出典 http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MIXJ8Z6JTSEL01.html
「黒田日銀」は脱白川でレジームチェンジ、4月会合で量的緩和復活も (ブルームバーグ)
3月1日(ブルームバーグ):政府は28日、黒田東彦アジア開発銀行(ADB)総裁を日本銀行総裁に起用する人事案を国会に提示した。「異次元」の金融緩和を求める安倍晋三首相の意向を受けた「レジームチェンジ(体制転換)」により、早ければ4月にも量を目標とする量的緩和策が復活するとの見方も出ている。
衆参両院が人事案に同意すれば、3月20日に黒田総裁が率いる日銀新体制が発足する見通し。シティグループ証券の道家映二チーフJGBストラテジストは「首相はこれまで金融政策の『レジームチェンジ』を目指してきた」と指摘。みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストも「首相が唱える金融政策の『レジームチェンジ』が、この新体制の下で具体的に実行されていくと考えるのが自然だ」とみる。
上野氏は「そこで浮かび上がるのが、金利ターゲットから量的ターゲットへの切り替え、すなわち『量的緩和の復活』だ」と予想。「黒田」総裁率いる日銀の新体制がレジームチェンジを行う場合、1998年から2002年まで日銀審議委員を務めた中原伸之氏の提案が「1つのモデルになるのではないか」とみる。
中原氏は、安倍首相が主催した日銀総裁選びの有識者会議にも名を連ねた量的緩和論者。日銀が量的緩和導入を決めた01年3月19日の金融政策決定会合で、同氏が提案したのが「02年10−12月期平均の消費者物価(生鮮食品除く)の前年比が0.5−2.0%」となることを企図して、「01年7−9月期のマネタリーベース(平均残高)が前年同期比で15%程度に上昇するよう量的緩和を図る」というものだ。
当座預金は年内に90−100兆円に
上野氏は中原氏の提案を参考にして、「物価目標の2%を15年1−3月期までのできるだけ早期に実現することを目指し、13年10−12月期の当座預金残高(平残)を70兆−80兆円程度まで引き上げることにより、同四半期のマネタリーベース(平残)が前年同期比で20−30%程度増加するよう量的緩和を行う」というような議案が可能だと指摘する。
新体制にとって好都合なのは、日銀が1月までに決定済みの追加緩和により、現在40兆円台の日銀当座預金残高が今後大幅に増えるのは必至なため、量的な指標を実現可能なターゲットにしやすいことだ。佐藤健裕審議委員は6日、前橋市内で行った会見で、日銀当座預金は年内にも「90兆−100兆円に達してくる可能性がある」と述べている。
マネタリーベースは日銀当座預金、日銀券などの合計なので、当座預金が増えればマネタリーベースもほぼ同じ分だけ増える。三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所の嶋中雄二所長が「円高是正や株高を導く基礎」とするなど、マネタリーベースの信奉者も多い。
スピード重視なら臨時会合も
ドイツ証券の松岡幹裕チーフエコノミストは「黒田氏は資産買い入れ等基金の拡大ペースに比べ、日銀の総資産やマネタリーベースの拡大ペースが遅いことも十分に認識しているとみられる」と指摘。新体制の発足により、@時間軸政策A基金を廃止しマネタリーベースか総資産を操作目標にするB残存年数の長い国債やリスク資産など購入対象の多様化C景気拡大局面でも追加緩和策を優先する−という「4つのすべての点において、ある程度の進展が見込まれそうだ」と期待する。
上野氏は「スピード感重視の場合は4月第1回目の3、4日会合、もしくは、それより前の臨時会合で、資産買い入れ等基金による長期国債買い入れの増額と、買い入れ対象の残存5年以内への拡大を含む追加緩和か」と予想。新体制が「レジームチェンジ」をまず行うという意向の場合、追加緩和は「経済・物価情勢の展望(展望リポート)と合わせる形で4月第2回の26日会合で行われることになるだろう」とみる。
「日銀券ルール」についても、見直しは必至の情勢だ。日銀は長期国債の買い入れについて、保有残高が日銀券発行残高を上回らないようにする、いわゆる日銀券ルールを設けている。しかし、資産買い入れ等基金における長期国債の購入は例外扱いにしており、同ルールは既に有名無実化しているのが実情だ。
日銀券ルールは旧体制の象徴
道家氏は「日銀券ルールは速水総裁時代の2001年3月に導入され、その後、福井・白川体制下でも受け継がれてきた。15年ぶりに日銀出身者以外の人物が日銀総裁となり、撤廃を含めた日銀券ルールの見直しが検討されれば、象徴的な意味があろう」と指摘する。
日銀の木内登英審議委員は28日、横浜市で会見し、「仮に年限の長い国債を買っていくとなると、基金を通じた資産の買い入れと、輪番オペの境目が不明確になるので、将来的には何らかの工夫が必要だ」と述べた。第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは「白川体制の金融緩和は不十分とみなされているので、新体制は4月3、4日会合で、そうしたイメージを払拭(ふっしょく)するため追加緩和に踏み切るだろう」とみている。
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