http://www.gci-klug.jp/ogasawara/2013/04/14/018797.php
小笠原誠治の経済ニュースに異議あり! トップ |
韓国が最近アベノミクスを批判しない訳
2013/04/14 (日) 11:37
アベノミクス、とりわけ「大胆な金融政策」に対しいち早くクリームをつけていた韓国ですが、最近は、おとなしくなっているように思いませんか?
何故だかお分かりでしょうか?
その理由が知りたければ、昨日もご紹介した米財務省の為替に関する報告書を読むことをお薦めします。
英語が嫌いな方は日本語だけで結構です。逐語訳ではなく、要点だけまとめています。
(韓国政府のサイトより)
South Korea officially maintains a market-determined exchange rate, and its authorities intervene with the stated objective of smoothing won volatility. Like many emerging market currencies, won movements have been influenced by swings in global risk sentiment, with greater global optimism leading to greater net capital inflows (and appreciation pressure). The won appreciated steadily in the second half of 2012. From a 2012 low on May 28, the won appreciated 11 percent against the dollar by year-end with improved global risk sentiment. For 2012 as a whole, the won appreciated by 8 percent, the most among currencies covered in this Report and in the G-20.
・韓国は変動相場制を採用しているが、相場の動きをスムーズにするために介入することがある。
・韓国のウォンは他の新興国の通貨と同じように、世界経済が順調なときには資本の流入が起き、従って通貨価値が上がる傾向にある。
・2012年後半にウォンの価値は上昇した。2012年5月28日のボトムから年末までに11%価値は上昇。2012年通年では8%の上昇となった。
In its September 2012 Article IV Consultation Report on Korea, the IMF noted that reserves are adequate and that "there is no need for further reserve accumulation beyond what would be needed to keep pace with rising foreign liabilities over time."Despite this, for the six months through December 2012, Korea's foreign exchange reserves grew by $12.7 billion (4 percent) to $317 billion. Its net forward position also increased by $10.5 billion to $37.9 billion.
・韓国の外貨準備は十分であるとIMFは判断。
・但し、2012年の後半に韓国の外貨準備は127億ドル増加し、3170億ドルとなっている。
In late 2012, Korean authorities spoke out against won "volatility."On November 27, Korea announced that limits on foreign exchange forward positions would be tightened from 200 percent to 150 percent of equity for foreign bank branches and from 40 percent to 30 percent of equity for domestic banks, effective January 1, 2013. Since then, the authorities have publicly warned they are contemplating a further tightening of macroprudential measures on the banking system.
・2012年後半、韓国当局はウォンの乱高下を鎮めると発表。
・2012年11月27日、韓国は、外国銀行支店の先物の持ち高を資本の200%から150%へ、国内銀行については、40%から30%へと引き下げることを決定(2013年1月1日から発効)。
The Korean banking system relies heavily on wholesale funding, much of it external. This leaves Korea vulnerable to external funding risk, as both the Asian financial crisis of 1997-98 and the 2008-9 global financial crisis revealed. However, the timing and characterization of the potential strengthened macroprudential measures fed market speculation that the intent would be to limit won appreciation.
・韓国の金融システムは外資への依存度が大きく、1997年-98年のアジア通貨危機や2008年-09年の世界金融が示すように、資本逃避のリスクが大きい。
・韓国当局の金融機関に対する規制は、ウォンの上昇を抑えるためのものであるとの見方が強い。
The Korean government does not publish intervention data, which is problematic. Many market participants believe that the Korean authorities intervened in both the spot and forward currency markets to limit the pace of won appreciation particularly in the latter part of 2012 and early 2013. The average monthly increase in Korea's forward position between November 2012 and January 2013 was close to $7 billion.
・韓国政府は、介入の実績データを公表していない。
・市場は、韓国当局がウォンの上昇を回避するために2012年終盤から2013年初頭にかけて現物及び先物市場に介入したとみている。
・2012年11月から2013年1月にかけての韓国当局の月平均の先物ポジションの増加額は70億ドル近い。
In mid-January 2013, the trend toward won appreciation reversed. The won depreciated by 6.9 percent against the dollar in 2013 through early April. According to estimates from the IMF's July 2012 External Sector Report and the IMF's Article IV Consultation with Korea, the real effective exchange rate of the won was moderately undervalued by between 0 and 10 percent.
