為替動向で金融政策は変更しない=黒田日銀総裁
2013年 04月 10日 21:09 JST
[東京 10日 ロイター] 日銀の黒田東彦総裁は10日、ロイターなどとのインタビューに応じ、4日に打ち出した大規模な「量的・質的金融緩和」政策への市場反応は「基本的にポジティブ」との見方を示し、長期金利が乱高下していることについては「新しい均衡点を模索していく動き」と語った。
為替市場で円安が加速しているが、為替政策の権限と責任は政府にあるとし、為替相場の動向によって「金融政策を変えることはない」と明言した。
あらためて今回の緩和策は、2年程度を念頭に置いて2%の物価安定目標を達成するために「必要な措置はすべて講じた」と強調し、「あくまで目標が達成されるまで必要な措置はとる」と物価動向に応じた追加措置にも含みを持たせた。
<緩和策受けた市場反応は「ポジティブ」、長期金利は均衡探る動き>
黒田総裁は、就任して初めての金融政策決定会合で、長期国債の大規模購入を柱に、今後2年でマネタリーベースや長期国債などの保有額を2倍にする大胆な金融緩和策を打ち出した。これを受けて市場では株高・円安が一段と進行しているが、総裁は市場の反応について「基本的にポジティブ」との見方を示した。一方、長期金利が連日、乱高下していることには「新しい均衡点を模索していく動き」とし、これまでと次元の違う緩和策を講じた中で「こうした市場の動きはある程度、あり得る動きだと思っている」と語った。その上で、市場の動向を「十分に注視し、市場の反応を点検していくことは引き続きやっていきたい」と述べ、市場関係者と対話の場を定期的に設けていく考えを示した。
<為替が目的ではない、権限と責任は政府にある>
緩和策を受けて、為替市場では1ドル=100円に迫る円安が進行している。総裁は「中銀として為替の特定の水準や方向について具体的に申し上げることは適当ではない」としながら、今回の緩和策は、物価安定目標の達成という国内目的の政策であり、「為替を目標にしたものではまったくない」と強調。今回の措置で日本経済が回復すれば「周辺国を含めて世界経済にもプラス」と述べ、4月中旬にワシントンで開かれる20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で「量的・質的緩和の目標、目的を十分に説明したい」と語った。
しかし、一段と円安が進行すれば、他国から通貨安誘導の批判を受けるなど弊害が出てくる可能性がある。総裁は「為替レートがどうなるのか、それが経済にどのような影響を与えるのかは、十分にモニターはしていく」としながら、「日銀が為替レートを目標にしたり、それをみながら金融政策を変えるということはない」と断言。「為替レートについて権限と責任があるのは政府だ」とし、為替相場の過度な変動には政府が為替市場介入などで対応すべきとの認識を示した。また総裁は、一般論として他の需要が一定であれば金融緩和をした国の通貨は下落する傾向にあるとしたが、「それがいつまでも続くわけではない。経済が高い成長を遂げれば、逆に通貨が強くなる可能性もある」と語った。
<実体経済への効果波及に自信>
今回の緩和策については「2年間を念頭に置いて2%の物価安定目標を達成するために、現時点で必要な措置はすべて講じた」と説明。大胆緩和への期待も反映して企業や家計のマインドが改善し、インフレ期待も高まりつつあるが、総裁は緩和効果について「資産効果が出てきている中で、実体経済が徐々に回復し、物価上昇率も徐々に上昇していくと思う。今回の政策は十分に持続力がある」と述べ、実体経済への効果波及を通じて「物価目標の達成につながっていく」と自信を示した。
<追加緩和を排除せず、必要に応じて上下の調整あり得る>
今後の経済・物価動向によっては追加緩和が必要になる可能性もあるが、これに関して総裁は「目標は2%の物価安定目標。2年というのは、2年程度を念頭に置いてやるということ」とし、「あくまで2%の物価安定目標が達成されるまで必要な措置をとる」と追加緩和の可能性を排除しなかった。リスク要因には上振れ・下振れ双方が存在することから、「その時々に応じて必要な上下方向の調整はあり得る」とも述べたが、「現時点では、2%の物価安定目標が達成するのに必要な措置をとるというのが一番大きなコミットメントだ」と繰り返した。
