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2013/5/29 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
この結果は予想されていたのに異次元の金融緩和などと舞い上がってどうにもならぬ安倍無能首相の政権運営に深刻な懸念の声
黒田日銀総裁は今、どういう精神状態なのか。マーケット関係者ならずとも、気になるところだ。財務官から日銀総裁に転じたのも異例だし、副総裁の経験もなし。ぶっつけ本番で、“大役”を担い、世界が驚くような異次元緩和に踏み切ったところ、それが完全に失敗した。
日に日に高まる国債暴落リスク。逃げ出すマネー。それが株に流れていたのもつかの間、頼みの株価もジェットコースターのように下がっている。
いまや、気も狂わんばかりではないか。その“兆候”がハッキリ、言動にも出ているのだ。
例えば、今月22日の記者会見。黒田は国債下落、長期金利上昇について、しつこく記者から突っ込まれた。ある証券会社のリポートは「袋叩きの印象」と書いたほどだ。日銀は量的緩和で、国債価格を上昇させ、金利を低下させるシナリオだった。それがものの見事に外れたからだ。で、黒田は何と言ったかというと「(長期金利は)短期金利のようにすべてコントロールできるかといえば、そうではない」と完全に居直ったのである。
26日の講演の話も衝撃的だ。
「経済状況が改善しない中で財政懸念が強まることを背景に金利が上昇する場合は、金融機関には債券評価損という負の影響が強く出ることになります」「政府における財政構造改革に向けた取り組みを着実に進展させていくことが重要です」
◆安倍も黒田も一刻も早く辞めさせろ
異次元緩和に踏み切った4月、黒田は自信満々で「今年年央から景気回復がハッキリする」と豪語した。それがウソのような豹変ではないか。黒田自らが金融緩和の負の側面に言及し、政府に財政構造改革を求めて予防線を張ったのである。自信満々が焦りに転じ、鼻高々だったのが、半身に構え、逃げ出す準備――。
さあ、これをマーケットがどう見るか。こりゃダメだ、とサジを投げるか。そうなれば、ますます、日本市場は浴びせ売りに見舞われてしまう。
ビジネス・ブレークスルー大の田代秀敏氏はこう言った。
「日銀はコール市場において、金融機関に翌日ものの資金を出します。そうやって、短期の金利をコントロールする。つまり、日銀は短期の金利はコントロールできるが、長期金利はコントロールできないのです。それなのに、黒田総裁は『できる』として、短期国債だけでなく、長期国債も買うことにした。10年ものはもちろん、40年ものの国債にまで手を突っ込んできた。そんな先の経済状況なんか分かるわけがない。神の領域に踏み込んだようなものですが、案の定、もう、長期金利が跳ね上がり、国債マーケットをコントロールできなくなった。日銀はコントロールできなかったことで信認を失い、できもしないことをやれると言ったことでも信認を失った。今、黒田総裁は自分の能力に対する見通しの甘さを痛感していると思います」
プロの目で見れば、黒田がやっていることは、先の大戦の真珠湾攻撃みたいなものだ。最初から勝てるわけがないのに、熱狂が冷静な判断力を奪い、バカな賭けに出て、やっぱり、負けた。
もちろん、黒田を使った安倍も同罪。とっとと2人は辞任すべきだし、こんな政策を続けさせてはいけない。そのためには何が何でも参議院選挙で自民党を勝たせてはダメなのだ。
◆輸入インフレで日本の漁業も農業も壊滅危機
さもないと、日本経済は本当にとんでもないことになってしまう。
国債市場でアベノミクスのバケの皮が剥がれた今、株価も連動して総崩れだ。理由は単純で、株高の理由は「アベノミクスで景気は良くなる」という幻想だったからである。国債市場でアベノミクスのインチキがばれた。こうなりゃ、一蓮托生だ。もともと、半年間で株価が85%も上がった方がおかしいのだ。
そうなると、債券安、株安のダブルパンチ。そこに、このところ、多少、調整局面になってきたとはいえ、円安、輸入インフレが襲いかかることになる。日本売りのトリプル安だ。「そのうち、日本企業は格安で外国企業に買われてしまうでしょうね」と前出の田代秀敏氏は言っていたが、その前に日本の産業がヘタってしまいそうだ。
すでに円安によるエネルギーコストの上昇などで、4月の貿易赤字は過去最大の8799億円に達している。貿易赤字は10カ月連続だ。いくら円安で輸出企業が潤っても、輸入コストがそれを上回ってしまうのだ。
ロイターの調査によると、約8割の企業が適正な為替レートを「95〜100円」としている。100円を超える円安は明らかに行き過ぎなのである。
円安は電気代や小麦粉、トイレットペーパーなど生活必需品の値上げに通じるだけでなく、農業、漁業にも深刻な影響を及ぼす。
農林水産大臣賞を受賞した女性社長の吉村栄子氏(三見シーマザーズ=山口県)もこう言っていた。
「イカ釣り漁船が全国で休業しましたが、どこも事情は同じです。アベノミクスの円安で油代が上がり、漁をしてもほとんど利益が出ないのです。アベノミクス、万々歳という新聞報道ばかりが目立ちますが、漁業の現場では正反対の悪影響が出ている。うちの主人も漁船を持っていますが、去年はほとんど収入がありませんでした」
◆増税か、国債暴落か、という悪魔の選択
これが安倍の地元の声なのだ。だったら、円安補助金をバラまくか? 消費増税を先送りするか? 普通ならば、当然、考え得る選択肢だが、実は安倍にそれはできない。できなくしたのが黒田だ。異次元緩和で国債市場は暴落危機と隣り合わせだ。財政の裏付けがなければ、日本国債はただの紙切れになってしまう。だから、財政再建=消費税増税が国債暴落を回避するための絶対条件になってしまった。
黒田自身が言ったように「政府が財政構造改革に取り組んでいる」姿勢を見せること。これが大事で、従って、財政バラマキも増税先送りもできない。ガンジガラメ、選択肢なし。いつの間にか、ニッチもサッチもいかなくなってしまったのだ。
「アベノミクスはいよいよ、悲劇的な結末を迎えつつあります。異次元緩和で資産インフレを起こし、株価をつり上げ、しかし、長期金利を抑えて、設備投資を誘うシナリオが完全に狂い、日銀は予定外の国債市場対応を迫られています。国債の信頼に疑問符が突きつけられ、財政バランスに細心の注意を払わなければ、国債が暴落してしまう瀬戸際です。そこで、消費税を上げる。社会保障もカットする。これは景気にトドメを刺しますよ。賃金は上がらないので、個人消費は真冬のように冷え込んでしまう。不況が長引けば、日銀は金融引き締めに転じるわけにもいかず、国債危機はますます膨らむ。アベノミクスは完全に挫折したのです」(筑波大名誉教授・小林弥六氏)
来年の今頃、消費税が引き上げられれば、景気はブリザードになる。物価は上がるが、賃金は上がらず、その一方で、アベノミクスの規制緩和で、労働者はどんどん、クビを切られることになる。イヤなら、世界同一賃金を受け入れるしかなく、年収200万円だ。おそらく、ほとんどの庶民が貧困層に転落し、税金を払えるのはひと握りになる。そうなれば、日本の国力は大幅にダウンするが、その道を突き進んでいる。
アベノミクスで浮かれている庶民は喜劇である。