・2013年1月中旬、ウォン上昇の流れが反転。ウォンは対ドルで、4月の初めまでに6.9%低下した。
・IMFによれば、ウォンの実質レートは、0〜10%の範囲で過小評価されている。
Korea's economy grew by 1.6 percent in 2012, but growth slowed sharply in the second and third quarters of the year. Third and fourth quarter annualized growth rates were 0.2 and 1.5 percent, respectively. In January, the IMF projected improved growth prospects in Korea, with an estimate of GDP growth rates of 3.6 percent in 2013 and 4.0 percent in 2014.
・韓国の経済成長率は2012年は1.6%であった。
・IMFは、韓国の成長率見通しは、2013年が3.6%、2014年が4.0%としている。
Inflation pressures in Korea have waned since 2011, with prices rising only moderately in 2012 by 1.2 percent, below the Bank of Korea's (BOK) 2 to 4 percent inflation target range. In response, the BOK lowered its policy interest rate twice in 2012, from 3.25 percent to 3.0 percent in July, and again to 2.75 percent in October. The policy rate remained at 2.75 percent through March 2013.
・韓国では2011年以降、インフレ圧力は弱まっており、2012年のインフレ率は1.2%となっている。
・韓国銀行の物価目標値は、2〜4%である。
・韓国銀行は、2012年中に政策金利を2回引き下げた。7月に、3.25%から3.00%とし、10月に2.75%にした。
Korea's trade surplus widened during the second half of 2012 relative to the same period in 2011 due to sluggish import demand. Goods and services exports totaled $332 billion in the second half of 2012,roughly unchanged relative to the same period in 2011, while imports-at $308 billion-were down 2.2 percent from 2011. Korea's current a ccount surplus as a share of GDP rose sharply to 3.8 percent of GDP in 2012 compared to 2.3 percent in 2011. The current account surplus was the highest on record. Korea's current account has remained in surplus even as the rise in commodity prices has resulted in worsening terms of trade over the past several years.
・韓国の2012年下半期の貿易収支は、前年同期と比べ改善した。
・韓国の2012年の経常黒字額は、対GDP比3.8%に上昇した(2011年は2.3%)。経常黒字額は過去最高。
In February 2013, Korea joined the rest of the G-20 in committing to refrain from competitive devaluation and resolving not to target its exchange rate for competitive purposes. We will continue to press the Korean authorities to limit their foreign exchange interventions to the exceptional circumstances of disorderly market conditions and to commit to greater foreign exchange market transparency including through the publication of intervention data, similar to Japan and emerging markets such as Brazil, India, and Russia. We will also continue to press Korean authorities to ensure macroprudential measures should be clearly directed to reducing financial sector risks-in design, timing, and description-rather than to limiting capital inflows or reducing upward pressure on the exchange rate.
・韓国は、2013年2月の、通貨切り下げ競争をせず、為替レートを目標としないとするG20の声明に合意している。
・米国は、韓国が通貨価値の切り上げ圧力を回避する目的で政策手段を利用しないよう圧力をかけ続ける。
何故、韓国はアベノミクスに文句をいうのを止めたのか?
