福井女子中学生殺人事件の再審開始取り消し決定に抗議する
本日、名古屋高裁刑事第1部(志田洋裁判長)は、再審請求人前川彰司さん、同補佐人・父前川禮三さんの請求にかかわる再審請求事件、いわゆる「福井女子中学生殺人事件」の異議審で、2011年11月に名古屋高裁金沢支部が出した再審開始決定を取り消す決定を行った。私たちは、この不当決定に強く抗議する。
本件は1986年3月、福井市内において、女子中学生が殺害された事件である。事件発生から1年後に、前川彰司さんが犯人として逮捕されたが、逮捕以来今日まで一貫して無罪を主張している。前川さんと犯行を結び付ける物的証拠は何一つなかった。
前川さんは、2004年7月、日本弁護士連合会や日本国民救援会の支援の下に、名古屋高等裁判所金沢支部に再審請求を申し立てた。名古屋高裁金沢支部は、7年余にわたった再審請求審の審理において、これまで検察が隠していた関係者の捜査段階での供述調書や解剖時における写真などが開示されると同時に、法医学者の科学的鑑定や意見書の事実調べが慎重に行われ、「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則は再審こも適用されるとした最高裁の白鳥・財田川決定にもとづいて、新旧証拠を総合的に判断して公正な決定を行ったものである。具体的には、確定有罪判決を支える関係者の供述は、もともと脆弱なものであり、再審請求審において検察官の未提出証拠が開示される等した結果、確定有罪判決が根拠とした証拠は、関係者の供述の形成過程と法医学の面から、捜査本部の筋書きに基づいて、殺害態様と犯人像についての強引きわまる認定と、関係者の「目撃」供述の誘導による「砂上の楼閣」に過ぎないことが明らかになった。このように、確定有罪判決の認定と、その基礎となった検察側主張は、完全に崩壊した。
ところが本日の決定は、再審請求審に弁護団が提出した新証拠を無視し、開示証拠や客観的状況と矛盾することが明白になった関係者供述に信用性を認めて、再審開始決定を取り消した。これは公正な判断を求める国民の信頼を裏切るものである。
私たちは、「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則は再審にも適用されるとした最高裁の白鳥・財田川決定に反し、新証拠及び開示された証拠の評価を適切におこなわず、再審請求を棄却したことに強く抗議する。
私たちは、前川氏の無実を確信し、引き続き再審無罪を勝ち取るために支援運動を続ける決意を表明する。
2013年3月6日
日本国民救援会福井県本部
再審・えん罪事件全国連絡会