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2013/2/15 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
ドン底の不況からバブルに転じたと動き出している塩漬けだった投資のカネが回り始めたが…
連日、大商いに沸いている東証は、きのうも売買高が2兆円を突破。10日連続の2兆円突破で、これは08年以来のことだ。
ワッショイワッショイの相場を見て、甘利経済再生相は「平均株価が2000円以上上がって、企業の含み益が38兆円増えた」と自画自賛。「期末までには1万3000円を目指して頑張る」なんて言っていたが、これぞ、狂乱相場を象徴しているような話だ。
「現職の経済閣僚が、株価を誘導するような発言をするなんて、信じられません。普通ならあり得ない話です。それを批判しないマスコミもどうかしている。メディアも市場も感覚がマヒしているのではないか。そのくらい、この相場は狂っていると感じます」(ジャーナリスト・斎藤貴男氏)
そこにあるのは、冷静な投資判断ではなく、「乗り遅れるな」という熱狂だ。おそらく、世界中の投資家が日本市場でリーマン・ショックの損失を取り戻すつもりなのだろう。塩漬けにしていた株を今なら清算し、儲けられる。そう思って目の色を変えている。
なにしろ、日本市場では夏まで確実に株価は騰(あ)がるのだ。
「アベノミクスとは、要するに自民党の選挙対策です。株価を上げて好景気を演出する。それで高い支持率を保てる。夏の参院選まで、この調子で行くのでしょう。そうすれば、消費税増税の根拠になる4―6月期のGDPも底上げされる。選挙に勝ち、晴れて増税できる環境が整えば一石二鳥。そのために煽(あお)りに煽っているわけで、無理やりつくった偽装相場みたいなものです」(経済評論家・広瀬嘉夫氏)
◆鉄火場相場に目を走らせる投資家連中
参院選後はどうなるか分からないが、少なくとも夏までは安心であれば、投資家が熱くなるのは当然だ。とにかく、短期決戦の鉄火場相場。マネーゲームに目を血走らせている連中が、今の狂乱相場をつくっている。株が上がれば、世間はアベノミクスでデフレ脱却、インフレ到来と勘違いする。株だけでなく不動産にもマネーが集まる。バブル到来、今がチャンス。そういう連中が踊っている。
住宅ローンを払うのに精いっぱいの庶民には、いまいちピンと来ないが、もともと資産を持っている金持ちにしてみれば、こんなおいしい相場はない。
大企業もそうで、円安効果に加えて株価も上がれば、その分、利益は出るし、含み益も膨らむ。業績が良くなったワケでもないのに、ウハウハ決算。こうなりゃ、市場が過熱するのも当たり前だが、さて、これが現実の景気にどう影響してくるのか。とりわけ個人の暮らしはどうなるのか。こちらは安倍バブルとまったく別の問題だ。
◆庶民にとってはインフレもバブルもいい迷惑でしかない
安倍首相は12日、経団連の米倉会長ら経済3団体のトップを集めて、労働者の賃金引き上げを要請した。しかし、米倉ら経営側には馬耳東風。賃上げに協力する気はサラサラない(3ページに詳報)。円安の恩恵で今後はさらに利益拡大が確実視されている自動車業界でさえ、大手7社がすべてベア見送りを決めたくらいだ。
賃金が上がらなければ、インフレもバブルもいい迷惑でしかないが、経済評論家の荻原博子氏は「企業が賃上げするわけがない」と切り捨てた。
「共産主義国ではないのだから、首相が給料アップを迫ったところで、無理ですよ。企業は損得で動いているわけですからね。それに安倍首相がどこまで本気で労働者の給料を上げようと思っているのかも疑問です。本当に賃上げの必要性を感じているのであれば、アベノミクスの3本目の矢である成長戦略をなぜ、すぐ示さないのか。6月なんて悠長すぎる。アベノミクスが実体経済に火を付けるかは成長戦略次第です。成長分野に資金が集まり、働く人手が足りないくらいの状況をつくらなければ真の景気回復にはならないのです。それを急がず、口先で賃上げを要請するだけでは、ただのパフォーマンスでしかありません」
荻原博子氏の指摘通り、安倍は本気じゃないのだろう。賃上げ要求だなんて、アリバイ的に言っているだけだ。本当に給料を上げて、個人の可処分所得を増やし、それで個人消費に火を付けて、景気を本格回復に向かわせようとしているのなら、景気を落ち込ませる消費税増税なんて絶対にしない。生活保護のカットもしない。
庶民いじめのメニューをズラリと並べておいて、「給料を上げろ」も何もないのだ。
◆自民党政権に戻したことを悔やんでも遅い
もっと言うと、企業は給料を抑えるからこそ、インフレ分が利益になる。利益が上がるから株も上がる。給料を上げたら、その分、利益が減ってしまう。だから、絶対に給料を上げようとしない。
アベノミクスとは株価を上げることが目標だから、「賃上げ要求」も口先だけということになる。
そうなりゃ、株高もインフレも庶民にとっては、迷惑でしかない。だから、アベノミクスは危ういのだ。
「経営者も、今の株高が見せかけだけということを分かっている。本音の部分ではアベノミクスを信用していないのです。本当に景気が良くなる確信があれば、設備投資もするし、雇用も増やしますよ。今のところ、社員の年収アップを決めた大企業は、社長が安倍政権で産業競争力会議のメンバーを務めるローソンだけなのだから、マンガみたいな話です。14日に昨年10―12月期のGDPが発表されましたが、3期連続のマイナス成長でした。実質で年率マイナス0・4%です。この数字がすべてを物語っている。円安は昨年10月から始まっていたのに、実体経済はまだ冷え切っている。どれだけ株価が上がろうが、庶民生活にはまったく関係がない。アベノミクスで潤うのは、大企業と資産家だけなのです」(広瀬嘉夫氏=前出)
株価は上がるが、それと同時に、持つ者と持たざる者の格差は、どんどん広がっていく。それがアベノミクスということだ。
「円安によって輸入価格が高騰し、生活コストが上がる。しかし、給料は増えず、待っているのは増税地獄。アベノミクスによって、庶民生活がますます苦しくなるのは確実です。こうなるのは、総選挙で自民党を圧勝させた時点で分かっていた。自民党は人よりコンクリートだし、庶民よりも大企業だからです。国民は、程なく、自民党政権に戻った意味を思い知ることになるでしょうね」(斎藤貴男氏=前出)
株高だ何だと世の中が浮かれている間は、みんな気がつかない。プチバブルがはじけた時、そこに何が残っているのか。庶民は翻弄されるだけである。