それは、文句をいう必要がなくなった、と。つまり、ウォン売りドル買い介入を行い、ウォンの価値を引き下げるのに成功し、そのうえ、2012年度の経常黒字額は過去最高になったからなのです。
さらに言えば、韓国もG20の共同声明どおり、各国の金融政策は通貨価値を目標とするものではないという認識を共有している訳ですから、日本のことを悪く言うことができなのです。
いずれにしても、ここでもアメリカは、円と同じようにウォンの動きを注意深く監視し、圧力をかけていくと言っているのです。
とれんど捕物帳 海外勢の円安期待は根強い 来週のG20は注目したいイベント
:2013/04/13 (土) 08:33
:2013/04/13 (土) 08:23
円安の動きは依然として続いていたものの、週後半にドル円が100円に到達できなかったことで、週末には気が抜けたように利益確定売りに押されている。
日本の機関投資家による日本国債から外債への資金シフトの期待も出ているようだが、今週財務省から発表になっていた対内外証券投資や、生保のコメントなどからはその気配はまだ見られていないようだ。
やはり海外のファンド勢を中心とした円安期待がドル円、クロス円を支えている模様。黒田日銀の緩和発表以降、急ピッチで円安が強まり、我々日本人からすれば、これ以上の上値追いは躊躇し、落ちて来るのを少し待ちたいといった人も多いのではないか。ただ、外国人はそうでもない。中期的にまだ魅力的な水準であれば、足元の状況がどうであろうと動いて来ることも多く、今週はその雰囲気を感じさせられた週ではあった。
あと日本の個人投資家のFX取引を通じたオーダーも相当程度出ていたものと推測される。
投機筋は矛盾を見つけ出して売るのが好きだ。去年はユーロを売った。その前はドルを売っている。それらも一巡感が出つつある中、過度に上昇していた円は売るのには魅力的だったのだろう。そのタイミングでアベノミクスが登場して来たことから、飛びつかざるを得なかったのだろう。
大震災以降のエネルギー問題を抱え、貿易赤字国に転落、日銀の大規模緩和、そして、直近では地政学的リスクも台頭する中、海外勢を中心とした円安期待は根強い。
さて来週だが、ドル円が100円に到達できなかったことで、円相場は一旦売りのトーンが下がっている。もう少し調整が続く可能性もありそうだが、来週のG20は注目したいイベント。
日本政府の根回しがうまく行っているのか、主要国は日銀の政策に賛同する声が、気持ち悪いほど圧倒的。中国は文句を言っているようだが、G20で日銀の大規模緩和が非難される可能性は低そうだ。それを確認して再度円売りを再開させる可能性もあり、G20関連の動きはおさえておきたいところ。
その他、米企業決算は主要なハイテク企業や金融が発表される。PCの需要低迷が伝わっており、ハイテクの決算には注意したいところではある。あとは週初に発表されるGDPを始めとした中国の経済指標、そして日本の貿易収支も注目して置きたい。
(Klugシニアアナリスト 野沢卓美)
()は前週
◆ドル円(USD/JPY)
中期 上げトレンド継続
短期 ↑↑(↑↑)
◆ユーロ円(EUR/JPY)
中期 上げトレンド継続
短期 ↑↑(↑↑)
◆ポンド円(GBP/JPY)
中期 上げトレンド継続
短期 ↑(↑)
◆豪ドル円(AUD/JPY)
中期 上げトレンド継続
短期 ↑↑(→)
◆ユーロドル(EUR/USD)
中期 下から中立へトレンド変化
短期 ↑(↑↑)
◆ポンドドル(GBP/USD)
中期 中立から上へトレンド変化
短期 ↑↑(→)
【概要】
幾つかのシグナル(内容は秘密!)を合成し、各通貨ペアの中期と短期のトレンドを示しています。中期は先週末からのトレンドの変化を言葉で説明。短期は矢印でトレンドを表記、矢印の本数は強さを示します。強ければ最大3本の矢印が表示されます。期間は中期が2ヵ月程度、短期は2週間程度の傾向です。
議事録、経済報告、会合などに注目の週 〜英中銀議事録、ベージュブック、IMF経済見通し他
2013/04/14 (日) 08:00
今週は、海外の経済指標としては、
月曜日に出る中国の実質GDP、小売売上、鉱工業生産などの一連の指標と
同じ月曜日の米NY連銀製造業景気指数が目立つ程度
日本の指標としては
18日の3月の通関ベース貿易収支がやや注目といったところ。
それ以上に注目されるのは
英中銀金融政策会合議事録や
米地区連銀経済報告(ベージュブック)
IMFの世界経済見通しと国際金融安定性報告、
