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2013/3/11 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
東日本大震災から2年が経過した。新聞やテレビは一斉に特集を組み、“被災地のいま”を伝えているが、現状を知れば知るほど愕然とさせられる。政府はこれまで何をやってきたのか、と。
岩手、宮城、福島の被災3県では、いまだ31万5000人が仮設住宅などで避難生活を強いられている。福島では原発事故の影響で4年後も自宅に帰れない人が5万4000人に上るという。
3県の職員不足も深刻だ。ストレスや激務のせいで400人を超える職員が休職していて、新年度は600人の職員不足が懸念されている。
人心もすさむ一方で、逃げ場のない仮設住宅では夫婦間の暴力が急増。福島では昨年、DVの相談件数が前年比6割増、宮城でも3割増えた。震災から2年が過ぎたのに、目を覆いたくなるような惨状なのだ。
なぜこんなありさまになっているかというと、3・11後の民主党政権の無能、怠慢に加え、安倍政権が被災地の足を引っ張っているからだ。
安倍は施政方針演説で「命を守るための『国土強靱化』が焦眉の急だ」とか言い、公共事業に補正で4・7兆円、来年度予算で5・3兆円を盛り込んだ。その多くがムダな道路などに流れて、土建業界はバブルに沸いているが、そのために被災地は置き去りにされている。
「全国で公共事業が活発になってきているため、被災地の復興のための労働者やコンクリートなどの資材、重機が足りなくなっているのです。足りなければ、儲かる事業が優先になる。それは被災地の復興ではなく、関係ない道路だったりする。だから、被災地では、公共事業の入札を行っても建設業者が応札せず、入札が成立しないケースが相次いでいます。仙台市では昨年4月から今年1月までの入札の約半分が不成立でした。職員も業者も足りないから、復興予算も被災自治体で1・4兆円の繰り越しです。これでは、いつまでたっても復興は進みません」(宮城県政関係者)
◆「復興」の看板を下ろした五輪招致
そんな被災地の悲鳴をよそに、安倍政権のバラマキで株価は上がり、日本中がアベノミクスに浮かれているのである。
安倍の魂胆はハッキリしている。すべては参院選のため、消費増税のため。株価だけを上げりゃいいのである。そのために犠牲になる被災地。まさに被災者を踏み台にする蛮行だが、政治家も官僚もなんら痛痒を感じていないのではないか。
その証拠に、霞が関は復興にかこつけて予算の分捕り合いに明け暮れている。役所の耐震強化や反捕鯨団体「シー・シェパード」の対策事業なんかに復興予算を流用しているのだから、ムチャクチャだ。
こんな連中だから、被災地の惨状はそっちのけで、7年も先の東京五輪招致に浮かれるわけだ。
先週、IOCの評価委員14人が来日したが、たった4日間の“接待”のために招致委が費やした税金は6億円に上る。このカネを被災地に回せば、どれだけの人が救われただろうか。
政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏が言う。
「五輪を招致するにしても、なぜ東北ではなくて東京なのか。IOCの委員を陸前高田の一本松に案内し、復興に向けて頑張っている人たちの姿をなぜ見せないのか。この国は逆に、原発事故のイメージを隠すため、当初掲げていた『復興五輪』の看板さえ下ろしてしまった。景気浮揚策にしても、なぜ、東北3県を成長戦略の軸にして、東北から日本経済を立て直そうとしないのか。2年前のこの日、国民は復興のため一つになろうと誓ったのに、安倍政権のやっていることはチグハグです」
大マスコミはお涙ちょうだいの震災2年目報道よりも、こちらを追及すべきなのである。
◆国民の命より経済優先、安倍晋三の冷酷な正体
ひどいのは原発対応も同じだ。事故は収束するどころか、絶望的な惨状が浮き彫りになってきている。
福島原発の敷地内にたまった高濃度汚染水は36万トンに達し、今も1日400トンずつ増え続けている。貯蔵タンクはすぐに満杯になるため、耐久性度外視でタンクが急造されていて、3年後には“破綻”の恐れが指摘されている。
原発付近の海の魚からは相変わらず放射性物質が検出されているが、山林の汚染も深刻で、5日には南相馬で1キログラム当たり5万6000ベクレルものセシウム汚染イノシシが見つかった。野生の鳥獣では過去最高値だ。
人間への影響もこれから出てくる。WHOは先月、福島の乳児が16歳までに甲状腺がんになる可能性が9倍に増えるというショッキングな報告書を公表した。日本への“警告”だ。
それでも安倍は「原発ゼロ見直し」をオバマに約束し、再稼働に突き進もうとしている。どういう神経なのかと思ってしまう。環境ジャーナリストの天笠啓祐氏が言う。
「子供たちへの放射能の影響はすぐに出てくるわけではない。これから10年、20年と長期的に追跡しなければならない問題です。
それなのに政府やマスコミは、福島の汚染は大したことはない、健康被害は心配ないと繰り返し、事実を覆い隠して、早く幕引きを図ろうとしている。WHOの厳しい見解にも『過大な評価だ』『誤解を招く表現だ』と反発しています。で、安倍政権はもう原発再稼働にかじを切り、海外に原発を売り込もうとしている。信じられない政権です」
国民の健康よりも経済が最優先。それが安倍晋三という男の冷酷な本性なのである。
◆被災地を切り捨て、夢物語に走る日本
政治評論家の森田実氏はこう憤慨する。
「日本は、とてつもなくひどい国になりつつあります。震災から2年もたつのに復興はまったく進まず、原発事故の総括も責任追及もない。日本中がオリンピック招致に浮かれ、何千億円ものカネを使おうとしている。おそらく、震災2周年の報道も今日だけで、メディアは明日になれば、また五輪や株高でワッショイ、ワッショイと大ハシャギするのでしょう。しかし、アベノミクスで潤うのは米国と東京、大企業と一部の金持ちだけです。被災地でも、大ゼネコンが儲かるところを独占して、中小零細企業は仕事を受けたら倒産してしまうという現象が起きている。地方や庶民、草の根は切り捨てられるのがアベノミクスの正体ですが、大マスコミが煽(あお)り、日本中が“夢物語”に向かって突き進んでいる。狂気の沙汰です」
被災3県で「休廃業」に追い込まれる企業は、減るどころか増えている。帝国データバンクの調査によると、今年2月の時点で、約5000社の4分の1を超える1300社強が休廃業していた。昨年2月と比べると、約60社も増えている。
これはもう、無能、無慈悲政権の2次被害、3次被害ではないか。
アベノミクスが進めているのは非情な市場主義だ。競争社会で弱者はどんどん切り捨てられていく。その弱者は被災地だ。安倍のやり方、発想では復興など望むべくもない。そんなアベノミクスを礼賛している社会の異様。この国は血も涙もない国になってしまったのではないか。
震災2周年の現状を見るにつけ、慨嘆するしかないのである。