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2013/6/25 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
自公が大勝し、共産党が第3党に躍り出て、民主党が壊滅的に負けた都議選結果をどう見るべきか。
共産党の志位委員長は「自民か民主かという2大政党は廃れた。いよいよ自共対決の構図だ」なんて言っていたが、あながち、冗談ではない。
右傾化する巨大与党と共産党。この国の政治は、こんないびつな2大政党制というか、平成の55年体制というか、そちらに向かいつつあるのではないか。他の野党の無力、身勝手、浅知恵を見ていると、ますます、そんな気分になってくる。
もちろん、共産党が政権交代の一翼を担えるわけがない。その排他主義というか、原理主義は特殊だからだ。自由主義経済が基本でもあるのは言うまでもない。だから、共産党が伸びるとしても限度がある。せいぜい、20〜30議席。
しかし、他の野党がドングリの背比べになれば、そんな共産党が野党の中心的存在になっていく。こうなりゃ、安倍自民は楽チンだ。相手が“吠えるだけ野党”だからだ。数の力で、やりたい放題の右傾化を推し進めていく――。
戦前の大政翼賛会と過激な左翼みたいな図式になるんじゃないか。政党政治が腐敗堕落し、政治がアナーキー化するにおいが立ち込めている。
◆リベラルの受け皿がなくなった恐怖
元外交官の天木直人氏も、そうしたにおいを感じているひとりだ。
「今度の都議選は反自公政権の受け皿政党がなかったことが低投票率と自公大勝につながった。維新やみんなの党は自民党補完勢力だし、民主党にも安倍首相と同じような改憲派が大勢いる。民主党は割れない限り、自民党政権の対立軸になり得ないのです。だから、有権者はシラケた。多くの人は棄権し、唯一、野党らしい共産党が議席を伸ばしたわけですが、共産党は政権交代可能な政党ではないから、自民党は安心していると思います。その自民党はリベラル派が一掃されて、安倍首相のタカ派路線が席巻している。いつの間にか、多くの日本人が求めているリベラルな保守の受け皿がなくなり、タカ派と共産党になってしまった。これは恐ろしいことです」
その自民党は憲法改正草案で、公の秩序を錦の御旗に、言論・信教などを制限する条項を入れている。まさか、赤狩りはしないだろうが、その気になればできるところが怖い。せっかく、政権交代をしたのに4年もたたないうちに、このありさま。国民はこんな政治状況を望んだ覚えはない。
◆参院選も都議選と同じ構図で自公が圧勝
多くの新聞は都議選の結果について、民主党が品川、世田谷、杉並、江戸川などで2人擁立して、共倒れしたことを問題視、「1人に絞れば議席が確保できた」と分析していた。共産党の得票率は13・61%で前回の12・56%とあまり変わらない。それでも議席を倍増させたのは、他の野党の戦略ミス、勝手に自滅した結果、手堅い組織票の共産党が浮かび上がった、とこんな分析も多く見られた。
共産党の17議席のうち、14議席は定数4以上。実際、他の野党の潰し合いが奏功したのだ。
果たして、参院選はどうなるのか。政治評論家の浅川博忠氏はこう言う。
「野党の乱立は参院選も変わりませんから自公が圧勝する構図は変わりません。右傾化する安倍自民党に対して、共産党の対立軸が明確だから、他の野党が足並みを揃えられない改憲問題などが争点になって、かつ投票率が下がれば、共産党が一定の票を取るでしょう。とはいえ、そこは国政選挙ですから、都議選のような極端な結果にはなりませんよ」
参院選も複数区はあるとはいえ、共産党が選挙区で勝てそうなのは東京くらいだ。あとは比例で数議席。やっぱり1桁だろうが、問題は共産党以外の野党も五十歩百歩ということだ。相変わらず、民主党は腰が定まらないし、野党同士が潰し合いをやっているからだ。
「民主党は最後の賭けに出なければダメなのに、できそうもない。バックにいる連合もひどいもので、この期に及んで、自分のことしか考えていない。護憲、脱原発、反派遣など安倍自民党との対立軸を鮮明に打ち出すしかないのに、連合がそれを邪魔しているのです。こうなったら連合も民主党も分裂すればいい。その覚悟がなければどうにもなりません」と評論家の佐高信氏も怒っていたがその通りだ。
参院選も1人区は自民に独占され、2人区は民主、みんな、維新、共産が競っている。3人区以上はおおむね、公明がまず押さえ、残りを野党が潰し合う。しかも、潰し合う野党は自民党との違いを打ち出せないのだから、有権者はドッチラケだ。またまた低投票率になりそうで、自公が大勝するのは間違いない。
◆改憲勢力にやりたい放題される
前出の浅川博忠氏は「問題は選挙後。政界再編になる」と言う。
「惨敗した民主党に自民党は手を突っ込み、分裂を仕掛けてくると思います。民主党は改憲派と護憲派に割れて、改憲派は維新やみんなと連携し、やがて、自民党とくっつく。護憲派は共産、社民らとくっついて、政界が再編されると思います」
その結果、大きな改憲勢力=巨大与党と共産党を中心とした少数野党に割れることになる。そうなれば“自共”の都議会のような構図になっていく。
怖いのは、こういう展開になると、懐が広かった自民党も安倍タカ派一色になってしまうだろうということだ。
自民党内のリベラルといえば、旧宏池会だが、いまや、岸田派と谷垣派に分裂し、岸田派は安倍ベッタリになっている。居場所がなくなった昔の親分、古賀誠元幹事長は「赤旗」のインタビューに登場、「現行憲法の平和主義、主権在民、基本的人権という崇高な精神は尊重しなければならない」「とくに9条は平和憲法の根幹です」と訴えていた。民主党よりよっぽど野党らしいし、他にも安倍の対中外交を「異常」と批判している自民党の古参議員は大勢いるのだが、とにかく、勇ましさだけを求める世の風潮が、こうした声をかき消している。
かくて、タカ派はますます声を荒らげ、護憲勢力は希少動物と化していくのだ。
こんな政治構図が固まってしまったら、万事休すではないか。安倍がトップの改憲勢力にやりたい放題をされたら、庶民の自由は制限され、お上のために増税を強いられ、それに反対しようにも戦前のように政党政治が死んでしまえば、民主主義が機能しなくなってしまう。
かくなるうえは共産主義者と一緒に地下に潜りますか。そんなアナーキーでブラックな世界にならないとも限らない。都議選の結果は戦前回帰の予兆に見える。自公の圧勝もさることながら、共産党の躍進にもイヤーな感じがするのである。