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2013/02/26 誰も通らない裏道
本日の日経朝刊に「溶融核燃料 処理手探り 原子力機構、模擬実験に着手 21年度取り出しめざす」という記事がある。リードは以下のとおり。
東京電力福島第1原子力発電所の事故で、炉心溶融(メルトダウン)し溶け落ちたとみられる核燃料「デブリ」を処理する技術開発が始まった。日本原子力研究開発機構は模擬デブリを試作、安全に取り出す方法の評価に着手した。デブリは強い放射線を放つため、その扱いは廃炉作業で最も困難とされる。2021年度の取り出し開始を目指し、政府も官民の研究開発を後押しする。
いま現在、福島第一原発で溶け落ちた核燃料がどこでどういう状態になっているかは誰にもわからない。
東京電力は格納容器下のコンクリート部分でとどまっていると主張しているが、それとて推測でしかない(日経の記事には「どろどろの溶融燃料は軽石状になったり、圧力容器の底や格納容器内部に落ちたりして固まっていると考えられている」と書いてある)。
なにしろこれは事故を起こした当事者による思い切り甘い見積もりで、この会社が自分たちに不利になる事実についてはすべて嘘をつくことは、これまでも何度となく証明されている。
話を戻すと、そういう状態の溶融燃料を、原子力開発機構や東京電力は取り出すという。
そのための方法を官民一体で研究するというわけだが、一方で京都大学原子炉実験所の小出裕章助教は、「この燃料は取り出せないだろう」と言っており、とにかく地下水との接触を防ぐためにも、早く原子炉の周りの地下に壁をつくるべきだと主張されている。
私はまったくの素人だが、それでも1号機から3号機まで、3つの原子炉の溶融燃料を2021年度、つまりこれから8年後から取り出せるとは到底思えない。
まずもって、この作業を人間の手でやることはできず、したがってロボットが必要となる。
この日経の記事には「支援ロボ 開発着々」という見出しもあり、その部分の記事を見ると「三菱重工業は高所のバルブの開閉などができるロボットを開発した。千葉工大の移動ロボットの映像を見ながら高所での作業が可能となる。東芝は汚染水の中に潜れる水陸両用ロボットを作成した。」などと書いてある。
まるで開発は成功したかのごとくの書き方だが、とんでもなく強い放射線のある環境のなかで、そのロボットがまともに作業を続けられる保証はどこにもないだろう。
しかも、たまさか成功したとして、そのロボットは高レベルの放射性廃棄物になるわけで、いったいそれをどこに最終処分するのか。そもそも取り出した溶融燃料をどこに、どうやって保管するのか?
と、こう考えていくと、「取り出せない」という小出先生の意見に軍配を上げざるを得ないと私は思う。
しかし、原子力研究開発機構や東電も取り出すと言い張り、政府が支援するという。その支援とは、要するに税金の投入を意味するわけだが、取り出せることを前提とするならば、そのミッションは大変に重要なわけだから、湯水のごとくカネを使っても文句を言われる筋合いはなく、青天井でもOKという論理も成り立つ。
となると、、、、、
いつものごとくうがった見方をすれば、これは原子力ムラへの新たなカネ(税金)のバラ撒きの始まりではないのか? 日経の記事によれば、
デブリには放射性物質が大量に含まれるので、不用意に扱えば核分裂反応が連鎖する臨界に達する恐れもある。東芝や日立GEニュークリア・エナジー、三菱重工業、原子力機構は、デブリがどんな条件を満たせば臨界に至る可能性があるのか、解析に着手した。
デブリを扱う技術はこれまで必要性が想定されていなかったため、原子炉メーカーも手探りで開発を始めた段階。政府は原子力機構やメーカーへの支援を強化する方針で、経済産業省は来年度予算案で原子炉の廃炉に関する技術開発支援に86億円を盛り込んだ。「将来は世界的に廃炉市場が拡大し、産業競争力の底上げにもなる」と話している。
火力発電所を解体する技術を支援をするために政府が税金を投入するという話は聞いたことがない。
つまりこれも原発を運転するがゆえの立派なコストであるが、おそらくこれも原発の発電コストには算入されていないだろう。
私の予想では、おそらくカネ(税金)を使うだけ使ったあげく、最後には「やっぱり溶融燃料は取り出せませんでした」ということになり、メディアも「仕方がない。難しかった」ということで話をおさめるのではないかと思う。
ちなみに、原子力開発機構とは、兆単位のカネを投入して1ワットの発電もしていない、原子力ムラのなかでもきわめつけのデタラメである「もんじゅ」(←をクリックして、是非、もんじゅのページを見られたい。いまだに「すぐれた技術 確かな安全 世界に示す 新生「もんじゅ」」)などと臆面もなく書いてあります)を運営している独立行政法人だ。
つまり、立派な“前科”があるわけで、そういう組織のやることを信じることはできない。
◇
溶融核燃料の処理手探り 原子力機構が模擬実験に着手
2013/2/26 0:20 日経新聞
東京電力福島第1原子力発電所の事故で、炉心溶融(メルトダウン)し溶け落ちたとみられる核燃料「デブリ」を処理する技術開発が始まった。日本原子力研究開発機構は模擬デブリを試作、安全に取り出す方法の評価に着手した。デブリは強い放射線を放つため、その扱いは廃炉作業で最も困難とされる。2021年度の取り出し開始を目指し、政府も官民の研究開発を後押しする。
巨大な津波に襲われた福島第1原発は炉心を冷却できなくなり、核分裂に伴う熱で燃料が溶けた。どろどろの溶融燃料は軽石状になったり、圧力容器の底や格納容器内部に落ちたりして固まっていると考えられている。
このデブリをどう安全処理するか、過去には1979年の米スリーマイル島原発の事故処理で扱っただけでデータはほとんどない。
原子力機構はまず燃料のウランや、燃料棒を覆っていたジルコニウムなどから模擬デブリをつくり、硬さや融点、熱伝導率、水との反応性などの性質を調べた。実際の廃炉作業では特殊な工具を使って炉内のデブリを壊し、外に運び出すことになる。分析の結果、コンクリートを崩す機械や、溶接切断機、研削機などの既存機器が使えそうなことがわかった。
取り出したデブリの処理については、アルカリ溶解などが有望なことも模擬デブリを使った実験で判明した。具体的な作業計画については今後、原子炉メーカーなどと協議する。
原子力機構核燃料サイクル工学研究所の武田誠一郎所長代理は「様々な条件で生成したデブリを模擬して評価する必要がある」と話す。
デブリには放射性物質が大量に含まれるので、不用意に扱えば核分裂反応が連鎖する臨界に達する恐れもある。東芝や日立GEニュークリア・エナジー、三菱重工業、原子力機構は、デブリがどんな条件を満たせば臨界に至る可能性があるのか、解析に着手した。
デブリを扱う技術はこれまで必要性が想定されていなかったため、原子炉メーカーも手探りで開発を始めた段階。政府は原子力機構やメーカーへの支援を強化する方針で、経済産業省は来年度予算案で原子炉の廃炉に関する技術開発支援に86億円を盛り込んだ。「将来は世界的に廃炉市場が拡大し、産業競争力の底上げにもなる」と話している。