http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866921/news/20130527-OYT1T00173.htm
東京電力福島第一原発事故に苦しむ福島県は、28日の双葉町の避難指示区域再編で大きな節目を迎える。
長期避難者の受け皿となるのは同県いわき市。その人口33万人の街が今、人口急増に揺れている。双葉町などの周辺住民約2万4000人が流入、戸建てを購入する動きが進んでいる。地価上昇も起き、医療機関では患者増加で労働環境が悪化、看護師不足などの影響も出始めた。
小高い丘にある中央台地区の分譲地。計2400人が暮らす仮設住宅が12か所、避難自治体の仮役場やプレハブの校舎も相次いで建設された。「住宅、商業用地ともに一気に申し込みが殺到した。一時的にバブルが起きた」。開発した都市再生機構(UR)いわき営業所の浅野雅之所長(50)はそう語る。
エリアは約530ヘクタール。分譲は30年ほど前に始まり、1万3000人以上の新興住宅地となったが、300区画以上が売れ残った。しかし原発事故で事態は一変し、1年もすると完売状態になった。購入者の3割以上は避難者という。
道路沿いの店舗用物件も好調だ。大熊町などで菓子店2店を営んでいた横田信行さん(55)は昨年暮れ、この地区に店舗を構えた。「閑静な場所なのに、客足はかつての2店舗分の1・5倍」という。いわき市の商工会議所幹部は「市街地の空き店舗もどんどん埋まっている」と話す。
ただし、地価は上昇している。3月発表の公示地価でも、福島県内の大半の自治体が下落する中、いわき市は上昇を示した。家族4人で仮設住宅で暮らす大熊町の主婦(30)は「東電の財物賠償が始まってから戸建て住宅を」と考えていたが、仮設住宅で暮らし始めた昨年1月に比べ、現在の価格は2〜3割高という。「賠償額だけでは全く足りない」と主婦は焦る。
(2013年5月27日09時28分 読売新聞)