円安の悲劇2。
円安による悲劇1では、「デフレ下の円安は、インフレにならない、単なるコストプッシュによる価格上昇であり、付加価値は低減する。輸入品への資金流出はさらなるデフレを招く。」ことを強調した。
いわゆる需要が供給を上回ることから生じる価格上昇が、インフレ目標の数値であり、これがデフレ脱却につながるのである。コストプッシュの価格上昇と混同してはならない。
しかし今の政府はコストプッシュもディマンドプッシュも区別していないのではないか。コストプッシュをインフレ目標にしているならお笑いだ。無茶苦茶だ。
黒田日銀総裁が、G20で異次元緩和の円安は、デフレ脱却のために行っていると言ったが、国内が縮小循環に有る限り、円安も効果なくデフレ脱却は不可能である。
円安の悲劇2、:デフレの縮小循環が続く限り、円安になっても生産の国内回帰につながることもなく、内需用の国内生産も増えない。たとえ輸出増による還流資金が増えても、国内市場が、需要が供給を上回る拡大再生産を伴うインフレ循環に入ることはない。
現在の円安では、例え輸入品の価格が上昇しても、生産の国内回帰は見込めず、内需関連企業の生産が増えることはない。
円安はさまざまな分野に影響を及ぼす。
実体市場への影響は、
1、輸出企業の生産が増え輸出代金が増える。
2、輸入品価格が上昇する。
3、原材料費が高騰する。
などがある。
2の輸入品価格の上昇は、企業の国内生産に取って有利に働く。しかし消費者にとっては不利に働く。
原材料の高騰は、企業にとって製造コストの増大になる。
デフレという、生産能力比べて著しく資金量が少なくなった市場では、常に供給量(生産量)対して消費不足になっている。市場が循環するごとに不良在庫が生じることになる。それが市場から資金を減少させ、経済を縮小経済にしている。
デフレは消費不足に尽きるのである。このような市場で、自国通貨安となった場合、輸入品物価の上昇が消費者を直撃する。輸入品に対して資金がより多くつぎ込まれ、資金が市場から流出する。
ただでも少ない消費がさらに枯渇するため、より一層の低価格が進むか、生産量の縮小を余儀無くされる。
そのため内需企業の国内生産が増えることは考えられない。
また内需が停滞している限り、輸入品価格が高くなっても、その代替品が国内で作られることはない。より安い中国に代わる、発展途上国の輸入品に代替されるだけである。どんどん賃金の安い国や、より安く供給できる国へとシフトして行く。
これは内需の停滞が、常に高い価格弾力性を維持しているため、消費者の行動が、品質や、性能、デザインなどより、低価格志向が強くでるため、付加価値の高い商品が生まれる土壌が形成されないためである。
いわゆる棲み分けができないのである。これが普通の正常な経済であれば、中国などの発展途上国の製品が続々と入って来ても、低価格品とデザイン性などの機能に優れる中、高級品とに棲み分けができたのである
。
欧米は、現に、サブプライム問題、やリーマンショック前は、このような棲み分けができていた。少なくともデフレではなかった。
ところが日本では、消費税増税後、完全なデフレ循環に陥ったため、低価格志向一辺倒で、棲み分けが出来なかった。
リーマンショック後のヨーロッパは、ドイツやフランスを除き、消費税が異常に高いことも相俟って、価格一辺倒で棲み分けができ難い状態になっている。
国内で代替品が生産されるためには、価格弾力性が低くいことが重要な条件である。消費者の価格に対するゆとりが国内生産に切り代わる重要な指標となる。
消費者にゆとりを与えるためには、消費者の国民負担を減らすか、または消費者へ直接資金を注入する必要がある。
デフレの解消には、市場を拡大再生産させることが必須条件である。それを援助するために円安が効果を発揮する。
しかし円安が効果を発揮するための条件は、市場が拡大再生産する前提がなければならない。
この前提がないため、今回の円安による輸入品価格の上昇は、消費者にさらなる低価格志向を生み出し、さらなる安い国からの輸入品増を招くことになり、内需関連の国内生産は余計に萎縮し、疲弊することになる。
市場の拡大再生産は、生産額を消費額+(貯蓄額ー借金額)が上回ることによって実現する。この循環の繰り返しが、企業の付加価値を高め、個人の所得を上昇せしめるのである。
デフレの場合借金額が貯蓄額を上回り、生産額がすべて購入される事なく、不良在庫が残る。これを繰り返すことにより、不良在庫がどんどん積み上がり、経済が縮小して行く。
その第一の原因が、生産能力に比べ消費額が少ないことである。円安が、輸入品価格の上昇をもたらすが、それは消費者にとっては辛い方向へ、企業にとってはよい方向に振れる。
しかし消費が著しく不足しているデフレ下では、円安による輸入物価の上昇により、消費額のわずかな落ち込みでも大きく生産量を減らすことになる。
それが内需関連企業の増産意欲を失わせることになる。それどころか、縮小生産が続くデフレ下でのさらなる消費の減少は、国内産業をさらに淘汰させよう。
また円安による輸出企業の輸出の拡大は、輸出企業からすぐに港に直行するため、内需市場の循環をその生産額の大きさほど拡大させない。
すなわち、企業から直接、港に入ると、国内の代理店や、卸業者、小売業者、信販会社などを通らないため、生産額が大きくても、内需の拡大につながらないのである。
しかも円安で稼いだ還流資金は、これまた、金融機関と企業へ直接流入し、内需市場に回らない回路になっている。
そのため、今回の円安が輸出拡大に大きく貢献したとしても、内需が好転することはない。
またここ数年間の円高により、多くの有力輸出関連企業は、海外移転を行っており、小泉政権下の2千3、4年頃程の輸出拡大になるとは思えない。
また例え、当時を凌駕するほどの輸出拡大がなされたとしても、内需と外需を合算した名目GDPが好転するだけで、現実には、内需関連企業は衰退しているのである。
小泉政権下の円安による見かけの良さが、内需関連企業のボロボロの衰退を隠し、デフレを悪化させたのであった。今回もその二の舞いを繰り返すであろう。
いまだに小泉政権下の経済的失政を繰り返すことは、経済学者としての資格や素養を疑うに値する。またそれを無批判に垂れ流す、日経新聞などは新聞とし役割を成していない。
円安の悲劇2、縮小循環における自国通貨の安さは、より安い輸入品の増加につながり、国内生産や国内回帰の生産増を促さない。安い輸入品の増大がより一層国内企業を淘汰することになる。
一言主
http://www.eonet.ne.jp/~hitokotonusi/
http://blog.so-net.ne.jp/siawaseninarou/
デフレの脱出は、1にも2にも、消費者の負担の軽減、消費者への資金投入である。
ガソリン価格の低減、高速代金、重量税、などの低減、預金金利の引き上げ、
雇用保険の拡大、生活保護費の維持、年金の物価スライド制の廃止、などが非常に大事である。
それ故今回の円安は、さらなるデフレを深刻化させる悲劇となる。今のまま、消費者に対する資金援助や、負担の軽減なければ、確実に阿部黒組は崩壊するだろう。