G20財務相・中銀総裁会議など
経済指標以外の発表、会合などに注目材料が目白押しとなっています。
中でも注目は17日17時半に発表される英中銀金融政策会合(MPC)議事録です。
4月3日、4日に行われた英中銀金融政策会合(MPC)では
事前見通し通り、政策金利(0.5%)、資産買入プログラムの規模(3750億ポンド)を
共に据え置く結果に。
ただ、英MPCでは現行政策を維持する場合、
基本的に会見や声明発表などを行わない為
その詳細(投票結果など)は17日の議事録公表待ちとなっています。
2月、3月のMPCでは
キング総裁を始め、3名の参加者が
資産買入プログラムの250億ポンド拡大を主張しており
6対3での規模据え置きとなりました。
TOPの意見が圧倒的に強い日本や米国とは違い
英国では議長提案が否決されることはよくあるケースとはいえ
2月3月(そしておそらく4月も)続けて否決という流れは
なかなかのインパクト。
そうした中で、次回以降の拡大にむけて
据え置き派から拡大派に転向したメンバーが居るかどうかがひとつのポイントとなります。
先週発表された英鉱工業生産や製造業生産高(共に2月)が予想及び前回(1月分)を上回るなど
景気低迷にやや一服感もあるだけに
投票結果も同じ6対3という可能性が高そうですが
マイナス金利導入に含みを持たせるなど
一層の緩和に対する姿勢を強め始めたタッカー副総裁あたりが
今回買い入れ拡大派に転向した可能性はあります。
英国は直近のインフレターゲットの対象である消費者物価指数(CPI)前年比が2.8%と、
ターゲットの2%を上回る状況が続いており
もう一段の緩和を阻む要因となっていますが
オズボーン財務相がここに来て中央銀行の責務見直しを表明するなど
インフレ抑制よりも景気底入れを重視し、もう一段の緩和を実施する余地が広がっていることもあり
年内の追加緩和期待が強まってきているところ。
本命は7月にカーニー新総裁(現カナダ中銀総裁)が就任して最初の会合での緩和実施とみられますが
今回タッカー副総裁あたりが緩和派に転向していると
5月の緩和期待が一気に広がるだけに
注目してみていきたいところです。
その他、ベージュブックでは
直近の雇用統計が衝撃的に弱く
ここに来て景気回復の減速懸念が広がっている米国において
地方経済の状況が依然として堅調であるかどうかを確認したいところ
G20では
欧州経済の状況などが中心となるテーマですが
黒田日銀による「量的・質的緩和」やアベノミクスをうけての円安動向などについても
他国から色々と発言があると見られる為
この辺りにも要注意です。
http://www.mof.go.jp/pri/publication/financial_review/fr_list6/r110/r110_05.pdf
欧州ソブリン危機―ソブリン・リスクと金融セクターのデフォルト・リスクの波及効果について―
大野早苗
2008 年のリーマン・ショックの再来とも懸念されるほど,最近の欧州金融情勢は深刻な状
況に陥っている。欧州地域は域内における金融取引の占有率が高く,投融資活動を経由して
域内のソブリン・リスクが周辺諸国へと波及する可能性がある。また,金融システム不安が
当該国の財政健全性の毀損につながる可能性も懸念されている。さらに,欧州金融安定化メカ
ニズムの創設後は,域内のある国で起こった財政危機が欧州全域に波及するもう一つの経路が
加わったことになる。
本稿では,各国の相互依存関係,金融セクターと公的セクターの相互依存関係を考慮した上で,
欧州域内における危機の波及効果にどのような特徴がみられるかを検証した。欧州金融安定化
メカニズムの創設以後ではユーロ圏のコア国同士の波及効果が顕著に高まっていたが,波及効
果が金融システム不安に対する懸念を通じて増幅されていた可能性が示唆された。一方,異常
な高騰を呈していたギリシャのソブリン&'6からの波及効果は確認できなかったが,その原因
として&'6取引に関する規制強化やクレジット・イベントの認定の混乱を背景に市場流動性が
縮小していることが挙げられる。また,コア国の中でも,ドイツの金融機関の&'6に対するソ
ブリン・リスクの波及効果は軽微であったが,その背景として「質への逃避」現象としてドイ
ツのソブリン&'6プレミアムを引き下げる効果が作用していた可能性が示唆された。
[ 米国全般 ]
QE3縮小の足音が近づく〜ただし直近の雇用改善ペースは鈍化:米国経済
