アベノミクス相場、ついに訪れた初の試練 電子報道部 小林茂
http://www.nikkei.com/markets/column/scramble.aspx?g=DGXNMSFK23023_23052013000000
2013/5/23 17:02 日経新聞
「アベノミクス相場で初めての波乱だ」(岡三オンライン証券の伊藤嘉洋チーフストラテジスト)。23日の東京株式市場で日経平均株価は大幅に反落し、前日比1143円安の1万4483円で安値引けとなった。終値としては9日以来2週間ぶりの安値水準。午前10時に付けた取引時間中の高値1万5942円からの日中変動幅は1458円に達した。日中の乱高下を反映して、東証1部の売買代金は概算5兆8376億円と過去最大を記録。日経平均先物6月物の売買高は39万枚と前日の3倍強に膨らんだ。大幅下落を受け、市場では「長期的な相場上昇は続くが、短期的には前日終値の1万5627円でピークを付けた可能性がある」(SMBC日興証券の吉野豊チーフテクニカルアナリスト)との見方も出ている。
大幅な調整を引き起こしたのは、急ピッチの上昇に対する警戒感だ。日経平均は5月15日、5年4カ月ぶりに1万5000円の大台を回復。16日に反落してひと息入れた後、17日から22日まで4営業日続伸し、一時1万5700円台を付けた。22日終値時点で日経平均の25日移動平均線からの上方乖離率は過熱感を示す10%の水準を超えたが、市場の先高観は強く、23日午前も1万6000円台乗せを意識した買いが先行していた。
しかし、午前に発表された5月の中国の製造業購買担当者景気指数(PMI)が事前の市場予想より悪化し、アジア株がほぼ全面安となったことをきっかけに、日本株にも利益確定売りが波及した。下げ幅が広がるにつれて買い注文が後退。外国為替市場で徐々に円高ドル安が進むにつれて、日経平均先物にも売りが出て、現物株との裁定解消売りを誘い、株式相場は一段安となった。
ベテラン証券マンも身構える大幅調整だが、心理的な節目である1万5000円を下回り、5日ぶりに反落して引けたことで過熱感は解消した。24日以降は上昇基調を回復する可能性もある。とはいえ、これまでのように短期間で上値を試す展開は難しいかもしれない。
SMBC日興の吉野氏の分析によると、まさに日経平均はチャート上の重要な節目を迎えていた。09年3月10日に付けたバブル後安値(7054円)から10年4月5日の戻り高値(1万1339円)までの上げ幅は4285円。これと同じ上げ幅を1万1339円に加算して求められる「1万5624円」という水準は、5月22日終値1万5627円とほとんど一致する。「重要な節目で上昇が止まり、しかも大幅に調整したことで、株式相場は当面のピークを付けた可能性がある」という。
株式相場は日銀の量的・質的金融緩和を好感して騰勢を強めてきたが、同じ期間に債券相場が不安定さを増しているのは気がかりだ。米長期金利が上昇していることもあり、23日は長期金利の代表的な指標である新発10年物国債の利回りが一時、12年4月5日以来1年2カ月ぶりに1%台に乗せた。東海東京証券の佐野一彦チーフ債券ストラテジストは「13年4月5日に史上最低金利の0.315%まで低下したため、その後はボラタイル(相場変動が激しい状態)になる。ましてや日銀が買い入れ額を増やして国債の流動性が低下しているのだから、ボラタイルになるのは当然」と指摘する。
円安・株高・債券高を実現してきたアベノミクス相場が足踏みを見せ始めた。初の試練をどう乗り越えるのか。長期上昇相場の中で、いったん投資戦略を見つめ直す時期を迎えている。
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日経平均急落、終値1143円安 13年ぶり下げ幅
http://www.asahi.com/business/update/0523/TKY201305230022.html
2013年5月23日15時18分 朝日新聞
23日の東京株式市場は、中国の経済統計の悪化をきっかけに全面安となり、日経平均株価が1100円を超えて急落し、1万4400円台で取引を終えた。午前中には一時1万5900円台をつけるなど乱高下し、1日の値動きは1400円を超えた。
終値は、前日より1143円28銭(7・32%)安い1万4483円98銭。下げ幅は2011年3月の東日本大震災直後や08年10月のリーマン・ショック後を超え、ITバブルが崩壊した00年4月17日の1426円安以来の大きさになった。
東京証券取引所第1部全体の値動きを示すTOPIX(東証株価指数)は同87・69ポイント(6・87%)低い1188・34。東証1部の出来高は76億5千万株と、初めて70億株を超えて過去最高を記録。売買代金も5兆8376億円と過去最高をぬりかえた。