<物価見通し引き上げを示唆>
追加策の是非を判断する上で、日銀の物価見通しが重要な材料になるとみられる。日銀は毎年、4月と10月の年2回、先行き2年程度の経済・物価見通しを示す「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)を公表しており、次回は4月26日の金融政策決定会合で議論される。今年1月の中間評価では、2014年度の消費者物価指数(除く生鮮食品)はプラス0.9%(政策委員見通しの中央値、除く消費税率引き上げの影響)と見込んだ。総裁は展望リポートにおける物価見通しについて「これだけ思い切った量的・質的緩和を実施したので、それを踏まえて足元の経済をみながら見直す必要がある」と引き上げを示唆。見通し期間自体を2015年度までの3年間に延長する考えについては「3年について見通しを検討するかどうかを含めて、政策委員会で十分に議論していきたい」と語った。
<大きな副作用もたらす恐れはない>
従来にない大規模な緩和策に踏み切った事で、資産バブルの発生など副作用を懸念する声もあるが、総裁は「現時点でこの政策が大きな副作用をもたらす恐れが高いとは思っていない」と明言。残存期間の長い国債の大量購入によって、出口政策が困難になる可能性もある。総裁は「出口戦略を具体的に議論するのは時期尚早」としたが、米国では連邦準備理事会(FRB)の出口戦略において債券を償還まで保有し続けることや、超過準備に対する付利の引き上げなどが議論されていることに言及し、「十分に参考になる」と語った。
<ETFなど損失発生時の政府との分担、取り決めは必要ない>
今回の緩和措置では、ETF(指数連動型上場投資信託)と不動産投資信託(J─REIT)というリスクの高い資産の増額も決定した。その分、市場価格が下落した場合に損失が膨らむ可能性があり、日銀内でも政府との損失分担を議論すべきとの声がある。総裁は、こうした資産が「国債などに比べてはるかにリスクが大きいことは事実」としたが、損失が発生した場合の対応については「具体的に政府とリスクシェアすることを決めなくても、仮にリスクが実現すれば、(日銀の)利益が減って、政府に対する納付金が減る。その意味では、リスクはシェアされる」とし、あらかじめ分担方法を取り決めておく必要はない、との認識を示した。
(ロイターニュース 伊藤純夫:編集 石田仁志)
黒田総裁:物価目標達成に「必要かつ十分な措置」−政策効果見極めへ
4月10日(ブルームバーグ):日本銀行の黒田東彦総裁は10日午後、ブルームバーグ・ニュースなどのインタビューに応じ、4日の金融政策決定会合で打ち出した「量的・質的金融緩和」について、日銀が掲げる「物価安定目標」を達成するために、「現時点では必要にして十分な措置を取った」と述べた。その上で、今後必ずしも毎回の決定会合で政策調整が行われるわけではないとの見通しを示した。
総裁は今回の金融緩和に関して「これだけ大きな転換をしたので、その効果をじっくり見極める必要がある」と指摘。「基本的に2年間を念頭に置いて2%の物価安定目標を達成するために必要な措置は全部取ったと思っているので、毎月、毎月点検はしていくが、毎月、毎月調整があるということにはならない」と述べた。
日銀は4日、黒田総裁の下で初めての決定会合を開き、消費者物価 の前年比上昇率2%の物価安定目標をできるだけ早期に実現すると表明。そのための手段として、2本立てだった長期国債の購入を一本化するとともにマネタリーベースを新たな政策目標に据え、保有する長期国債や指数連動型上場投資信託(ETF)を2年間で倍以上に拡大することを決めた。
金融緩和が予想を大きく上回る大胆な内容だったことを受けて、市場では円安・株高が進行。会合前に1ドル=92円台後半だった円相場は同日中に4円近く急落。その後も円安は止まらず、100円の大台乗せをうかがっている。株式相場 も会合直後に大幅続伸。4日の日経平均株価は前日比272円34銭高の1万2634円54銭を付けた。
長期金利(10年物国債利回り)も会合後に過去最低水準の0.425%を記録。翌5日にも一時0.315%と同水準を更新したが、直後から水準を切り上げ、0.62%まで急上昇する乱高下の展開を見せた。
