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2013/7/8 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
それぞれの土地には、それぞれの習慣や風習があるものだ。よそ者からすれば理解しにくいことも、そこに生まれ暮らしていると道理に合う。
例えば、エジプトの政変だ。熱狂をもって国民に迎えられたモルシ大統領が、大衆の反発を食らった末、軍によって倒された。出身母体のムスリム同胞団には、軍と対立してきた歴史がある。
その上、反ムバラクで共闘した世俗派と呼ばれる人たちも、途中で反大統領に転じた。民主主義にイスラム教と武力が絡む。日本人にはよく分からない構図である。
もっとも、日本の権力闘争も、外から見れば理解しがたいだろう。改憲で国防軍を創設し、集団的自衛権の行使も可能にしたい自民党と、「平和と福祉」を看板に掲げる宗教団体創価学会を支持母体にした公明党。毛色がまったく違う政党が、1999年に連立を組んで以来、15年近くも共闘を続けているのだ。イスラムと仏教の違いはあるが、政治と宗教がイデオロギーや理念を超えて接近する姿は、この国の政治を分かりにくくしている。
政治評論家の有馬晴海氏が言う。
「最初は国会の中だけの関係でした。衆参のねじれで政権運営に困った自民が、公明を抱き込んだ。それが選挙でも協力するようになり、自民は公明に1兆円といわれる予算を振り分けるようになったりした。今では国土交通大臣のポストも渡し、公共事業まで任せている。ここまでくると、ねじれウンヌンは関係ない。両党共に支持者の反発を受けながらも、次々にハードルをクリアしていった結果、離れようにも離れられない間柄になったのです」
◆自民楽勝を支える800万学会票
「連立当初は、何でも言いなりで法案に賛成する公明に対し、「踏まれても ついて行きます 下駄の雪」とヤユする句が詠まれたりした。しかし、今では、自民が離れられなくなっている。公明の支持母体、創価学会の票がなければ、立ち行かなくなっているのだ。「昨年の衆院選を見ると、自民は比例区で1660万票しか取れなかったのに、選挙区では合計2500万票を獲得しています。差し引き840万票が、選挙区で候補者がいなかった学会票と推測できる。選挙区で自民に入れ、比例で公明に入れた票です。『比例は公明に』との訴えに応じた自民支持者も一部にいたでしょうが、300小選挙区で平均2万〜3万票が自民候補に上乗せされている計算。選挙区が都道府県単位の参院選では、公明候補者がいない選挙区で10万票前後のまとまった票が自民に加算されることになります」(有馬晴海氏=前出)
マスコミの情勢調査では、今回の選挙は自民が強い。それを受けて安倍首相は街頭で、「危機感を持っていかなければ私たちは負ける」と演説している。石破幹事長も「わずかでも気を緩めることがあってはならない」と全候補者にファクスしたという。
敵は楽勝ムードだけ。そんな余裕を与えているのが学会票の存在なのだ。
◆自衛隊イラク派遣で「露払い」演じた公明代表
エジプトでは、イスラム色の強い憲法案を打ち出したモルシが倒された。果たして、日本ではどうなるのか。創価学会は、このまま自民党政治を存続させるつもりのようだが、その選択が日本を危うくするのは明らかだ。
安倍は街頭で「憲法改正にも挑んでいく」と言っている。選挙に勝てば経済など二の次三の次。祖父・岸信介の悲願だった改憲に乗り出す。自衛隊を軍隊に改編し、徴兵制の歯止めとされた条文も削っていく構えである。集団的自衛権の行使を認め、海外で戦争をやれるように地ならしも進めるのだ。
公明党の山口代表は、集団的自衛権の行使容認について、テレビ番組で「断固反対する」と明言した。だが、それで連立を離脱するほどの覚悟はない。「自民、公明両党で進めていくことが国民の期待だ」「連立を破壊しようとは思っていない」と言っている。どこまで本気で反対するつもりなのか、かなり疑わしい。
思い出されるのが小泉政権時代だ。公明の神崎代表(当時)は、陸上自衛隊が派遣される前にイラクのサマワまで足を運び、「比較的安全だ」と露払いを演じた。あのときと同じである。いくら取り繕っても、矛盾は隠せない。平和を標榜(ひようぼう)するくせに、先頭に立って軍拡路線を歩む。最後は自民党の擁護に回るのだ。
実際、参院選の候補者を対象にした毎日新聞のアンケート調査によると、公明の7割が改憲について「賛成」と答えている。3年前の同じ調査では、憲法9条の見直しに85%が反対していたのに、今回は半分以下の40%にまで減った。政策面では、悪い方向に進む自民にすり寄っているのだ。
◆献金請求書で税金を還流させる古い自民党
安倍は福島での第一声で、自民が原発政策を推進してきたことについて触れ、「反省しなければならない」と言った。だが、その一方で電力各社の原発再稼働を後押し、輸出にも躍起になっている。反省は口先だけ。利権体質も昔のままだ。国土強靱化を旗印に公共事業費を増やしながら、土建業界には“献金請求書”を回していた。
共産党の志位委員長の暴露によると、金額は4億7000万円。仕事をつくり、税金で支払って、その一部を還流させる。昔からの手口だ。アベノミクスだとか異次元だとか、聞き慣れない言葉に惑わされてしまうが、実態は「古い自民党」と変わりはない。それを支えるのが公明という図式だ。
「公明も国交相ポストをもらって、与党の味をしめてしまった。自民がコケない限り、連立から外れることはないでしょう。果たして、こんな政治体制が正しいのか。自公政権を継続させることがいいのかどうか、有権者はしっかりと考えるべきです」(政治評論家・山口朝雄氏)
安倍自民に投票し、自公政権が参院でも3分の2の勢力を確保したらどうなるのか。今の参院選は、この国が暴走を始める前の「最後の選択」となるかもしれない。