以下のような報道が最近されている。しかし、どうも疑問だ。
下に引用してある報道記事の二番目、「出生前診断で説明ミス ダウン症児、合併症で死亡」には、説明ミスの原因として「(検査報告書が)分かりづらい表現で読み間違えた」としている。しかし、このミスを起こす前に、この病院は少なくとも数年間は羊水検査をしていたようすだ。http://www.facebook.com/endo.kikyo/info にこの病院のフェイスブックの記事の基本情報のページがあり、2012年が設立とある。ミスがあったのが2011年であり、病院を建て替えてフェイスブックを新たに始めたということのはずで、事実、この病院のホームページには「平成8年 函館市にて産婦人科開業」(http://www.endo-kikyo.or.jp/?page_id=308)と書かれている。
そうであれば、「(検査報告書が)分かりづらい表現で読み間違えた」ということは多分あり得ない。なぜなら、常に検査報告書の書き方は同じであるはずで、以上ありの場合はどういう表現、異常なしの場合はどういう表現と決まっているはずだからだ。
実際、「検査会社が作成した報告書には『染色体異常が認められた』と明記されていた」ということなのだから、読み間違えのはずがない。
更に、この医院の医師が行った超音波検査で異常があったために羊水検査をしたのだから、基本的には異常があるという前提で医師は報告書を読もうとするはずだ。
下に引用した記事中にも「通常は2本の21番染色体が3本あり、ダウン症を示す画像もあった」とあるようにダウン症は21トリソミーと言う染色体異常が原因とされ、産婦人科医であればかなり多くの事例を経験しているはずのものだ。「21トリソミー」の21は染色体を大きい順に並べて、大きい方から1、2と番号を付けた21番目という意味。トリソミーとはその染色体が通常2本であるはずなのに3本あることを言う。
どうも、不自然ではないだろうか。何か、遺伝子異常がある可能性があるからどんどん羊水検査を受けて、異常があれば出産を控えようというキャンペーンがされているように感じるのだがどうだろうか。
背景にあるのはやはり福島第一原発事故による放射能汚染ではないだろうか。
ちなみに、この医院、次のようにこのことについて述べている。
http://www.endo-kikyo.or.jp/?p=4104 より引用:
■5月20日のマスコミ報道について
2013年5月20日
報道でご存知のことと思いますが、羊水染色体検査の見誤りについてご家族の方々に本当に申し訳なく思っております。また、当院に通院中の患者様に御心配おかけしておりますことをお詫び申し上げます。
今後はこの様な事がない様に努めて参る所存です。
えんどう桔梗マタニティクリニック
院長 遠藤力
以上引用終わり。
「羊水染色体検査の見誤り」という言葉がどうも浮いているというか、真実性を感じさせないと思えてしまう。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130520-OYT1T00673.htm
羊水検査でダウン症を「異常なし」…賠償提訴
北海道函館市の産婦人科医院「えんどう桔梗ききょうマタニティクリニック」で2011年、胎児の染色体異常の有無を調べる羊水検査でダウン症との結果が出ていたのに、病院側が妊婦に説明する際に異常なしと伝えるミスがあったことがわかった。
妊婦は同年9月に男児を出産、男児は合併症のため約3か月後に死亡した。両親は「出産するか、人工妊娠中絶をするかを自己決定する機会を奪われた」などとして、遠藤力院長らに1000万円の賠償を求める訴訟を函館地裁に起こした。提訴は今月13日付。
訴状などによると、母親は11年3月、超音波検査で胎児に異常のある可能性を指摘され、同4月に羊水検査を受けた。遠藤院長は「結果は陰性」としてダウン症ではないと説明。しかし、出産後にダウン症とわかり、転院先の病院の医師が同クリニックの診察記録をみて、検査で染色体異常が見つかっていたことがわかった。
(2013年5月20日13時30分 読売新聞)
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http://iryou.chunichi.co.jp/article/detail/20130520055001226
出生前診断で説明ミス ダウン症児、合併症で死亡
(2013年5月20日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する
「選択の機会奪われた」 函館で両親提訴
北海道函館市の産婦人科医院で2011年、胎児の染色体異常の有無を調べる羊水検査でダウン症と判明したのに、男性院長が妊婦への説明で誤って「異常なし」と伝えていたことが、関係者への取材で分かった。妊娠継続の判断に影響を及ぼす出生前診断でこうした問題が表面化するのは極めて異例。専門家は「あってはならないミス」としている。
【関連記事】出生前診断説明ミス 母「苦悩繰り返さないで」
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生まれたのは男児で、ダウン症の合併症のため3カ月半で亡くなった。
両親は「妊娠を継続するか、人工妊娠中絶をするか選択の機会を奪われた」とし、院長らに慰謝料など1千万円の損害賠償を求め函館地裁に13日付で提訴した。母体保護法は障害を理由とする中絶を認めていないが、医療現場では条文を緩やかに解釈して対応している現実があり、裁判所がどう判断するか注目される。
ミスがあったのは函館市の「えんどう桔梗(ききょう)マタニティクリニック」。遠藤力院長は3月、取材に「(検査報告書が)分かりづらい表現で読み間違えた」とミスを認め「裁判は弁護士に任せている。両親に苦痛を与え、申し訳ない」と話した。