「狙い通りの効果」
総裁は金融市場の動きが「基本的にポジティブな反応」だったとした上で、乱高下した長期金利については「今回の金融緩和は量的にも質的にもこれまでの緩和とは相当違ったものだった」ため、「ある程度あり得る動きだ」と指摘。その上で「市場がそういう形で新しい均衡点に向かっていく動きは十分注視し、市場の反応を点検していく」と述べた。
今回の政策効果に関しては「マネタリーベースという国際的に最も通用している量的な指標を金融政策の操作目標にして、2年で2倍にするという形で分かりやすく説明したことは、ある意味で狙い通りの効果を持った」と言明。国内の金融市場や企業、家計だけでなく、世界中の市場や政策当局を含め、「よく今回の政策の内容を理解していただけたのではないか」と述べた。
政策が実体経済に及ぼす影響については「マインドの改善や物価上昇期待がだんだん上がってきている状況、資産効果が出てきている中で、実体経済が徐々に回復していき、物価上昇率も徐々に上昇していくだろう」と指摘した。
物価見通しは見直す必要
日銀が1月会合で示した14年度の消費者物価(生鮮食品を除く)前年比上昇率の見通しは、消費税率引き上げの影響を除きプラス0.9%。黒田総裁は「今回これだけ思い切った量的・質的緩和をしたので、それを踏まえて、足元の経済を見ながら、こういった金融緩和が続いていくことを前提に、もう一度見通しを見直す必要がある」と述べた。
2年で2%の物価安定目標を実現できなかった場合の責任については「今回のような思い切った量的・質的金融緩和を取ったことで、われわれとしては当然、物価安定目標が達成されると思っているので、達成されない時のことを申し上げる立場にない」と言明。一方で、「上下のリスク要因があるので、その時々に応じて必要な上下方向の調整はあり得る」と語った。
納付金減少で政府とリスク分担
為替相場については「金融緩和すれば通貨が下落する傾向があることは一般的に認められている」としつつも、「そういったことを通じて経済が高い成長を遂げることになれば、逆に通貨が強くなる可能性もある」と説明。さらに「為替レートに権限と責任があるのは政府なので、日銀が為替レートを目標にしたり、それを見ながら金融政策を変えることはない」と語った。
ETFなどリスク資産の購入では日銀に損失が生じる恐れもある。政府との損失の分担について何らかの合意が必要ではないか、との質問に対しては「具体的に政府とリスク分担という形を取らなくても、仮にリスクが実現すれば、日銀の利益が減り、政府に対する納付金が減ることになるので、そういう意味ではリスクは分担される」と指摘。そうした合意は当面必要ないとの見方を示した。
記事に関する記者への問い合わせ先:東京 日高正裕 mhidaka@bloomberg.net;東京 藤岡 徹 tfujioka1@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Paul Panckhurst ppanckhurst@bloomberg.net;大久保義人 yokubo1@bloomberg.net
更新日時: 2013/04/10 21:00 JST
日銀「異次元の緩和策」で「円は崩壊する」 ソロス発言の信ぴょう性
J-CASTニュース 4月9日(火)19時42分配信
ソロス氏は「日銀の金融政策は危険だ」と指摘した。
米国の資産家で著名な投資家のジョージ・ソロス氏が、黒田日銀が打ち出した「異次元の緩和策」によって、「円は雪崩を打って下落する可能性がある」と警鐘を鳴らしている。
アベノミクス効果で、円は2012年11月以降の6か月で約20%も下落。2013年4月9日の円相場は1ドル98円後半〜99円台で推移しており、さらに下落しそうな勢いだ。
■海外投資家、「国債の7割買い入れ」に警戒感
日銀の黒田東彦総裁は2013年4月4日、「現時点で必要な措置すべて講じた」と述べ、2%のインフレ目標を2年で達成し、その目標に向けて毎月の国債購入額に7兆円強を投じる「量的・質的金融緩和」を発表した。
月々7兆円強といえば、年換算で85兆〜90兆円。新発国債のじつに70%(従来は30%)を日銀が買うのだから、まさに「異次元」の金融政策。これには世界中が驚いた。
