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2013/4/9 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
民主党政権に心底怒り、呆れていた国民は今、自民党政権に戻って、「前よりマシになった」と思っているのかもしれない。日銀を輪転機にさせているアベノミクスの“危うさ”は何となく感じるとして、実際、株も上がり、景気回復の兆しも見えるのだから、ナ〜ンにも決められなかった野田政権よりはるかにイイ。こうした“相対的評価”が安倍の高支持率につながっているのだろうが、だとすると、本当に野田は罪つくりだ。
前がヒドすぎたから、今がマトモに見える。この“錯覚”を利用して、安倍自民党が今、やろうとしているのは、とんでもないことばかりだからだ。
例えば、「正社員クビ切り法案」。産業競争力会議や規制改革会議で「解雇ルールの見直し」が話し合われ、解雇条件の緩和やトラブルに発展したときには金銭で片を付ける法改正が検討されている。政府側は「人材移動の支援」なんて言っているが冗談じゃない。ダメ社員はクビにする。もめたら金でケリをつける。それがこの法案の中身だ。そのうえ、政府は「労働者が働きやすいように」とか言って、「地域限定正社員」の導入も検討している。働く場所や仕事の中身を限定するもので、裏を返せば、その地域での仕事がなくなれば、ご用済み、ポイ捨てだ。
◆労働者切り捨て、企業優先の自民党
「まさにアベノミクスの真相が見えるようです。景気回復のためには雇用の安定がもっとも大事なのに、それよりも企業の競争力強化を優先させるのです。成長戦略とか言って、3本目の矢がどれだけ素晴らしいのかと期待していたら、出てきたのはクビ切り法案だった。それも、体力が落ちている企業のために苦渋の決断なのだ、というのならともかく、“労働者のため”などと詭弁を言う。笑止千万ですよ。そのうえ、こんな大事なことを話し合っている競争力会議や規制改革会議には労働者の代表が入っていない。“切る側”だけで議論を進めて“切られる側”の意見には耳を貸そうともしないのです。あり得ないような決め方です」とは、この問題を連日、追及している民主党の山井和則衆院議員。
こうなったのは「民主党よ、お前のせいだろう!」とも言いたくなるが、ま、それはともかく、山井の言い分はもっともだ。自民党政権に代わって、労働者切り捨て、企業優先があまりに露骨だ。しかも、民主的な議論、手続きすら無視なのだから、かつての自民党よりはるかにヒドイ。
◆安倍流愛国心教育を上から押しつけるのか
自民党の横暴、暴走、やりたい放題は他にもゴマンとある。
普天間基地の辺野古移設も地元の意向を無視して強行の構えだ。嘉手納以南の6米軍基地が返ってくることを理由に「沖縄の負担軽減」をうたっていたが、返却の時期は明記されておらず、早い話、空証文だ。それなのに、安倍は「目に見える形で沖縄の負担軽減が進むことになった」とホザいた。
新聞には小さくしか出ていなかったが、教育制度の見直しも着々で、教育再生実行会議はこのほど、教育長を自治体の首長が任命し、その代わり、地方教育行政の責任者にする案をまとめた。地域の有権者や保護者らでつくる教育委員会をお飾りにして、首長が気に入った教育長に独裁的な権限を与えるわけだ。安倍の好きな愛国心教育をトップダウンで押し付ける案である。
「かと思うと、産業競争力会議では外国企業を積極的に誘致するために特区をつくって法人税をゼロにする案が出ています。法人税をゼロにすれば、財政は悪化する。その分、雇用や景気刺激策になればいいが、そこに結びつかないことは震災後の野田政権の景気対策で実証済みです。喜ぶのは外資系企業だけ。売国奴政策と断じてもいい。それでなくても、アベノミクスの金融緩和で、余ったマネーは米国の株式市場などに流れる。日本人のためにはならないのです」(「日本を滅ぼす消費税増税」の著者で経済アナリストの菊池英博氏)
こうやって、規制緩和で米国を喜ばせるのは、小泉政権がやってきたことだ。その結果、日本市場は外資の食い物にされ、地方経済は疲弊し、格差が拡大した。そのために自民党は選挙で惨敗、下野したのに喉元過ぎれば、何とかだ。またぞろ、同じ手法で国民を裏切り、国を売ろうというのだから、どうにもならない連中だ。
◆やりたい放題の総仕上げは憲法改正
「古い自民党の復活といえば、TPPもそうですよ。TPPを推し進めている米国も輸出補助金という名目で農業に金をバラまいている。自民党議員は『米国もやっているのだから日本もやれ』と公然と農業に巨額の補償をつけるように言い出しています。民主党の失政で政権復帰できたのに、体質はまったく変わっちゃいないのです」(ジャーナリスト・横田一氏)
とんでもない勘違い、呆れたおごり、信じられないような厚顔なのだが、そんな自民党が今や、わが物顔で永田町を闊歩し、7月の参院選も「まず負けない」というから、暗澹たる気持ちになってくる。さらにふんぞり返り、上から目線で庶民イジメをエスカレートさせるのだろう。
「自民党が参院選に大勝した後は、ありとあらゆる屁理屈をつけて、自分たちのやりたい放題の暴走を始めると思います。来年4月の消費増税はもちろん、断行だし、衆参で数を押さえれば、いよいよ看板の右翼路線にも突き進む。安倍首相の支持者たちは、現政権が右翼路線を封印していることに不満がたまっていますからね。違憲状態の国会議員が改憲に突き進むというブラックジョークのような話になる。その時は一体、どんな言い訳をするつもりなのでしょうか」(政治評論家・野上忠興氏)
高支持率におごっている菅官房長官はすでに、「参院選では(憲法改正の手続きを規定した)96条改正が争点になる」と言ってはばからないのだから、あからさまだ。
自民党の改憲草案には自衛隊を国防軍に改めることや、表現の自由の制限や緊急事態での国民の義務などが盛り込まれている。個人の自由を保障するために権力を制限した現行憲法の立憲主義を真っ向から否定する中身で、水島朝穂早大教授は「立憲主義の理解も怪しい人々が自分の思いや主張を並べたようなところがある」(アエラ4月8日号)と切り捨てている。
しかし、自民党が参院選に勝って、維新が協力すれば、こうした憲法改正が現実になっていくのである。
改めて、こんな事態を招いた民主党の野田は万死に値し、こうなったら、密約でも何でも暴露して、安倍と刺し違えてもらいたいものだ。