両親の話や訴状によると、母親(42)は11年3月、遠藤院長から、超音波検査で胎児に障害がある可能性を指摘され、確定診断のため4月中旬に羊水検査を受けた。妊娠20週の5月上旬に遠藤院長から「結果は陰性でした」との表現で、胎児に染色体異常はないと告げられた。
ところが、検査会社が作成した報告書には「染色体異常が認められた」と明記されていた。通常は2本の21番染色体が3本あり、ダウン症を示す画像もあった。転院先の病院の医師が男児の誕生後に、クリニックの診療記録を確認して判明した。
ダウン症は、重い合併症がなければ長期生存が可能。ただこの男児の場合は呼吸機能が不十分で、新生児集中治療室(NICU)に入ったが肝不全や敗血症などで死亡した。
母親は提訴について「遠藤院長の対応に誠意がみられず疑問を感じた。必死に頑張って生きた子どもの命を否定するつもりはないが、医師のミスで家族が苦しんだことを世の中に伝え、2度と起きないようにしてほしい」としている。
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http://iryou.chunichi.co.jp/article/detail/20130520160935798
出生前診断説明ミス 母「苦悩繰り返さないで」
(2013年5月20日) 【北陸中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する
葛藤 わが子に愛情
羊水検査の結果報告書を手にする母親=3月(画像の一部を加工しています)
「出産直後は困惑もあったが、懸命に病魔と闘うわが子を愛するようになった」「医師の間違いを責めることは、子どもの命を否定することになるのでしょうか」。中絶も選べる時期に羊水検査でダウン症との結果が出たのに、医師のミスで事実を知ることができなかった母親(43)が取材に応じ、今も葛藤が続く胸の内を明かした。
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2011年2月に分かった41歳での妊娠。高齢出産に不安はあったが、検査結果は「陰性」で染色体異常はないと医師から聞かされ、安心した。
設備の整った病院に転院し、帝王切開で男児が生まれたのは9月。喜びの涙を流したのは、つかの間のことだった。
赤ちゃんは呼吸や排便がうまくできず、さまざまな病気を発症。輸血を何度も受け、その後、人工呼吸器も装着された。
最初にかかっていたクリニックの診療記録などを転院先の病院側が確認する中で、ダウン症との結果が出ていたことが判明。事実を知らされた父親(39)は、保育器でチューブにつながれたわが子に手を差し伸べ、声を殺して泣いたという。
絶望の中、最初は受け入れることができなかったわが子。だが肝臓や肺の機能が悪化し腹水でおなかが膨れ上がった状態になっても、生きようとする姿を見て両親の気持ちは変わっていった。「この子が全力で頑張っているのに、自分たちが現実を受け止めないでどうするのか」。いとしさが募っていった。
男児は3カ月半に及ぶ闘病の末、亡くなった。母親は「あの子は必死で頑張った。裁判を起こすことになったが、中絶を選択する機会を失ったと主張することが、あの子の存在を否定することになるのでは、と今も悩んでいる」と話す。
両親は提訴するか悩み続けたが、妊婦から採血するだけで染色体異常の有無が高精度に分かる新出生前診断が今春、一部の医療現場に導入されたことが決断を後押しした。確定診断には羊水検査が必要だ。
「検査を受ける人が増えれば、その分ミスが起きる可能性も大きくなる。あの子は短い人生を懸命に生きた。今回の問題を明るみに出すことで、私たちと同じ苦しみが繰り返されないようになれば生まれてきた意味があったと思う」と語った。
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http://iryou.chunichi.co.jp/article/detail/20130520161532318
出生前診断説明ミス賠償請求 裁判所、難しい判断
(2013年5月20日) 【北陸中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する
障害理由の中絶容認 規定なし
胎児の障害と中絶をめぐっては、医師の情報提供の在り方や検査実施義務などが争点となった判決例が複数ある。
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障害を理由にした中絶を認める規定は現行法になく、出生前診断をめぐる今回の訴訟について専門家は「裁判所は難しい判断を迫られる」としている。
妊娠中に風疹になった女性とその夫が「風疹にかかったのに医師が適切な診断をせず、障害児が生まれる可能性を説明しなかったため、中絶の機会を奪われ障害児を出産した」として損害賠償を求めた訴訟で、1992年の東京地裁判決は妊娠継続か否かの選択を自己決定権と位置づけ「夫婦の自己決定の利益が侵害された」と認定、約1千万円の支払いを医師に命じた。
一方、京都市内の病院でダウン症の子を出産した親が「羊水検査の実施を医師に断られ、適切な説明もなかったため出産するかどうかの検討の機会を奪われた」と訴えた訴訟では京都地裁が97年、請求を棄却した。
同判決は「法は胎児の異常を理由とした中絶を認めておらず倫理的、人道的な問題と深く関わる。医師に検査を実施すべき法的義務があるなどと早計に断言できない」と慎重な姿勢を示した。
神戸大大学院の丸山英二教授(医事法)は「これまでの判決例では『中絶の権利が奪われた』などと正面から認める言い方はあまりしていない。母体保護法に胎児の障害を理由にした中絶を認める規定がないため、裁判所も中絶の可否を論理的に突き詰めて説明することを控える傾向がある」と指摘している。