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2013/3/21 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
株価が上がり、70%という高い支持率をキープしているからか、最近の安倍首相は、異常なハイテンションだそうだ。発言もどんどん強気になっている。
17日の党大会では、「世界の真ん中で日本という国を咲かそう」と自信満々に挨拶している。翌18日には「参院選で自民党が勝つことが日本の幸せだ」とまで口にしたという。いくらなんでも、言い過ぎじゃないか。
「まさかクスリの副作用ではないでしょうが、首相はすっかり高揚しています。決断する時、迷いや躊躇がない。お気に入りのフレーズは“政治は結果だ”です。民主党の海江田万里代表にアベノミクスを批判された時も、〈政治は結果だ。民主党は3年間やってできなかったが、2カ月で変わろうとしている〉と得意顔で反撃しています」(政界関係者)
持病の「潰瘍性大腸炎」が悪化し、朦朧とした表情で政権を放り投げた5年前とは、まるで別人である。特効薬によって持病が改善したのなら結構なことだ。
しかし、自信を強めているのかどうか知らないが、ヤバイのは「TPP参加」や「日銀へのリフレ政策の導入」といった重要政策をイケイケどんどんで決めていることだ。TPP参加も、リフレ政策の採用も、国民生活を大きく変えるものだ。異論も多い。本来なら慎重に議論を重ねるべきものである。なのに、簡単に決めるなんて危険すぎる。
◆国民生活にトドメを刺すアベノミクス
リフレが何をもたらすか、安倍首相は分かっていないのじゃないか。
「2年以内に2%のインフレ目標を達成する」――という“リフレ派”の黒田東彦氏(68)を日銀の新総裁に就けた安倍首相は「市場が反応している」と浮かれている。
しかし、紙幣をジャブジャブに刷って、無理やりインフレを起こす「リフレ政策」は、副作用が大きすぎると、日銀が拒否してきた禁じ手である。朝日新聞あたりは「やってみて、うまくいかなければ軌道修正すればよい」などと主張しているが、無責任もいいところだ。このまま「リフレ政策」を推し進めたら、日本は大変なことになる。
「これ以上、金融緩和を実施しても実体経済にはカネは回らないでしょう。有り余ったカネが株や不動産に流れ込み、モーレツな資産バブルを引き起こすだけです。世界の資本市場は“資産”と“実体経済”が分断され、緩和マネーは資産に向かうようになってしまった。リフレ政策の大きな欠陥は、貧富の格差を拡大することです。株や不動産が高騰し、富裕層はますます豊かになるが、株も不動産も買えない圧倒的多数の国民は恩恵がない。むしろ、給料は上がらないのにモノの値段だけがジワジワと上がり、さらに生活が苦しくなるだけです。しかも、株高も不動産の値上がりも実体を伴わないバブルだから、いずれ破裂する。ただでさえ日本は疲弊しているのに、株や地価が暴落したら日本経済はもたない。アベノミクスが国民生活にトドメを刺す恐れがあります」(筑波大名誉教授・小林弥六氏=経済学)
TPPの怖さは“関税障壁”だけでなく、法律や商習慣といった“非関税障壁”まで撤廃することだ。対象は労働や公共事業などあらゆる分野に及ぶ。かつてアメリカの要求に屈して“大店立地法”を成立させただけで、地方の商店街はシャッター通りになってしまった。TPPに参加したら、日本はガタガタにされてしまう。
◆勝算もないのに突っ込んだ戦前と同じ
このままリフレ政策を推し進め、TPPに参加したら、日本はどうなるか。答えはハッキリしている。リスクが大きすぎる。
なのに、どうかしているのは、朝日新聞を筆頭に「とりあえずやってみたら」という無責任な意見が蔓延(まんえん)していることだ。多くの国民はTPPの詳細な中身を知らないはずなのに、世論調査でも「TPP交渉参加表明」への支持が71%に達しているのだから異常だ。
まるで、戦前の日本軍が、勝算もないのに「なんとかなるだろう」「座して死を待つよりいい」「すぐに講和に持ち込めばいいさ」などと、アメリカとの無謀な戦争に突き進んだ時とソックリである。
「いまの日本社会は、戦前の日本とよく似ています。デフレ不況が15年間もつづき、社会が閉塞感に包まれている。だから、少しでも突破口になりそうだと、簡単に飛びついてしまう。不気味なのは、“国益”という単語に敏感に反応するようになったことです。日本の国力が低下している裏返しでしょう。ちょっと隣国と揉めるだけで、すぐにイキり立ってしまう。気をつけなければならないのは、政治家が使う“国益”という単語です。その“国益”が本当に国民の利益になるのかどうか。ほとんど庶民の利益とは無関係のはずです」(政治評論家・山口朝雄氏)
「政治は結果だ」「私を信じて欲しい」と絶叫する安倍首相の姿は異様だ。あの姿は危ない。この先、国民生活はとんでもないことになりそうだ。