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いよいよ、国債バブルがはじける前兆を示す記事が、1日同期して2本上がっていた。
まず、ブルームバーグの報道を要約しておこう。
◆「ルーミス・セイレス・ボンド・ファンド」ロンドンで過去3年間に同種ファンドの98%を上回る運用成績を上げたダニエル・ファス氏は、債券相場は自身の55年間のキャリアで最も「買われ過ぎている」との見方を示した。同氏は英個人投資家向けファンドの設定を準備している。
◆米ボストンの資産運用会社ルーミス・セイレスの副会長を務めるファス氏(79)はロン ドンでのインタビューで、「私のビジネス経験上では今が最も買われ過ぎだ」と述べ
「私が顧客に言っているのは、『この世の終わりではないが、どうか今は金を借りてまで 債券を買わないでほしい』ということだ」と語った。
◆欧州債務危機の深刻化や世界経済の失速懸念の強まりを背景に、米国やドイツ、英国、 オーストラリアの国債利回りは昨年、過去最低を付けた。米連邦準備制度理事会(FR B)や日銀、イングランド銀行(英中銀)など各国中銀は景気てこ入れのため、国債の買 い入れを通じて金利に圧力をかけた。
◆アイゼンハワー政権時代に投資ビジネスに入ったというファス氏は「世界は変化しつつ ある」と述べ、「中銀の債券購入による超低金利の時期は終わりつつある。金利は上向く だろう」との見方を示した。【ブルームバーグ 12:07】
もう一つは、ロイターであるが、短文なので全掲しよう。
【国債の売却を始める時期─テンプルトンのハッセンスタブ氏=FT紙】
米資産運用会社フランクリン・テンプルトンの債券運用グループのポートフォリオ・マネ ージャー、マイケル・ハッセンスタブ氏は、手遅れにならないうちに国債の売却を開始す べきだとの認識を示した。英フィナンシャル・タイムズ紙(FT)が報じた。
同氏は「早期に行動するデメリットは非常に限られている。最後の上昇には参加できな いが、お金を失うわけではない」と指摘。
「最悪の事態が起きている。われわれはデフレのわなには陥っていない。事態は安定も
しくは若干改善しており、何もないところからデフレが起きるとは思えない」と述べた。
同氏の運用するファンドは昨年、アイルランドとハンガリーが金融危機から回復するこ
とを見込み、両国の国債を大量に購入した。同氏が監督するファンドの運用資産は総額
1750億ドル。【ロイター 1日】
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以上だが、見逃してはならないのは、共に英国発の情報であるということだ。
世界の金融セクターの司令塔である英ロンドンシティが、国債売却を示唆しているのである。
しかも、双方とも米国で資産運用していることからも、米国債からバブル崩壊が始まることを示している。
二人の発言を吟味しよう。
ダニエル・ファス氏:
<私のビジネス経験上では今が最も買われ過ぎだ。私が顧客に言っているのは、『この世の終わりではないが、どうか今は金を借りてまで債券を買わないでほしい』ということだ><世界は変化しつつある。中銀の債券購入による超低金利の時期は終わりつつある。金利は上向くだろう>
この発言には、"確信"が込められている。"この世の終わりでないが"と敢えて述べて
いるのは、それだけ悲惨な金融大惨事を招くということだ。
そして、<中銀の債券購入による超低金利の時期は終わりつつある>という言葉は、
次の言葉にかかってこよう。
マイケル・ハッセンスタブ氏:
<最悪の事態が起きている。われわれはデフレのわなには陥っていない。事態安定もしくは若干改善しており、何もないところからデフレが起きるとは思えない>
この意味深長な言葉は何を表しているのか。
そう、デフレでもインフレでもない、"スタグフレーション"である。
これは国民生活を窮地に追い込む最悪の事態が進行していることを表しているのだ。
本来、超低金利政策による過剰流動性が通貨の価値の下落=国債価値の下落(金利高騰)となるべきところ、それを覆い隠しているのは相対的な為替相場の"通貨安戦争"なのであって、実体経済は、デフレ不況ではなく、"恐慌"なのである。
中銀が超低金利政策を打ち切り、引き締めに入った瞬間がもっとも危険なタイミングだが、先日FOMCが匂わした14年度中の緩和策見直しは、タイミングを逸し、手遅れになることが想定される。あまりにも緩和し過ぎているがゆえ、国債は「買われすぎ」なのである。
それはまた、バブルというにはネガティブな要因、つまり、"ラストヘイブン"としての
逃避先であって、加熱感からではない。
したがって、景気浮揚感に踊らされた資金は、株式をリスクテイクする。
これが資金流出の流れをつくり、金利上昇の芽をつくりだす。
中銀による追加緩和策の真の目的である。
もとより、"国債バブル"と言われた時から、いずれ弾けることは想定されている。
問題は、景気回復や経済成長によって解消される"順当な"出口戦略ではなかったのだ。まったくの逆の出口が閉ざされる"経済の死"を意味していたのだ。
国債とは金融市場の最後に砦であって、「国債バブル」とは"経済の末期癌"の症状だったのである。
抗がん剤の作用と副作用が、現在の金融市場の症状であることを理解していた方がよいだろう。やがて死に至る症状なのである・・・。