/26 チェルノブイリによる小児甲状腺がん急増は検診実施による見かけだったとの近藤宗平氏の主張の検証ー尤もらしい