断末魔の中国、ドル依存金融 北京が最も恐れる「QE縮小」宣言
http://www.zakzak.co.jp/economy/ecn-news/news/20130719/ecn1307190736000-n1.htm
2013.07.19 夕刊フジ
ワシントンでは先週、米中戦略・経済対話が開かれた。筆者がもっとも注目したのは、米連邦準備制度理事会(FRB)がめざしている量的緩和(QE)の縮小について、中国の楼継偉財政相が、「(米国の)高い失業率を考えれば時期尚早」と内政干渉まがいの態度で臨み、「影響は米国のみにとどまらず、十分注意すべきだ」と厳しく注文した点である。
おしつけがましい覇権国・米国顔負けの発言で、いかにも尊大で粗暴な「大国」中国らしい振る舞いだが、それほど中国側にはせっぱ詰まった事情があるとみてよい。
グラフを見ていただこう。2008年9月のリーマン・ショック後、08年8月に比べてどのくらい米FRBがドル資金供給残高(マネタリーベース)増やしたか、また中国人民銀行が人民元資金の供給量を反映する資産総額をドル換算で増やしたか、その人民銀行資産のうちドルを中心とする外国為替資産をドル換算でどのくらい増やしたかを示している。
一目瞭然、人民銀行は米QEに合わせて資産を増やす、つまり人民元資金を発行し、国内の金融機関や金融市場に流し込んでいる。リーマン後、北京は大規模な財政出動に踏み切る一方で、人民銀行が国有商業銀行などに巨額の資金を供給し、融資を一挙に3倍も増やした。その金融緩和策を可能にしたのが流入する外為資金であり、外為資金の供給源となってきたのがQEなのである。人民銀行の外為資産増加額はFRBのマネタリーベース増加額の8割にのぼる。中国の金融はドルに全面依存している。
その金融モデルが今、崩壊の危機にある。流入するドルを信用創造の源として不動産投資や増産に邁進(まいしん)した胡錦濤前党総書記・国家主席時代は10%前後の高度成長を続けたが、不動産バブルは膨張し、過剰生産、過剰在庫は野放しになっている。
役得にありつく党官僚はバブルや過剰生産から創出される見かけ上の利益の多くをフトコロにする。取り締まりは緩く、工場や発電所などからは有害物質が除去されないままガスや水が排出される。
このまま米国がドルの増刷をやめると、中国人民銀行は人民元札を刷れなくなる。すると、市中銀行による融資は止まり、不動産バブルは本格的に崩壊しよう。くだんの「影の銀行」が集めるカネもしょせんは企業、個人の過剰資金であり、高利回りの運用先は主に不動産市場だから、バブル崩壊で高利回り商品は蒸発してなくなる。農民から土地を強制収容して不動産開発に邁進してきた地方政府は債務返済不能に陥り、大手の国有商業銀行は一挙に総額で100兆円規模の不良債権を抱えよう。
結末は、金融市場崩壊では済まない。共産党体制の崩壊だと、北京指導部は恐れているのだろう。だからワシントンに「ドルを刷れ」と強要する。バーナンキ議長はQEの継続を口にしているが、年内には、北京が最も恐れる「QE縮小」宣言の日がやってくる。(産経新聞特別記者・田村秀男)