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2013/2/8 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
個人が犠牲になる恐れ
安倍首相は「金融緩和」「財政政策」「成長戦略」を経済政策の3本の矢と位置づけているらしい。金融緩和は、日銀に圧力をかけて追加緩和をのませている。財政政策は、予算案の成立を待って公共事業に大盤振る舞いする予定だ。
それに比べて不透明なのは、3番目の成長戦略である。どうやって日本の産業力を伸ばし、経済を活性化させるのか見えてこない。
規制改革会議や財政諮問会議では、規制改革を「成長戦略の一丁目一番地」と発言しているようだ。「雇用」「エネルギー・環境」「健康・医療」の3つを重点分野として、現行の規制を見直すとしている。
さて、こうした取り組みは、本当に経済を成長させるのだろうか。
例えば、電力会社の発送電分離は民主党政権時代から検討されてきた。送電網を開放すれば、新規事業者の参入も容易になる。それによって地域独占が崩れ、競争が本格化すれば、利用者は安い料金で電力供給を受けられるようになるはずだ。そのメリットは大きいだろう。
ただ、それによって日本の産業活力が再生されるとは思えない。電力料金は製造業にとってバカにならないコストである。安ければ安い方がいい。だが、そのことと「日本経済の再生」「産業活力の復活」は、ダイレクトにつながるものではない。規制を外せば経済が伸びるというのは、あまりに短絡的である。
旗振り役が慶大教授の竹中平蔵氏というところも気がかりだ。米国流の自由競争社会を礼賛し、小泉構造改革を主導した人物である。規制緩和の名の下に、貧困格差を拡大させた張本人。成長戦略を口実に、再び個人が犠牲になる恐れは強い。
実際、今回の規制改革でも、雇用は重点分野となっている。ホワイトカラーの労働時間規制を外したり、解雇のハードルを下げたりする改革が導入される公算は大だ。こんなことで日本経済が立ち直るわけがない。
小泉政権の規制緩和では、特定の企業だけが甘い汁をすすったとされる。「平成の政商」と批判される経営者も話題になった。そんな規制改革を再びやるのだとすれば、国民の支持は得られない。