米ブルームバーグによると、ジョージ・ソロス氏はニュース専門放送局のCNBCの「黒田総裁の采配をどう思うか」との問いに、「これはセンセーションだ。金融政策のタブーを打ち破っている。すごく大胆なことで、とても果敢な試みだ」と評価しながらも、「彼らが行っていることはとても危険だ。彼らがやっていることで何かが起こり始めれば、彼らはそれを止めることができないかもしれない」と話した。
「円が下がって、日本人が自分たちの資金を海外に移したいと考えれば、円は雪崩のように下落するかもしれない」と語り、海外への資金流出を制御できなくなると懸念している。
外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長は、「国内では円安が進めば、株価が上がるので歓迎ムードが強いですが、やはり(国債の)発行残高の7割も買い入れるというのは異例ですし、ヘッジファンドを中心に、円安への期待よりも警戒感をもっている海外投資家は少なくありません」と、国内外で黒田日銀への評価は微妙に違うと指摘する。
実際に、「国内機関投資家にも、外債投資を増やそうという動きはあります」(神田氏)と、日銀が国債を買い入れることで手持ちの資金運用先を探すのに腐心する機関投資家も現れたようだ。
次ページは:円暴落「まだ、気が早い」
もちろん、ジョージ・ソロス氏はヘッジファンドを率いる投資家だ。米ウォール・ストリート・ジャーナルによると、ソロス氏は2012年11月以降の3か月間に、円安を見込んだ取引で約10億ドル(約940億円)の利益を得たという。
他にも「安倍相場」の円安で儲けたヘッジファンドは少なくなく、ヘッジファンドによる円売りがこのところの円安に拍車をかけたとの見方もある。ソロス氏の「円の崩壊」発言が、自らの投資を有利に運ぶ「ポジション・トーク」の可能性がないとはいえない。
みずほコーポレート銀行国際為替部の唐鎌大輔マーケット・エコノミストは、「円安傾向が続くことに異論はありません。ただ、円の暴落はまだ気が早い話です」という。というのも、「国債を売る投資家がいない」からだ。
「これまで機関投資家は運用先に困って国債を買っていましたし、国債がほしい状態はいまも続いています。(外債の購入などで資金が海外へ流出する)理屈はわかりますが(それがきっかけというのは)現実的ではありません。そもそも、日本は経常黒字国です。黒字が確保できているあいだは(円の暴落は)起こりません」
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デフレ退治に挑む黒田東彦氏の過去の著作が人気 アマゾン1位の書籍も
政府への「不満」の多さは「依存心」の裏返しである
働く女性に悲報 退社時には5歳以上老けて見えることが発覚
最終更新:4月9日(火)22時39分
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130409-00000008-jct-bus_all&p=2
「社会主義が最も成功したのは、日本」と皮肉られているワケ
Business Media 誠 4月9日(火)11時32分配信
「終身雇用」を支持する者が増えている(出典:労働政策研究・研修機構)
●窪田順生氏のプロフィール:
1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、『フライデー』の取材記者として3年間活動。その後、朝日新聞、漫画誌編集長、実話紙編集長などを経て、現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌でルポを発表するかたわらで、報道対策アドバイザーとしても活動している。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『死体の経済学』(小学館101新書)、『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)がある。
【拡大画像や他の画像】
日本銀行が金融政策決定会合を行い、“異次元”の金融緩和策を発表した。やるだけやった。後は企業ががんばれよみたいなムードのなか、成長戦略の柱である「成長産業への労働力移動」として「クビの規制緩和」議論が活発化している。