掲載日:2013-04-13 発表元:大和総研 http://www.dir.co.jp/research/report/overseas/usa/20130412_007045.html
◆2013年3月19日、20日に開催されたFOMCの議事録が公表された。現行の金融政策に変更はなく、事実上のゼロ金利政策とQE3による買い入れ規模が維持された。議事録の内容によると、Fedメンバーが想定する資産買い入れ規模の縮小・停止の開始時期は、民間エコノミストの想定より早い可能性がある。
◆しかし、FOMC後に発表された3月の雇用統計は雇用改善ペースの鈍化を示す内容であった。また、国内や欧州の財政問題など不確実性が依然として残っている。そのため、今回の議事録の内容はある程度割り引いて見るべきだろう。
◆Fedメンバーの間で資産買い入れ規模の縮小・停止時期について、それぞれの想定する期間まで議論が進んでいたことは事実である。今後の金融政策を占う上で、Fedメンバーの発言がより注目されることになるだろう。また、雇用統計や個人消費などの経済指標にも注目したい。
[ 行政・財政 ]
防災投資と政府間機能配分の経済理論:地方財政−政府間リスク分担
掲載日:2013-04-13 発表元:財務総合政策研究所 総アクセス数3 PDF [レポートへ直ジャンプ]
[ 欧州全般 ]
序論:ソブリンリスクと通貨問題
掲載日:2013-04-13 発表元:財務総合政策研究所 http://www.mof.go.jp/pri/publication/financial_review/fr_list6/r110/r110_01.pdf
財務省財務総合政策研究所「フィナンシャル・レビュー」平成 24 年第3号(通巻第 110 号)2012 年3月>
−1−
序 論
一橋大学大学院商学研究科教授 小川英治
2009 年 10 月のギリシャの政権交代によって
財政上の統計の不備が明らかにされたことをき
っかけにして,ギリシャの財政当局に対する信
認が失墜し,財政危機に直面した。その財政危
機のインパクトは,2008 年のリーマン・ショ
ックに引き続いてユーロを暴落させるとともに
乱高下させたほか,ギリシャと同様の巨額の財
政赤字や政府債務残高を抱えていたポルトガル
などの南欧諸国へ財政危機が波及することとな
った。財政危機に直面したギリシャとポルトガ
ルそしてアイルランドの政府は,欧州連合((8)
と欧州中央銀行((&%)と国際通貨基金(,0))
のいわゆるトロイカ体制から金融支援を受ける
に至った。同時に,それまでリスボン条約にお
いて財政移転が禁止されていたものの,過渡的
に欧州金融安定ファシリティ(()6))を設立し,
2012 年 6 月までにリスボン条約を改正し,欧
州安定化メカニズム((60)を設立すること
が決まった。
ユーロ圏諸国の財政危機を解決するために
は,長期的には構造改革が必要であるとともに,
短期的には財政再建と民間部門の関与を通じた
財務削減とセイフティネットとしての ()6) の
拡充と (60 設立と (&%による国債買上げが必
要となる。とりわけ重要なことは,財政危機の
発生及び一部のユーロ圏諸国への波及において
重要な役割を果たした失墜した財政規律を回復
させることである。財政規律を回復することが
喫緊の課題である。そのためには,財政危機国
の財政再建が重要であり,可視化された財政再
建計画の策定と着実な実施が必要となる。それ
と同時に,財政規律確立とモラルハザード防止
によって財政危機の可能性やソブリンリスクを
縮小することが必要となる。
本特集においては,田中論文と嘉治論文が,
欧州のソブリンリスクの高まりによる財政危機
と原因とその対応からユーロ制度の問題を論じ
る。大野論文と井上・大重・増田論文は,世界
金融危機の欧州への影響も含めて,財政危機の
波及について実証分析を行う。そして,小川・
岡野論文は,ソブリンリスクを明示的に考慮に
入れて,(&% による国債買上げを含む共通通
貨圏内の金融政策について考察する。
小川・岡野論文(「欧州ソブリンリスクと金
融政策」)は,共通通貨圏における金融政策上
のインフレとソブリンリスクとの間のトレード
オフ問題について,動学的確率的一般均衡
('6*()モデルを利用して分析している。2 国
で構成される共通通貨圏及び外国の 3 国で構成
されるモデルにソブリンリスクを明示的に導入
している。債務残高の増大に伴ってソブリンリ
