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2013/3/7 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
日銀の過去の政策を攻撃し続けてきた元官僚とガクシャが思惑通り総裁と副総裁に就任するがこの国の経済は一転激変するのか
2年以内に達成してみせる――。国会で堂々と「インフレ率2%」の達成を公約した日銀総裁候補の黒田東彦氏(68)と、副総裁候補の岩田規久男氏(70)。岩田規久男氏は、実現できなければ任期途中で辞職するとタンカまで切ってみせた。
80年代のバブル期でさえ、インフレ率は平均1・3%だった。インフレ率2%の実現は簡単じゃない。しかし、わざとインフレを起こす「リフレ派」の2人は、自信満々だ。
「デフレ脱却に向けて、やれることは何でもやる」と宣言しているリフレ派の2人が日銀総裁と副総裁に就任したら、この国の経済が激変するのは間違いない。
これまで日銀の金融緩和策を「手ぬるい」と長年、批判してきた〈黒田―岩田〉コンビは、大量にカネをばらまき、力ずくでもインフレを発生させるつもりだ。黒田氏は国会の所信聴取でも「量的にも質的にもさらなる緩和が必要だ」と明言している。
「早くも市場は、敏感に反応しています。株式市場は、リーマン・ショック後の高値を連日更新し、約4年5カ月ぶりに1万2000円台を回復。これまでは円安の恩恵を受ける輸出関連銘柄が株高を引っ張ってきたが、最近は土地を多く持つ不動産や倉庫、鉄道株の値上がりが目立つ。〈黒田―岩田〉体制が内定したことで、市場が動き出したことは間違いありません」(兜町関係者)
◆86年の頃とソックリの状況 デフレからの脱却は、日本の最優先課題だ。
「リフレ派」が日銀総裁に就くことで、15年間つづいたデフレ不況から脱出し、景気が良くなるなら万々歳である。
しかし、本当にうまくいくのか。たしかに目先の株価は上がり、何かが動き出したように見える。だが、このまま〈黒田―岩田〉コンビの暴走を許したら、日本経済は破滅しかねない。「いまの状況は、1986年ごろによく似ています」と、経済ジャーナリストの松崎隆司氏がこう言う。
「当時、85年のプラザ合意によって円高が進み、日本は深刻な円高不況に苦しんでいた。金融緩和を迫られた日銀は、1年間に4回も公定歩合を引き下げ、市場に大量のカネを流しています。その結果、あっという間に資産バブルが起きてしまった。平均株価は1年間で4割も上昇。地価も急騰した。有り余ったカネが、株と土地に向かったのです。しかし、実態から離れた高騰はしょせんバブル。バブルは必ず破裂します。しかも、破裂した後、深い傷を残す。アベノミクスによって、これから同じことが起こる恐れが強い。最悪なのは、当時は給料も上がったが、今回は賃金は上がらない可能性が高いことです。国際競争にさらされている日本企業は、人件費を増やすつもりはサラサラない。少しでも安い人件費を求めて、海外に工場を移転させているくらいです。富裕層は資産バブルで潤うかも知れないが、庶民はほとんど恩恵を受けないでしょう」
庶民は恩恵を受けないどころか、円安による「輸入インフレ」に直撃される。給料は上がらないのに、ガソリンが12週連続して値上がりするなど、すでにモノの値段が上がり始めている。どう考えても「黒田―岩田」体制は、日本経済にマイナスでしかない。
◆束の間のバブルの後に破滅が待っている
要するに「リフレ派」の発想は、カネをジャブジャブにすることで人為的に「バブル」を引き起こそうというものだ。
しかし、強引にバブルを発生させたら、イタリヤやスペイン、ギリシャの二の舞いになるだけだ。つかの間のバブルに踊った南欧の各国は、バブルが破裂した途端、国家財政が破綻し、ニッチもサッチもいかなくなっている。
それでなくても、日本の国債残高がGDPに占める比率はギリシャを上回っている。
国民が望んでいる「デフレ脱却」は、景気が良くなることで国民の所得が増え、その結果、消費が活発になり、モノの値段が穏やかに上がっていくというものだ。決して資産バブルじゃない、需要と供給のギャップを埋めていくものだ。このサイクルなら副作用もない。しかし、無理やりインフレを起こそうとしたら、必ず、歪みが生まれる。
経済評論家の吉見俊彦氏はこう言う。
「安倍首相は〈インフレ目標2%〉を掲げていますが、物価が2%上昇すれば、長期金利も2%上がるというのが債券市場の常識です。約1000兆円も借金があるのに、2%も金利が上がったら、単純計算で利払いが20兆円も増えることになる。国の財政はもちませんよ。金利が上がれば、国債は下落し、大量の国債を抱えている銀行や生保も、巨額の含み損を抱えることになる。安倍首相は、そこまで分かっているのでしょうか」
◆世界経済を破壊してきた「通貨マフィア」
安倍首相は新しい日銀総裁について「国際金融界のインナーサークルに入って発信も説得もできる人」と条件を付け、財務省の財務官だった黒田東彦氏に白羽の矢を立てた。
たしかに、財務省で通貨政策を取り仕切る財務官は「通貨マフィア」と呼ばれ、各国の通貨担当とツーカーだ。黒田東彦氏も、国際金融の世界では知られた顔である。しかし「通貨マフィア」こそ、世界経済をメチャクチャにしてきた元凶じゃないのか。国際金融に詳しい東海東京証券チーフエコノミストの斎藤満氏がこう語る。
「80年代の日本のバブルもそうでしたが、バブルは自然には発生しない。必ず、裏には欧米を中心とする国際金融資本の存在があります。バブルの起こし方は、いたってシンプル。中央銀行が大胆に金融緩和を行えばいい。80年代の日本のバブルも日銀が4回も公定歩合を下げたことで起きた。あの時、外国資本は巨額の利益を上げています。ただ、バブルはいずれ破裂する。破裂したら、また新しいバブルを引き起こす必要がある。この20年、その繰り返しです。90年代のITバブル、2000年代のサブプライムローン……。バブルによって巨額の利益を上げるウマミを知った国際金融資本は、もはや昔のようにモノをつくることで、チマチマと利益を上げるつもりはない。各国の政府も、景気が悪くなると、どうしても金融緩和をせざるを得なくなり、バブルを生みやすくなっている。通貨マフィアと呼ばれる人たちは、当然、こうしたカラクリを熟知しているはずです」
「通貨マフィア」の黒田東彦新総裁は、資金をジャブジャブにして日本で局地的な資産バブルを引き起こすつもりだ。しかし、その先に待っているのは、庶民を苦しめる経済の破滅である。真相を何も知らず、安倍首相に高い支持率を与えている国民は、いいツラの皮だ。