その端緒になったのは、3月15日の「産業競争力会議」で、民間議員の長谷川閑史(はせがわ・やすちか)・武田薬品工業社長が解雇を原則自由にするよう労働契約法を改正することや、再就職支援金を支払うことで解雇できるルールづくりなどを提案したことだった。
会社を見渡すと、「正社員」という座にあぐらをかいて、定年までの十数年をどうにかやりすごすというオッサンがゴロゴロいる。そういう人たちの人生まで面倒をみるのが会社のつとめだったわけだが、世界と競争するうえで、かなりハンデとなっている。
50歳といっても高齢化社会ではまだまだハナタレ小僧なわけだから、景気のいい産業へ移ってやりなおしたらどうでしょう、お金も差し上げますし、と会社から勧められるようにしようというわけだ。
といっても、これはなにも長谷川氏が思いついたことではなく、もうずいぶん前から言われていることだ。例えば、金の支払いで解雇を可能とする「金銭解決ルール」などは、2003年の小泉政権が法案化寸前までもっていったが、断念した過去がある。
なぜ断念したか。容易に想像がつくだろうが、「札束でクビができるなんてけしからん」と連合(日本労働組合総連合会)なんかがワーワー騒いだからだ。当然、今回もそういう流れになっている。
といっても、この手の人たちは、ホームレスを「派遣切りされた労働者だ」なんてインチキもやった前科もあるので、ただ騒ぐだけでは説得力がない。そこで持ち出したのが、「OECD(経済開発協力機構)の雇用保護指標」だ。確かに、朝にクビを宣告されたら昼には出ていく米国や英国なんかと比べたら雇用が保護されているほうだが、ドイツやフランス、そして北欧に比べるとちっとも優しくない。「クビの規制緩和」なんてとんでもない、もっと雇用保護したっていいぐらいじゃないか、と。
ただ、この理屈もちょっとおかしい。日本の雇用はもうずいぶん昔から米国や欧州なとと比べられない「異次元」の世界に突入しているからだ。
それは「終身雇用」である。
●「終身雇用」発明したのは
いろんな方面で言われているように、こういう雇い方をしている国はほとんどない。いろいろ叩かれた中国の国営企業ですら、1990年代には終身雇用をやめたほどだ。
なんてことを言うと、終身雇用が「日本の強さ」のヒミツだった、とか言い出す人たちがいる。先週、某情報番組でもやっていたが、「企業は人なり」というお約束の格言と、松下幸之助が登場して、日本企業は社員を大切にして社員は会社に人生を委ねたので、一体感ができてみんな汗水たらして働いた。身分保障されていたので、心置きなく消費もできた、なんて話である。
だが、終身雇用というのは、なにも経済人のみなさんがやりだしたわけではない。1939年に制定された「国家総動員法」のなかにある「会社利益配当及資金融通令」や「会社経理統制令」で株主や役員の力が剥奪され、国のコントロールのもと、とにかく生産力をあげるために企業という共同体に国民を縛り付けておくひとつの手段として始まった。
ついでに言えば、これはなにも日本人の発明ではなく、世界恐慌をのりきったソ連の「計画経済」をまんまパクったものである。国が経済発展を計画的に進めて、国民は国が規制をする企業に身を投じて一生涯同じ仕事をする――。そんなソ連モデルが日本人にはフィットした。日本が「世界で最も成功した社会主義」なんて揶揄(やゆ)されるのはそれが所以だ。
要するに「終身雇用」は日本式経営でもなんでもなく、単に戦時体制につくられた社会主義的システムをズルズルとひきずっていただけだ。だから、小泉改革みたいな新自由主義経済が流れ込むと、ソ連のように崩壊していく。さらには、そういう思想をもとに築き上げられたインフラなんかも音をたてて崩れていく。日ソ両国がともに原子力を制御できず、どでかいヘマをしたのは単なる偶然ではない。
そういうガレキの山を見れば、もうとっくに「終身雇用」が終わっているのは明らかだ。
ただ、世の中にはそれを認めたくない人たちが案外多い。例えば、独立行政法人「労働政策研究・研修機構」が昨年5月に発表した調査では「終身雇用」を支持する者の割合は過去最高の87.5%となったという。「組織の一体感」「年功賃金」を支持する割合もそれぞれ過去最高になっており、特に20〜30代がグーンと伸びたんだとか。