スクが高まっている経済においては,インフレ
の安定及び *'3 ギャップの安定化に対してテ
ーラールールがそれほどの効果をあげないこ
と,そして,価格が硬直的な経済においてはテ
ーラールールがむしろ経済を不安定化すること
が示された。共通通貨圏においてソブリンリス
クが存在する場合には,採用すべき金融政策は
テーラールールではなく,国債スワップ操作,
つまり同時にインフレ懸念のある国の国債を売
りオペを行うことによって,貨幣供給総額に対
して中立的にしながら,ソブリンリスクの高い
国債を買い支えることが望ましいことが指摘さ
れた。
田中論文(「ソブリン・金融危機とユーロ制
度の変容」)は,貨幣的制度集権がなされてい
るが,財政制度と金融監督制度が分権のままで
ある原初ユーロ制度が世界金融危機と欧州財政
危機に直面して,その垂直的通貨同盟の問題を
露呈したことを指摘した。また,原初ユーロ制
度は,危機の予防・管理・解決という 3 つの段
階の対応に関する規定がなく,「平時の通貨」
としてユーロが設計され,その運営を担当する
(&% は,狭義の金融政策のみを実施するとさ
れていた。このような原初ユーロ制度は世界金
融危機や欧州財政危機には耐え切れなかった。
そして,ユーロ制度の改革(@構造問題対策,
A金融危機対策,B金融機関の健全性監督の新
制度)が進められようとしている。さらに,原
初ユーロ制度の 2 つの原則,すなわち,財政連
帯性拒否と中央銀行国債引受不可の原則が崩壊
した。こうして,ユーロ制度の危機を超えて,ユ
ーロ圏連邦制度を加味した垂直的通貨同盟に向
かう改革ユーロ制度の見取り図が示されている。
嘉治論文(「ソブリン・リスクと通貨体制 ―
欧州の経験が与える示唆」)は,ユーロ導入の
目的の一つである,金融(財政)政策の自由度
を奪われ,価格・コストが透明になることによ
る,合理化・構造改革の促進が達成できず,共
通通貨域内の「非対称性」が低下しなかったこ
とが,ソブリンリスクを高めたと論じている。
そのうえで,欧州の財政危機が安定成長協定の
強化や (60 の設立や金融監督機関の設立など
制度改革をある程度進めている一方,ユーロ共
同債やリスボン戦略を受け継いだ (XURSH2020
などは依然として進んでいないことを指摘して
いる。さらに,危機をもってしても政治的に困
難な構造改革は実現しがたいことから,民主主
義の下で必要な改革を実現させる最も有効な方
法は,有権者自らが改革を是認することである
が,財政収支を改善するような緊縮的政策は,
それを困難とする。最後に,共通通貨を導入す
る場合にソブリンリスクを回避するためには,
欧州のように相互依存が高まった地域の平和的
繁栄のためには統合しか選択肢はなく,その論
理的帰結として共通通貨がある。統合を持続可
能なものとするためには,国家主権を譲渡して
内政干渉を受容れるかしかないと指摘する。
大野論文(「欧州ソブリン危機―ソブリン・
リスクと金融セクターのデフォルト・リスクの
波及効果について」)は,デフォルト指標(&'6)
と投資家の危険回避度や流動性調達の困難さが
反映されるリスク・アペタイト指標(9,;)を
取り上げて各国間の相互依存関係及び公的部門
と銀行部門との間の相互依存関係に着目して,
ユーロ圏内におけるソブリンリスクの波及効果
を構造 9$5 によって検証した。その実証分析
は,ギリシャの財政収支の改竄が明るみになっ
た第 3 期においてリスク・アペタイトよりもむ
しろギリシャの財政赤字問題の影響度が拡大
し,欧州ソブリン危機における各国の &'6 プ
レミアムの上昇がグローバル要因ではなく財政
赤字という国固有の要因を起因とする現象とし
て起こったことを示した。ギリシャへの第 1 次
救済策発表後の第 4 期になるとリスク・アペタ
イトの影響が顕在化した。ただし,反応にばら
つきが見られるようになり,特に財政赤字問題
が深刻な国の &'6 が高騰する傾向がみられた。
欧州財政危機時におけるリスク・アペタイトの
高まりは,危険回避度の高まりによる「質への
逃避」の他に流動性調達がより困難になったこ
とを示唆した。
井上・大重・増田論文(「ギリシャ財政危機
の波及とユーロ圏国債市場の構造変化」)は,
ユーロ圏諸国の国債利回りデータを利用して,
ギリシャ財政危機が他のユーロ圏国債市場へ伝
播したプロセス及びその構造変化について実証
分析を行った。構造変化が発生する可能性のあ
