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2013/3/28 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
新聞各紙の世論調査によれば、TPP参加に「賛成」が5割を超えてきた。朝日の調査では71%が「安倍首相の参加表明を評価する」と答えていたが、そりゃ、これだけTPP参加バラ色論が巷を席巻すれば、世論だってなびくだろう。
大マスコミはこぞって賛成。財界、大企業ももちろん賛成。それどころか、賛成論者は「今、交渉に参加しなければ日本はオシマイ」みたいな言い方をする。安倍の参加表明を聞いて「高く評価する。全面支援する」とはしゃいでいた経団連の米倉会長などが典型だ。参加表明前は「何やってんだ、遅きに失する」と言わんばかりだったのである。
しかし、賛成派がここまで熱くなる理由はというと、てんで見えない。
「関税がなくなれば輸出が伸びる」「米国とFTAを結んでいる韓国は4年後には自動車の関税がゼロになる。日本もTPPに参加しないと勝負にならない」「そもそも日本市場のパイは今後、伸びない。成長が見込める環太平洋地域で人、モノ、サービスが自由に行き来できなければ、経済成長は見込めない」
政治家も含めて賛成派は決まって、こんな理由を挙げるのだが、だったら、完全自由貿易がいいのかというと、「農業などの聖域は守る」などとシレッと言う。そんな虫のいい話はないわけで、論理矛盾なのである。
安倍は「日本は経済力第3位の交渉力がある」「議論できる分野は残されている」とか言っていたが、ウソだ。米国からは交渉参加の条件として、自動車の関税維持を宣言され、日本はのんだ。そのほかにも日本が輸入する米国車の数値目標や郵政の事業制限など、やいのやいのと要求されているのが実情だ。
◆GDP3・2兆円の数字もいい加減もいい加減の極み
加えて、TPP交渉は後から参加する国が圧倒的不利。日本がこれから出る幕はない。
「つまり、日本には聖域を守る交渉をするにしても、切れるカードがないんですよ。米国市場における自動車の関税撤廃すら勝ち取れないのですから、何のための交渉参加なのか、ということになる。農業を筆頭に一方的にやられてしまう。米国の狙いは農業だけでなく日本の金融もターゲットです。簡保や共済、農協のカネを狙っている。自民党議員ですら、『どこを見渡してもメリットはない』とこぼしていました」(経済アナリスト・菊池英博氏)
これがTPPの現状、実態なのである。
政府はこのほど、TPPを10年間続けた場合、GDPを3・2兆円押し上げるという統一試算を出したが、これもヒドイ数字だ。「10年間でこれだけか?」だし、この数字自体がまた怪しくて、試算を担当した内閣府の川崎研一氏はこう言っていた。
「ダイエットでも5キロ減ったけど、その後、3キロ増えましたということはある。ひょっとしたら、1年後のGDPはマイナスかも知れない。このモデルは『うまくいくと、こうなるかも知れない』というもので、うまくいかなかったら、そうはならないわけです」
要するに、机上の空論、希望的試算なのである。こりゃダメだ。TPP参加のメリットはひとつもない。
◆日本の社会がぶっ壊れる史上最悪の選択肢
それなのに、安倍首相はなぜ、かくもTPP参加に前のめりになり、急ぐのか。これは大きな疑惑だ。
メリットが何もないのに関税を撤廃するなんて、国を売ると言うか、無条件降伏みたいなものだからだ。月刊誌「世界」4月号で東大大学院教授の鈴木宣弘氏(農学国際専攻)がTPP参加の危険性を網羅しているが、それを読むとゾッとする。
〈乳製品や砂糖など日本が聖域にしてきた重要品目(840品目)すべてを守ることは不可能であり、全国の地域コミュニティの崩壊が避けられない〉
〈TPPは米国の巨大企業中心の1%の1%による1%のための協定であり、大多数を不幸にする〉
〈若者を含む多くの雇用を奪い、地域の商店街を潰し、地域医療も崩し、人々が助け合い、支え合う安全・安心な社会を揺るがす切り札で、史上最悪の選択肢である〉
これがTPPの真相なのだ。
例えば、TPPには自由貿易において不利益を被ったと感じた企業が国際裁判所に提訴して、当該国に損害賠償や制度の撤廃を求めることができるISD条項が含まれている。日本の健康保険が気に入らない、共済制度は他国の保険会社を締め出している、食の安全の規制が厳しすぎる、とまあ、いくらでもイチャモンをつけられるわけだ。
TPPに参加すれば、自由貿易=自由競争こそが最大の美徳という価値観を押し付けられ、つまり、市場原理主義になる。金儲けがすべてで、社会の安定や食の安全は二の次、三の次ということになってしまう。そうなれば、まさしく、コミュニティーが崩壊し、日本という国の形が崩れていくことになるのである。
◆権力維持と利権、カネ欲しさが真相
にもかかわらず、安倍が国を売るようなTPPにのめり込んでいるのは、まずは政権維持が目的だろう。大企業=財界と米国の後ろ盾欲しさである。
鈴木宣弘教授もこう言った。
「TPPで得をするのは国際展開しているような一握りの大企業です。数で言えば、1%だが、この1%がカネを持っている。そのカネが政治資金になり、官僚の天下り先になり、大メディアのスポンサーになる。だから、彼らの意向で政治が動くのです。さらにTPPは米国がやろうとしていることですから、政治家も官僚も逆らえない。保身を考えれば、ここで盾突いて波風立てることはない、ということになってしまうのでしょう。しかし、そのために正義と良心を捨てていいのか。彼らの頭の中にあるのは今さえよければいい、カネさえ入ればいい、自分さえよければいいという短絡的な発想で、長期的に日本がどうなっていくのかという視点がない。TPPに参加して、日本という国が崩れてしまえば、彼らだってよりどころを失うのに気づかない。ここが大きな不幸だと思います」
安倍が米国の意向に逆らえないのは、「安全保障の問題だ」という指摘もある。しかし、これだって安倍が自分で中国を刺激し、中国脅威論を盛り上げているのだから、自作自演みたいなものだ。
「それよりも農業利権との絡みでしょう。ウルグアイ・ラウンドの時は農家のために6兆円の国家予算が使われましたが、今度も同じ構図が見えています。自民党のベテラン衆院議員が米国の農家には輸出補助金制度があって、直接、農家にカネが回るのに、日本にはそのような制度がないことを問題視、『輸出補助金制度を作れ』『土地改良費の全額を国でまかなえ』などと言い出している。TPP参加を理由にして、農業利権拡大を狙っているのです」(TPPを取材しているジャーナリスト・横田一氏)
やっぱり、ヨコシマな思惑だ。政権維持や目先のカネで、国を売るなんてとんでもない話だ。売国奴たちの暴挙を許してはいけない。