中国におけるマネーサプライの急増に関する記事の結論は、「投資効率が明らかに低下している事実が窺える。資金で経済成長を推進する発展モデルはますます行きづまりつつあり、資金に頼る経済けん引を望むのはやめたほうが良い」というものだ。
「資金で経済成長を推進する発展モデル」というのは、輸出や個人消費の増加そして設備投資を牽引とするのではなく、政府部門の公共投資や民間部門の住宅投資に依存した経済成長を意味していると理解するが、08年以降の世界経済状況においては、それらなくして9%を超えるような高成長は実現できなかっただろうし、現在の7.5〜8.5%の成長も維持できないだろう。
中国のマネーサプライ急増は、貿易収支と投資収支の大幅な黒字に伴う人民元への転換、そして、公債発行や銀行からの借り入れを伴う中央及び地方政府の公共事業の増加を主因とする。
中国経済は、00年代前半は“デフレの危機”にあり、00年後半は“インフレの危機”にあった。(現在は、どちかと言えば、インフレの抑制に傾いている)
“デフレの危機”は生産性の急上昇と総需要増加の低迷という関係性から生じ、“インフレの危機”は、官民の過剰な投資が可処分所得の伸びを無効にしかねないほどの物価上昇を招き、とりわけ住宅取得に関する低中所得者の怨嗟の声を湧き上がらせたというものである。
中国政府は昨年から賃金の大幅上昇を求める政策を採っているが、それは、“デフレの危機”や“インフレの危機”を避けながら経済成長を継続する唯一の道と判断してのことだろう。今後の経済成長を安い労働力に依存しないという選択は賢明である。
記事中に、「多すぎるマネーサプライは高インフレ、資産価格バブル、資金の流出といった相応のリスクをもたらす」と指摘とか、「中長期的に見て深刻な問題は、急激に増加するマネーサプライにより、中国経済のマネタイゼーションという傾向が暴露されること」とあるから、過大なマネーサプライの危険性と“恥ずかしさ”が理解されていることはわかる。
ただし、「高インフレ、資産価格バブル」は、経済成長との見合いだが、経済成長を打ち消すような悪性のものであれば、日本のようなデフレ状況とは違い、強権的な金融政策で抑制することができるから、それほど心配することはない。
※ 資金の流出がキャピタルフライトの意であれば、外貨転換後の人民元を中央銀行が吸い上げればインフレ抑制に利用することもできる。
========================================================================================================================
中国、マネーサプライ急増が意味するものとは?
中国人民銀行のデータによると、昨年末の時点で中国の広義マネーサプライ(M2)は97兆4200億元(約1402兆3000億円)に達し、100兆元を突破することは間違い無くなった。この額はすでに、世界のマネーサプライ総量の4分の1に近づいており、米国の1.5倍、英国の4.9倍、日本の1.7倍で、ユーロ圏全体のマネーサプライ合計を20兆元上回る。中国は今や、世界一のマネーサプライを有する国となった。新華社が伝えた。
注目すべきは、これらの通貨の大部分がここ数年で蓄積された点だ。2000年、中国のM2残高は約13兆元で、2008年にも50兆元に満たなかった。しかしその後金融危機が勃発し、2009年以降は毎年約10兆元ずつの大幅増加を見せた。
客観的に見ると、通貨量の急増はある特定の部門の責任ではなく、中国の経済発展のアンバランス、国際収支の「双子の黒字」が長期的に続いた結果といえる。
短期間における大量の通貨集中が、経済に影響をもたらすのは言うまでもない。周知の通り、世界通貨である米ドルはこれまで幾度も大規模な超過発行により、世界各地の米ドル所有者に深刻な影響をもたらしてきた。かくしてニクソン政権時代のジョン・コナリー財務長官の名言「ドルはわが国の通貨だ。しかし、(ドル下落は)あなた方の問題だ」が生まれた。
しかし、米ドルは世界各地で流通しているが、中国の人民元はまだ大規模な「海外進出」を果たしていないため、国内における通貨量の増大が、国内経済のリスクを深刻化させることは間違いない。
中国人民銀行(中央銀行)貨幣政策委員会元委員・李稲葵氏はかつて中国の通貨量の多さを「まるで頭に堰き止め湖(地崩れによって形成された湖)を乗せているよう」と比喩し、「多すぎるマネーサプライは高インフレ、資産価格バブル、資金の流出といった相応のリスクをもたらす」と指摘している。
中長期的に見て深刻な問題は、急激に増加するマネーサプライにより、中国経済のマネタイゼーションという傾向が暴露されることだ。現在中国のM2の対GDP比は190%に近づいている。この数字はここ数年で増加ペースを増しており、投資効率が明らかに低下している事実が窺える。資金で経済成長を推進する発展モデルはますます行きづまりつつあり、資金に頼る経済けん引を望むのはやめたほうが良い。(編集SN)
「人民網日本語版」2013年2月4日