7日、西南前線の最南端に位置する長在島防御隊を訪れた金正恩第1書記(AP)
【朝鮮半島ウオッチ】金正恩氏の核戦争勃発 11日から“戦争状態”に ソウルの約1000万人が人質
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130310/kor13031007000001-n1.htm
2013.3.10 07:00 産経新聞
朝鮮半島は北朝鮮の一方的な「休戦協定の白紙化」宣言で、11日から彼らのいう“戦争状態”となる。北朝鮮に詳しい情報筋によると、「北朝鮮国内はすでに戦時の雰囲気」で重武装した軍人が増えており、「一部地域には軍用米の配給も行われた」(同)という。米韓合同軍事演習は11日から本格演習に入るが、この日をもって北朝鮮は「板門店代表部の活動も全面中止する」としており、2010年11月の延坪島砲撃事件のような軍事挑発が懸念される。北朝鮮が極度に緊張醸成を行う理由とは?
(久保田るり子)
■韓国首都圏を人質にとる北朝鮮の威嚇作戦が本格化
国連安保理の追加制裁決議採択を受け北朝鮮が、「侵略者の本拠地に対する核先制攻撃の権利行使」に言及した朝鮮半島は、近年にない緊張レベルに達している。韓国側が想定している今後の具体的な北朝鮮の挑発シナリオはおおむね6つある。
まず、政府機関などをターゲットとしたテロおよびサイバーテロ。次に3年前に起きた哨戒艇「天安」撃沈などの海洋軍事攻撃。さらに南北の海上境界線である北方限界線(NLL)付近の第2の延坪島砲撃のような局地攻撃。そして第4回核実験、あるいは長距離弾道ミサイル発射。最悪シナリオはソウル首都圏への局地攻撃−などである。
韓国は韓国軍合同参謀本部が「挑発すれば挑発地点や支援勢力はもちろん、指揮勢力まで強力に断固として懲らしめる。すべての準備は整っている」との警告声明(6日)を出し、警戒レベルを一段階上げている。警察当局も警察作戦部隊員の外出自粛令を出し、警察指揮官の非常体制を敷き、海岸警戒や主要施設に対する警戒を強化した。
こうした状況を韓国の北朝鮮専門家の多くは「北朝鮮が第3回核実験の成功を背景に韓国を人質として米国と交渉しようという核戦略を本格化した」と分析している。
しかし、北朝鮮が「休戦協定破棄」を言い出すのは初めてではない。1990年代はじめには軍事停戦委員会の国連軍代表に韓国軍将軍が就任したことに反発し休戦協定を無視。軍事委から北朝鮮代表を撤収させたこともある。2009年には米国が主導する大量破壊兵器拡散防止構想(PSI)に韓国が参加すれば「休戦協定の拘束を受けない」と反発したこともあった。休戦協定が白紙になれば、韓国が南北経済協力事業として続けてきた開城工業団地を撤収するなどの措置も必要になるが、現状は北朝鮮が一方的に「宣言」している政治的なレベルである。
しかし今回の場合、この宣言(5日)を北朝鮮軍部で対南工作を総括する金英哲・偵察総局長が自らテレビ出演したことが異例だった。金英哲氏は哨戒艇「天安」撃沈事件の責任者とされ軍部強硬派を代表する人物で、本来は姿を隠すべき責任者だが、その責任者がテレビで堂々と国際社会に向け登場した。これは軍が前面に出ることで軍事脅威を強調し、米韓の反応を促そうとの駆け引き作戦のようだ。
■「北朝鮮は戦争間近の雰囲気」「核実験はいつでもできる」
一方、北朝鮮情勢に詳しい情報筋によると、北朝鮮国内では軍人が重装備を開始して北朝鮮住民に「戦争が近い」ことを宣伝しているという。「一部地域に軍用食糧が戦争準備のため配給されている」という。
韓国の北朝鮮情勢専門サイト「デーリーNK」も「北朝鮮内部では事実上の戦時に準ずる軍対応態勢と住民および物資動員が進行中。両江道(北朝鮮北東部)の消息筋は『軍人をはじめ教導隊、労働赤衛隊も一週間分の食糧を携え坑道で生活している」(2月27日)などと報じている。
国内で戦争間近の雰囲気を高めている理由について情報筋は、「国内引き締めの金正恩体制固めに利用している。対外的な核戦略とは別途の目的だ。食糧や物資配給ができない現状で金正恩氏への求心力は現在、緊張醸成以外にはない」と分析している。
国内引き締めと同時に、休戦協定白紙化宣言で述べている「米国などの敵対行為に対処し、強力な2次、3次対応措置を連続的に取ることになるだろう」との軍事作戦が進行しているのも事実のようだ。
韓国紙によると、「北朝鮮は最近、元山飛行場に配置されたミグ機を江原道通川郡の飛行場に前進配備したことが確認された」(3月6日付「中央日報」)。
元山は北朝鮮東海岸にあり、南北の休戦ラインから約100キロの地点だが、ミグ機が通川郡に移動すれば休戦ラインから約50キロの地点であるため離陸直後に南下が可能になる。
さらに北朝鮮はミサイル発射と核実験も示唆している。軍事専門家によると「2月の核実験は豊渓里の核実験場西坑道で行われたが、新たに掘削し準備ができていた南坑道は未使用で、いつ次の実験が行われてもおかしくない」。
韓国の核専門家、金泰宇・前統一研究院院長は「北朝鮮が4回目、5回目の実験を行うであろう技術的、政治的動機はたくさんある。つまり次回実験はいつ行ってもおかしくない」と述べている。