る時点を,ギリシャの財政数値の粉飾が発覚し
た時点(2009 年 10 月 21 日)とユーロ危機対
応融資の枠組みが合意された時点(2010 年 5
月 10 日)として,'&&0*$5&+ モデルを利
用して分析が行われた。分析の結果,第一に,
すべての欧州諸国が同時に上述の 2時点で構造
変化を経験せず,各国の経済事情によって構造
変化点に違いが存在することが示唆された。第
二に,リーマン・ショック以前には,ドイツ国
債利回りとユーロ圏諸国のそれとの間に高い相
関が確認されたが,リーマン・ショック後,ド
イツ国債利回りとギリシャ,アイルランド,ポ
ルトガル,イタリアのそれとの間の相関が徐々
に弱まった。第三に,平均の因果性と分散の因
果性の検定結果より,ギリシャ・ショックがス
ペイン,イタリア,フランス,ドイツのユーロ
圏主要国に波及したことが確認された。
[ 中国 ]
回復に転じた中国の輸入〜投資財比率が高い日本からの輸入は低迷:リサーチ・アイ
掲載日:2013-04-13 発表元:日本総合研究所
http://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/research/pdf/6718.pdf
― 投資財比率が高い日本からの輸入は低迷 ―
【ご照会先】調査部 研究員 関辰一 (seki.shinichi@jri.co.jp , 03-6833-6157)
(1)中国では、2012年末から輸入の増勢が加速(図表1)。景気対策により、景気が持ち直しに
転じたことが背景(図表2)。
(2)もっとも、地域別にみると大きな違い。NIEsやASEAN、米国などからの輸入は急増
しているものの、日本とEUからは弱含み(図表3)。これは、足元の回復パターンを反映
した動き。すなわち、固定資産投資の抑制スタンスが続くなか、投資財の比率が高い日本・
EUからの輸入が減少した一方(図表4)、輸出と個人消費の持ち直しに支えられて、生産
財・消費財の比率が高いNIEs・ASEAN・米国からの輸入は着実に拡大。
(3)今後を展望すると、景気対策効果により中国の成長率が徐々に高まると予想されるなか、輸
入の増勢は続き、日本からの輸入も早晩増加に転じる見込み。もっとも、過剰生産能力を警
戒する政策スタンスが続くため、投資財の需要が急拡大する可能性は低く、日本からの輸入
は緩慢な回復にとどまる見通し。
[ 証券・投資 ]
東日本大震災と日本の株式市場における投資家行動:世界の資金循環と日本の金融市場
掲載日:2013-04-13 発表元:財務総合政策研究所
http://www.mof.go.jp/pri/publication/financial_review/fr_list6/r109/r109_03.pdf
東日本大震災と日本の株式市場における投資家行動
−16−
要 約
東日本大震災前には上昇基調にあった株価は,震災後一旦急落し,その後数日のうちにあ
る程度回復した。近年,日本の株式市場で大きな取引シェアを占めているのは海外の投資家
であるが,震災直後は,通常時以上に海外の投資家が市場で活発に取引を行っていた。震災
前後に日本の株式をネットで購入していたのは海外の投資家だけであり,株式の投資主体別
に 2011 年1月以降のネットの購入額を累計してみると,日本の株式は海外の投資家によっ
て買い支えられていたことがより明確に示される。過去に同一データを分析した先行研究で
は,証券自己売買は,海外の投資家と同一のポジションをとっていることが多い(海外の投
資家の純購入額が増えている時には,証券自己売買の純購入額も増えていることが多い)こ
とが示されていたが,震災前後には,国内の証券会社(証券自己売買)やそれ以外の金融機
関は,ネットで売却し続けていたことが示される。VAR 分析では,震災前後は国内の金融
機関や証券自己売買など,むしろ国内の投資家に特定の売買パターンが観測されたことが示
される。また,原子力発電所の事故の影響についても分析を試み,東京電力株式会社の株式
リターンを変数に加えた VAR 分析も行ったが,分析期間中に事故の状況に特に敏感であっ
たと思われる海外の投資家の売買との間に特別な因果関係は観測されなかった。
キーワード:東日本大震災,日本の株式市場,投資家行動
JELclassification codes:G11,G14
http://www.asyura2.com/13/hasan79/msg/541.html