「その場しのぎ」の限界 福島第一停電 (東京新聞 核心)
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2013/03/20 東京新聞 :大友涼介です。
東京電力福島第一原発で起きた原因不明の停電は、いまだ「仮設」の設備に頼る原発の危険性をあらためて浮き上がらせた。「仮設」の設備は配電盤だけではなく、処理水タンクや配管など各所に残る。その場しのぎはもはや限界に達し、潜む危険を一つ一つ取り除かないと、この先に待つ長期の廃炉作業はおぼつかない。(清水祐樹・小野沢健太記者)
■驚く事実
今回の事故で驚かされるのは、少なくとも福島第一の廃炉が終わるまで、安定的に核燃料を冷やし続けることが不可欠な共用プールまでが、仮設の配電盤に接続されていたことだった。
共用プールは、1〜4号機の使用済み核燃料を、原子炉建屋から取り出した後、比較的安全な地上のプールで冷やし続けるための重要な施設。
もし、この施設が冷却装置の不具合で、まともに使えないとなれば、各号機の核燃料は行き場を失い、廃炉工程も進まない事態となりかねない。
中でも、4号機プールに残る千五百体以上の核燃料の存在は事故以来、大きな懸念材料になっている。東京電力は、十一月に4号機プールからの取り出しを始める方針だが、共用プールの状況次第で計画は行き詰る。
■厄介な存在
実は「仮設」に頼っているのは、配電盤だけではない。
敷地内にずらりと並んだ円筒形の処理水タンク群。高さ十一メートルで一千トン超を保管できる大型タンクは、多くが鉄板をボルトで張り合わせ、溶接していないものを使っている。東京電力は「仮設タンク」と呼んでいる。
昨年二月には、ボルトが緩んで汚染水が漏れ出た。現在も日常的な点検が欠かせない。当初の急場を凌ぐには都合のいいタンクだったが、長期の安定貯蔵が求められる現状では、逆に厄介な存在になりつつある。
タンクのつなぎ目にあるゴムは耐用年数が五年ほどで、このままでは改修時期とタンク不足が重なり、汚染水処理が危うくなる。
注水や汚染水処理に使う配管もビニール製のホースで代用したため、昨冬にはビニール製の配管が凍結し、水漏れが相次いだ。処理前の高濃度汚染水を一時的に貯める建屋内ですら、耐久性のあるポリエチレン管への交換が終わっていない。
■欠ける緊張
応急処置ばかりの福島第一原発で、東京電力の収束作業を監視する原子力規制委員会には、今回の停電事故に対する緊張感は、感じられない。
停電が起きた十八日夜も、規制委事務局の広報担当者は「(使用済み核燃料プールの)非常用電源は用意されていないけど、必要もない」と言い切った。十九日に記者会見した田中俊一委員長も「そんなに切羽詰ったものではない」と話した。
福島第一の廃炉計画を審議する規制委の検討会に、東京電力は福島第一にはどんなリスク(危険性)が潜んでいるのか二百項目以上を挙げた一覧表を提出している。
この表を見ると、東京電力は電気系統も含めほぼすべての項目で「対策は十分」と自己評価している。
厳しくチェックするはずの検討会では、東京電力の言い分を聞いただけで目立った議論もなく、今回の仮設配電盤の問題も結果的に改善されていなかった。
本来なら、不安定な状態を長続きさせないよう、指導していくことが規制機関の役割。このまま仮設頼りを追認していては、もっと大きな事故に直面する可能性がないとは言い切れない。
◇福島県「不安、住民帰還の障害」
福島県生活環境部の古市正二次長は19日、東京電力の山本晋児・福島広報部部長を県庁に呼び、福島第一原発の冷却システム停止について「県民に大きな不安を与えている」と述べ、早期復旧を求めた。
古市次長は「特に4号機の使用済み核燃料プールは、1533体の燃料体が保管されている。その冷却が停止したことは、県民に大きな不安を与え、帰還に向けた動きにも大きな障害になる」と厳しく指摘。原因調査や、県民への情報提供を求めた。
原発事故のため避難区域となっている福島県樽葉町の松本幸秀英町長は取材に対し「原発に対する不安を払拭するため安全に管理して欲しい。事故はまだ収束しておらず、何が起こるかわからない不安感がある」と話した。
樽葉町は役場機能を福島県いわき市に移転中だが、住民は町内に日中は立ち入りできる。松本町長は「町に帰ろうと努力している意欲が低下してしまう」と東京電力に安全対策の徹底を求めた。