「重要な情報を隠す、事故そのものを小さく見せる、安全に関する基準値をあげる――この3つが、福島の原発事故で行われていることです」
これは福島の原発事故以降の福島県や国の対応を評した、〈ふくしま集団疎開裁判〉弁護団、柳原敏夫弁護士の言葉だ。
この3月で原発事故から2年、水面下では子どもたちへの深刻な健康被害を何とか食い止めようとする人たちと、健康被害そのものをおもてに出さずにもみ消そうとするグループとのせめぎ合いが続いている。
1月25日(金)、文部科学省前の抗議集会(18時〜)では、21日に仙台高裁で行なわれた第3回尋審について光前幸一弁護士から報告があった。
「仙台高裁に入る前に市内でデモ行進をしましたが、沿道からわざわざ声を掛けてくれる人もいて、ようやくここに来て〈ふくしま集団疎開裁判〉も注目されて来たなという印象です」
「ただ、仙台高裁は、私たちが仮処分という簡易な手続きを求めたことから、裁判所としても簡便に、つまり被ばくという具体的なことにはあまり踏み込まずに、この裁判を終わらせたいという意向もうかがえました。見通しとしては、どうやら3月中に結論を出したいということのようです。ですから、私たちもそれまでに、もうひとふんばりでさらに詳しい資料を裁判所に提出したいと思います」
その後、集会では第3回尋審でそれぞれ意見書や報告書を提出した松本幸道医師、郡山在住の武本泰氏と電話中継で質疑応答などが行なわれた。
《松崎幸道医師による「意見書」》
松崎医師は1月21日に仙台高裁宛てに提出した「意見書(4)」において、チェルノブイリ周辺地区で原発事故以後、小児の血液疾患が4年後に9倍、10年後には20倍にも増加した事実を挙げ、こう警鐘を鳴らす。
「福島県内には、チェルノブイリのゴメリのような高度汚染地区に匹敵するセシウムによる土壌汚染のある地域も多いため、子どもたちへの健康影響がとても心配されます」
ところが、その同じ意見書で同医師は、2011年12月までに全体の7割近く終わっている福島の子どもたちのたちの血液検査の結果が公表されていない事実を指摘している(注:おとなの血液検査結果は公表されている)。
この血液検査とは別に、すでに厚生労働省は、3年ごとに全国的に行っている〈患者調査〉を、平成23年度実施分から、福島県全域と宮城県の一部を除外することを決めている。この〈患者調査〉は、脳卒中、心臓病など多くの疾病に関する発生状況を各病院に尋ねるものだが、その項目には、白血病や甲状腺異常も含まれている。その聞き取り調査から、福島県と宮城県の一部を外そうというのだ。「健康被害隠し」との批判が多くあがるのも無理からぬ話だろう。
ふたたび、「意見書(4)」に返れば、松崎医師は血液検査の結果が公表されていないことについて、こう述べる。
「福島中通りに匹敵する放射能汚染地帯に居住するチェルノブイリの子どもたちでは、放射線被ばくによって起きたとみられる貧血、白血球数低下、血小板数低下等がはっきり現れていました。事故直後の福島の子どもたちの血液検査がどうなっていたのかを知ることは、被ばくの影響の大きさを知った上で、適切な対策の行われることを切望している住民の基本的権利です」
急性白血病の発症率は、人口10万人あたり3〜4人だというが、それよりはるかに高い割合で福島県のある自治体では白血病による死亡が報告される等、原発事故から2年、健康被害は「懸念される状態」から、「目に見える脅威」になりつつある。3年ごとに全国的に行っている〈患者調査〉の福島県除外、そして子どもたちの血液検査の非公表と、もっともオープンにされなければいけないデータ隠しは、福島県での事態の深刻さを語っている。
《武本泰氏からの報告》
松崎医師の「意見書(4)」とともに、「報告書(3) ―放射性物質に囲まれて生活する郡山の子どもたち―」を仙台高裁に提出したのが、郡山市在住の武本泰氏だ。
武本氏は、行政が「県外への人口流出防止や県内への帰還促進対策、そして地元産業の風評被害対策を積極的に展開し、他方、低線量被ばくによる健康被害については、予防よりも治療を優先した施策を打ち出している」現状を紹介している。
「報告書(3)」によれば、2011年12月に郡山市にオープンした「ペップキッズこおりやま」は、小学生らを対象にする東北最大級の屋内遊び場で、1日当たりの入場者数は「平日で1000人、週末で1500人」にのぼるという。そうした施設はまだ「福島県中通りに大型の屋内運動場や屋内プールを数か所建設予定」とのことで、そうした動きを武本氏はこう評している。
「子どもたちの外遊びが不足し、心身の成長・発育に深刻な影響が懸念される中で、その代償として屋内遊び場等のさらなる建設が予定されています。正に、これこそ、依然外遊びが安全と言えない証でありましょう」
さらに武本氏は同報告書で、福島県が2014年からの5年間で「次期県がん対策推進計画」を定め、その基本方針として「東日本大震災の影響に配慮したがん対策の実施」や「小児がんの医療体制強化・連携」を据えていること、具体的な施策として「小児がん対策として福島医大を中心に人材育成、県内各地の医療機関の連携を強化し、福島医大は国が全国10カ所程度に設ける〈小児がん拠点病院〉の指定を目指す」としていることについて、それらの施策は、これまでの「低線量被ばくによる健康被害は考えられない」という政府や福島県の説明と矛盾するものだとして、次のように厳しく指弾している。
「福島原発事故時に18 歳以下の子どもたちの生涯の医療費無償化の方針や、小児がん医療体制の強化なども併せて考慮すると、もはや政府や福島県は低線量被ばくによる健康被害をまちがいなく予見していると類推せざるを得ません」
松崎医師や武本氏らの指摘する福島県での現状は、まさに冒頭に紹介した「重要な情報隠し」の典型である。すでに急性白血病などの血液疾患、心臓病疾患等が水面下で発生していることが現地から伝えられているが、それらの深刻な健康被害を隠し切れなくなった時に、県や国は何と言うだろうか――。
「現場での混乱や不安を考えて、公表を控えた」
「急性白血病の発生は事実だが、原発事故との因果関係は明らかにされていない」
「急性白血病の急増と原発事故とは相当の因果関係が認められるが、当時は、そのことについて予見するだけの科学的根拠は十分ではなかった」
過去の公害、薬害問題などで多くの患者が〈泣き寝入り〉を強いられてきた。再びそのような惨禍を起こさないためにも、健康被害に関する徹底した情報の公開が求められる。
(了)
http://www.janjanblog.com/archives/89807
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mainau
いつか御用が使うであろうセリフ、いつも同じパターン。
「教育と医療の現場での混乱や不安を考えて、公表を控えた」
→ 「本当のことを言うと親がパニック起こすので、情報を公開するのを控えた」
(Speedy の情報隠しと同じ言い訳)
「子供の甲状腺ガン、白血病、白内障、その他〇〇の発生は事実だが、原発事故との因果関係は明らかにされていない」
→ 「因果関係が証明できない」
(原爆被爆者手帳の交付を求めて、裁判起こされた時に使うセリフ)
「〇〇の急増と原発事故とは相当の因果関係が認められるが、当時は、そのことについて予見するだけの科学的根拠は十分ではなかった」
→「想定外のリスクだった」
(モーメントマグニチュード 9.0 の大地震は想定外)
(格納容器破損は1億年に一度おこるかどうかという、大隕石衝突で地球が滅亡するのとおなじ危険レベル by プルト大橋弘忠)
http://www.asyura2.com/12/genpatu29/msg/856.html