重い副反応の報告が相次いでいる子宮頸がんの予防ワクチンが4月から、定期接種化される。国が勧奨するワクチンになるため接種率はアップするとみられているが、副反応が起きた事例の検証は手つかずのまま。専門家は「母数が大きくなれば当然、副反応も増える。保護者らが自ら接種の是非を判断することが求められる」と訴える。(上田千秋)
◆効果に疑問も
「国は『決して強制ではない』と言うにせよ、定期接種になれば義務だと思うだろう。『受けない自由』を確保するべきだ」。元国立公衆衛生院(現国立保健医療科学院)感染症室長の母里啓子医師はこう話す。
子宮頸がんは「唯一予防できるがん」といわれ、2009年10月にワクチンが承認されて以降、一気に公費助成の動きが広まった。現在もほとんどの市区町村の中高生らは無料で接種できるが、4月以降は恒久的な措置になる。
ただ、母里医師は「ワクチンを接種したからと言って、がんにならないわけではない」と効果を疑問視する。子宮頸がんの原因となるのは、100種類程度あるとみられるヒトパピローマウイルスのうち約15種類。これに対し、ワクチンが対象とするのは主に2種類で、ウイルス全体の60〜70%でしかない。
「子宮頸がんは比較的早期の発見が可能。定期的に検診を受けていれば、仮にがんになったとしても摘出などせずに治療できる」と主張。さらに「自然にかかる病気ならあきらめもつくが、不要なものを接種して被害を受けるのは納得いかないだろう。副反応のリスクなどを考えると、必要なワクチンだとはとても思えない」と説く。
◆副反応検証手つかず
実際、副反応は数多く起きている。厚生労働省によると、昨年までに接種した推計342万人のうち1926人に副反応が報告され、死者1人を含む101人は歩行障害や計算障害などを伴う重篤だった。
ところが、国は定期接種化に当たっても、「接種を中止しなければいけないほどの副反応であれば、審議会や検討会で議論になるが、そうした話は出ていない」(厚労省結核感染症課)として追跡調査などをする考えはないという。
ワクチンによる被害は今に始まった話ではない。過去にもたびたび社会問題化し、1970年代以降に国の責任を問う訴訟が相次いだ。昨年10月にも、日本脳炎の予防接種を受けた岐阜県内の小学5年男児(10)が死亡している。
日本消費者連盟の古賀真子共同代表は「国は過去の教訓から何も学んでいない」と続ける。
「新しいワクチンが次々に入ってきて、国に言われるがまま、副反応のことを知らないで打っている医師も少なくない。学校現場や家庭が正しい情報を知って考えるようにしないと、同じ過ちを繰り返すことになる」
[子宮頸がんワクチン]
子宮の入り口にできるがんで、性交渉で感染するヒトパピローマウイルス(HPV)によって発症するとされる。ワクチンは2009年に承認され、10年4月から市区町村と国が順次、接種費用の助成を始めた。助成は3月までの時限的措置だったため、国は子宮頸がんを含む3つのワクチンを定期接種化することを盛り込んだ改正予防接種法案を国会に提出、29日の参院本会議で可決され、成立した。
2013年3月31日 東京新聞 朝刊[特報:ニュースの追跡]より
http://www.asyura2.com/09/iryo03/msg/659.html