子どもは親の背中を見て育つ。「ネトウヨが増えている」とか「右傾化している」なんて心配している人も多いらしいが、そこは安心してほしい。社会主義の教えは、今もしっかり日本人に刷り込まれている。
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最終更新:4月9日(火)14時6分
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130409-00000014-zdn_mkt-ind
米予算教書、富裕層の税負担強化などで赤字削減目指す=政府高官
2013年 04月 10日 21:51 JST
トップニュース
米国株式市場・序盤=続伸、中国指標を好感
資産買い入れ、年内に終了すると参加者が予想=米FOMC議事録
円が対ドルで一時98円台に上昇、黒田日銀総裁発言で
為替動向で金融政策は変更しない=黒田日銀総裁
[ワシントン 10日 ロイター] 米政府高官は10日、オバマ大統領が議会に提出する2014年度予算教書について、富裕層への税負担を重くし、先月発効した強制的な歳出削減に代わって社会福祉プログラムなどの歳出削減を実現することで、今後3年間で大幅な財政赤字削減を目指すものだと述べた。
具体的には、年収が100万ドルを超える富裕層には、30%の最低税率を課すという。
米政府高官は記者団に対して述べた。こうした富裕層増税と歳出削減に加えて、高所得者の税額控除に28%の上限を設けることにより、財政赤字を16年度までに国内総生産(GDP)比2.8%に削減する。
予算教書は、米東部時間10日午前11時15分(日本時間11日午前零時15分)に正式に公表される。
共和党は増税への反対姿勢を崩さないと予想されるため、予算教書の内容が立法化される可能性は小さい。しかし政府高官は、予算教書が財政赤字削減に関する合意につながることを期待している、としている。
政府高官は記者団に対して「少なくとも上院では、合意への道があることに期待を抱かせる発言をしている人が、共和党にいる」と述べた。
今回の予算教書では、社会基盤(インフラ)整備や幼児教育などを優先政策と位置づけ、新たな税収でまかなうほか、雇用・賃上げ対策として中小企業を対象に10%の税額控除を認める方針。大統領側の試算では、今後10年間で1兆8000億ドルの赤字削減につながり、これまでの取り組みによる2兆5000億ドルの削減とあわせ、全体で4兆ドルを超える削減が可能としている。
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米上院民主党の予算決議案、10年で1.85兆ドルの財政赤字削減=関係筋 2013年3月13日
米上院が歳出削減回避の与野党法案を否決、一段と情勢困難に 2013年3月1日
情報BOX:2014年度米予算教書、予想される税制改革の内容
2013年 04月 9日 15:24 JST
[ワシントン 8日 ロイター] オバマ米大統領は10日に、2014会計年度(13年10月─14年9月)予算教書を提出する。予算教書に盛り込まれるとみられる税制改革の概要は、以下の通り。
<個人税>
控除の制限:オバマ大統領は、慈善事業への寄付金控除など、個人所得税の項目別控除や、地方債の利子への減税など一部の控除について制限を設けるという、長年の方針をあらためて打ち出す見通し。税率区分が上がっても、控除率を28%に抑制することを提案するとみられる。
例えば、税率35%区分で、10万ドル分の控除対象がある納税者は現在、3万5000ドルの控除を受けることができる。これが28%に制限された場合は、控除は2万8000ドルに縮小されることになる。
個人退職勘定(IRA)に上限設定:税金のかからないIRAの額に上限を設定し、300万ドルを超えて積み立てることを禁止する公算。
たばこ税:たばこ製品にかかる税率引き上げを提案する見通し。増税に伴う税収拡大分は、未就園児の教育プログラム拡大に充てるという。
成功報酬:プライベートエクイティ会社やその他投資ファンドの幹部が受け取るキャリード・インタレスト(成功報酬)への課税強化。こうした所得の大半は現在、通常の所得にかかる最高税率の39.6%ではなく、キャピタルゲイン税の最高税率である20%が適用されている。
