http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MOPUTO1A74E901.html
2013/06/21 16:28 JST ブルームバーグ
6月21日(ブルームバーグ):6月4週(24−28日)の日本株は、日経平均株価 が1万3000円台で値固めする展開となりそうだ。米国の量的金融緩和策が年内に縮小する可能性が浮上、日米欧3極の強力緩和を背景に世界の株式に向かった投資マネーの逆流が懸念される。一方、為替市場でドル高・円安の動きが再燃しつつあることは下支え要因だ。
ベイビュー・アセット・マネジメントの執行役員、佐久間康郎氏は「底固めのプロセスに入った。米国の量的緩和の縮小は生みの苦しみで、先になればなるほど投機の温床になるため、前倒しされることはポジティブ」としながらも、「新興国、資源国の株式や通貨が大きく下げ ていることはリスク」と言う。
米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長は18、19両日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)後の会見で、景気が当局の予想通りに回復を続ければ、年内に債券購入の規模を縮小し始め、2014年半ばに終了させる可能性があると述べた。今回のFOMCでは、毎月850億ドルの債券を購入するいわゆる量的緩和第3弾(QE3)の継続を決める一方、声明では「景気と労働市場の見通しに対する下振れリスクが昨秋以降、小さくなってきた」との認識を示した。
第3週の日経平均は、前の週に比べ4.3%高の1万3230円と5週ぶりに反発。株価指数先物の特別清算値(SQ )算出通過で需給面のあく抜け感が広がる中、一時は日本銀行の異次元緩和前の水準である1ドル=93円台後半に振れた円高の動きが反転、予想PER など投資指標の割安さを材料視する買いが入った。バーナンキ議長の発言、製造業統計の低調を受けた上海株安 を嫌気し、20日の取引で日経平均は200円以上下落。翌21日も一時300円以上下げたが、切り返して終えた。
米統計、ソフバンクの米社買収注視
第4週は、週末に5月の鉱工業生産や家計調査など経済統計の発表はあるが、国内は23日の東京都議会選挙を経て26日に通常国会の会期末を迎え、永田町は7月参院選に向けて選挙モード。政策面から日本株市場を刺激する材料は出にくくなった。ベイビューの佐久間氏は、「金融相場から業績相場への移行はきれいにいかないが、1カ月ほど底固めが続けば、結果として第1四半期決算の発表が相場再離陸のタイミングになる」とみている。
一方、海外では米国で25日に耐久財受注や新築住宅販売、消費者信頼感指数、27日に個人所得・支出、28日にシカゴ購買部協会景気指数などが発表予定。米統計の着実な改善基調が確認されれば、バーナンキ議長のシナリオを補完することになり、為替市場では米金利の上昇を通じドル高・円安に振れる要因となりそうだ。実際の統計数値と市場予想のギャップを表すシティグループ経済サプライズ指数 は、今月上旬までの低下トレンドからやや反転している。
日米間の企業買収の動きを材料に、ドル・円が短期的に円安方向に振れる可能性がある、と見るのは大和証券投資戦略部の木野内栄治チーフテクニカルアナリストだ。米衛星テレビ会社のディッシュ・ネットワークは期限だった18日、米携帯電話サービス会社のスプリント・ネクステルに対する新たな買収案提示を見送った。これにより、25日のスプリントの株主総会でソフトバンク の買収案が承認される可能性が高まっている。
ソフバンクは11日、スプリントの買収提示額を201億ドルから216億ドルに引き上げており、スプリントの取締役会はこれを承認、株主に賛成するよう促している。巨額の投資案件実施は「為替市場の需給面にも影響がある」と木野内氏。2000−01年にNTTドコモが米AT&Tワイヤレスに出資したケースでは、払い込みの完了が市場に伝わるまでの約2カ月間、10円強円安に振れた。今回ソフバンクの提案が受け入れられれば、7月上旬に手続きが完了する。
海外勢買いは足踏み
株式需給面では、売買代金シェアで約6割を占める海外投資家 の動向が注目される。5月第5週に1270億円を売り越したが、6月に入り1608億円、461億円と買い越しが続く。ただ、昨年11月中旬以降、5月までの累計買越額が9兆円強に及んだ勢いは明らかに鈍った。
ゴールドマン・サックス証券のエコノミスト、馬場直彦氏は日本銀行が10、11日の金融政策決定会合で政策スキームと資産買い入れ規模の現状維持を決めた点に言及。「海外投資家は5月下旬以降、日銀の国債市場安定化策に注目していたため、この決定は大きな失望を呼んだ」と指摘している。
米BOAメリルリンチがまとめる世界ファンドマネジャー調査によると、5月まで5カ月連続で上昇していた日本株のオーバーウエート比率は6月にプラス17%と、前月比14ポイント減った。一方で、今後最もオーバーウエートしたい市場は米国と日本となっており、企業収益見通しが明るい市場では日本が1位を継続している。
メリルリンチ日本証券の株式ストラテジスト、神山直樹氏は日本株の回復をあきらめて売却している投資家は見当たらないとした上で、「政策の長期的な効果への疑いを持つのは早過ぎる」と強調。ただ、日銀への信頼感は低下しており、「投資家は日銀と何らかのコミュニケーションを求めている」と言う。
安倍晋三首相は北アイルランドで17、18日と開かれた主要国(G8)首脳会議後の会見で、「私の進めている政策についての懸念の声はなかった」と発言。サミット後に英の金融街シティーで首相が講演を行うほど日本の経済政策への注目が増しているだけに、政府・日銀首脳は世界、市場と根気強く対話を続けていく必要がありそうだ。