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2013/6/26 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
ウソ八百を並べ立てた参院選公約にこの政党の国民生活無視の政治体質が暴露されている
都議選の圧勝に調子づいた自民党執行部の間では「参院選も楽勝」ムードが広がっている。石破幹事長は「敵は驕(おご)れる自分自身」と、全候補者に慢心を戒める文書を送ったが、所属議員たちの頭の中は内閣改造後のポストしかない。
大体、これから選挙で国民の審判を仰ぐというこの時期に、改造話が出ること自体が異常だ。選挙をなめているとしか思えないし、それは自民党の選挙公約のいい加減さを見れば、よく分かる。
「昨年度63兆円の年間設備投資を今後3年間で年間70兆円に回復」「20年に農林水産物・食品の輸出額を1兆円に」「観光立国としての取り組みを強化し、13年に訪日外国人旅行者1000万人、30年に3000万人超を目指します」……とまあ、荒唐無稽な数字を並べ立てたこと。しかも、よくよく見ると、達成時期がかなり先だったり、公約ではなく、「目指す」だったり。数えてみたら、「目指す」という表現が33も出てくるのだ。これじゃあ、公約ではなく目標だ。それなら、バカでも言えるのである。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングの主任研究員・小林真一郎氏はこう言った。
「年間70兆円の設備投資は、単純に計算すると、毎年3・8%のプラスを積み上げれば達成できる。実現できそうですが、実はかなりハードルが高い。91年度以降の名目設備投資の伸び率を見ると、一時的に5%まで高まることはあっても、長続きしたためしはないのです。もっと言えば、設備投資が成長戦略につながるのか。せっかく最新設備を備えても、それに対応する需要がなければ、稼働率が低迷し、過剰設備を抱えてしまう。こうなると、雇用・賃金が増えるどころか、リストラの動きが強まる危険すらあります」
一事が万事で、自民党の公約はいい加減な夢物語の継ぎはぎでしかない。
◆北海道で「支持率24%」しかない安倍内閣の現実
都議選に圧勝した甘利経済再生相は「アベノミクスに対する評価が極めて高かった」なんて自画自賛していたが、これも騙(だま)されてはいけない。以前から、アベノミクスの副作用が指摘されていたが、それがどんどん、現実になっている。安倍は「庶民への恩恵はこれから」みたいな言い方をしているが、詭弁だ。その前に、アベノミクスはグラグラだ。
円安の副作用でパン・うどんといった生活必需品が次々に値上がりしているし、先月は北海道の沖合底引き網業者が、燃料と魚価安傾向の影響で事業継続を断念した。安倍内閣の北海道の支持率はたった24%しかないのだ。
それじゃあ、円安で輸出は増えたかというと、こちらも減っている。何だ、いいことはひとつもないじゃないか。それなのに、政府は予定通り、消費増税と社会保障の改悪を断行する。これじゃあ、家計はどんどんヤセ細っていくばかりだ。
暴落直前に日本株を売り抜けた世界的投資家のジム・ロジャース氏は発売中の雑誌「プレジデント」で黒田緩和を切り捨てていた。「おまえに言われたくないよ!」だが、この指摘は当たっている。
〈何兆円ものお金を人工的に市場に送り込めば、人々は一時的に心地よく感じるものです。しかし最後には必ず苦しくなっていく〉〈恐らく近い将来、日本は大変なことになるでしょう。子供はいない、労働力もない、債務はどんどん膨らむ、そして通貨の価値が下がり国力は落ちる〉
これがアベノミクスなのである。
◆大きな矛盾を抱えたアベコベ政策
それなのに麻生太郎副総理兼財務・金融相ときたら能天気そのものだ。「日本は自国通貨で国債を発行している。(お札を)刷って返せばいい。簡単だろ」と言ってのけた。こんな男が財政のトップなのだから、いい加減の極みだ。
「バブルの死角」の著書がある大阪経済大客員教授の岩本沙弓氏はこう言った。「安倍首相は物価目標2%を掲げ、デフレ脱却を目指そうと言っています。にもかかわらず、一方でTPP参加に踏み切ろうとしている。これは大きな矛盾です。実際にTPPに参加すれば、海外から安い農作物が日本にドッと流入してくる。これがデフレ要因であることは歴然としています。つまり、アベノミクスはデフレの『促進』『解消』というアベコベのことを同時進行しようとしている。今後、これらの矛盾にどうやって折り合いをつけるつもりなのか。この矛盾こそが、消費税増税とともに最大のリスクでしょう」
「3本の矢」と言ってるが、アベノミクスが放った矢の方向はバラバラ。どこに何が飛ぶか分からない危なっかしいシロモノなのだ。
◆「稼ぐが勝ち」で権力ベッタリの言論機関
アベノミクスの危険な側面をてんで伝えようとしない言論機関もひどいものだ。特にテレビのワイドショーは株やマンションの特集を組んで、アベノミクスに悪ノリしている。批判するより、乗っかった方が視聴率が稼げるからで、要するに「稼ぐが勝ち」ということだ。それに政権をヨイショしていれば、睨まれない。権力ベッタリ。かくて、アベノミクスの危険性は封印され、国民は何も知らされないまま、選挙に行かされるのである。
きのう(25日)の毎日新聞の夕刊では、政治学者の牧原出・東大教授と社会学者で京大准教授の佐藤卓己氏が〈「ふわっとした」支持の危うさ〉について対談していた。「アベノミクス効果で庶民の生活もいずれ良くなるだろう」という期待感が、自民党の高い支持につながっているが、「生活が良くならない」と分かれば、急速に支持が下がる。安倍の高支持率といったって、砂上の楼閣みたいなもので、それを2人は指摘していた。
こうしたムードを“演出”しているのが、大メディアなのである。
「ためになるけど耳に痛い話より、明るくて楽しい話にチャンネルを合わせたくなる。それが視聴者心理というものです。テレビはそれに迎合して、番組を制作している。経済政策のリスクや問題点をキチンと伝えない無批判な政治バラエティーは、結果的に政権応援になる。テレビはそれを自覚すべきです」(上智大教授・碓井広義氏=メディア論)
リーマン・ショック後、公園に派遣労働者があふれるようになって、ようやくテレビは格差社会を拡大させた小泉改革の問題点をクローズアップした。何年も経って「あれが悪かった」と言っても後の祭りだが、この国のメディアはいつも、後出しジャンケンで、正義漢ヅラする。むしずが走るような偽善者だ。このままでは「ふわっとした支持」が続き、参院選も自公が圧勝してしまう。1、2年後の日本が怖くなる。