バフェットルール:年収が100万ドルを超える富裕層に最低30%の税率を課すという提案(バフェットルール)を再び打ち出す見通し。
個人所得税の税率:オバマ大統領は当初、年収が25万ドルを超える世帯への増税を目指していたが、今年年初の「財政の崖」回避合意の一環では、年収が45万ドルを超える世帯への増税で決着した。オバマ大統領が今回の予算教書で、当初の提案を復活させるのかどうかは不明。
<法人税>
法人税率:最高税率の35%から28%への引き下げを訴える公算。
石油・ガス会社への減税:オバマ大統領はこれまで長らく、エネルギーセクターへの減税廃止を求めてきた。現在は油井やガス井の減耗控除、石油・ガスの国内生産控除、無形掘削費の費用算入、などがある。
社用ジェット機:オバマ大統領は、社用ジェット機のオーナーらが利用する、保有機の減価に伴う税額控除の廃止を提案する可能性がある。
後入先出(LIFO)法:オバマ大統領は、石油やガスなど一部業界が利用するこの会計手法の廃止を求めてきた。企業側は、変更されれば、古い在庫を高い価格で再評価せざるを得なくなると抵抗している。
利子の控除:企業は現在、債務の利払いは控除できるが、株式配当の支払いは控除できず、借り入れによる資金調達が有利になっている。オバマ大統領の法人税引き下げ計画には、企業債務の控除を縮小することが盛り込まれているが、大統領の提案では詳細には触れられていない。
海外利益の最低税率:海外利益の最低税率を再び提案する可能性がある。これに伴う歳入の増加分は、米国に投資する企業への支援に使う。
未公開企業への課税:「C株式会社」に該当する企業は、法人税を支払っている。これらの企業は、企業レベルに加えて、配当への課税を通じて投資家レベルでも課税されることから、二重課税との指摘もある。
一方、「パス・スルー」に該当する企業の場合には、個人のオーナーが利益を手にし、その所得に対して課税される。これに該当する企業には、多数の中小企業や法律事務所、投資ファンド、一部大企業がある。
オバマ大統領の以前の法人税改革案には、この2種類の企業形態の扱いを近づけることが盛り込まれていたが、詳細には触れていなかった。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE93803I20130409?rpc=188
FOMC議事録:メンバー数人は年末までの債券購入停止を支持
4月10日(ブルームバーグ):米連邦準備制度理事会(FRB)が10日公表した連邦公開市場委員会(FOMC、3月19−20日開催)の議事録によれば、メンバーの数人は年内に債券購入プログラムの縮小を開始し、年末までに停止するのが適切だと考えている。
議事録によると、同メンバーらは「労働市場の見通しが予想通りに改善した場合は年内に購入を減速し、年末までに停止することが適切であろう」との考えを示した。
原題:FOMC Minutes Show Several Members Saw QE Ending by Year-End(抜粋)
更新日時: 2013/04/10 22:15 JST
アトランタ連銀総裁:債券購入の縮小を検討するのは時期尚早
4月10日(ブルームバーグ):アトランタ連銀のロックハート総裁は、労働市場に減速が見られるからといって金融当局が債券購入の縮小を検討するのは時期尚早だと述べた。
ロックハート総裁はジョージア州ストーンマウンテンで記者団に対し、「今の段階でそのことに集中するのはやや時期尚早だと考える」と述べ、「今後発表される経済統計や景気動向を見極める必要があるとの考えはこれまでにも強調してきた」と続けた。
ロックハート総裁は今年の米連邦公開市場委員会(FOMC)での議決権は持たないが、毎月850億ドル相当の住宅ローン担保証券(MBS)と米国債を購入する量的緩和は支持している。
同総裁は「今年下半期か2014年初めに状況が展開し、ある程度の量的緩和の縮小が可能になるということはあり得る」と述べた。
原題:Fed’s Lockhart Says Premature to Consider Slowing BondBuying(抜粋)
更新日時: 2013/04/10 22:08 JST