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2013/1/15 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
大阪市の橋下徹市長が、男性教師の体罰を受けて自殺した市立高校生の遺族宅を訪れて謝罪した。面会後には記者団に「自分の認識は甘すぎた」と述べたという。
かねて体罰容認の発言を繰り返し、事件発覚後も、「ルール化できていなかったのが問題」「禁止は上っ面のスローガン」などと叫んできた姿勢を反省した格好だ。例によって世論の風向きに合わせたパフォーマンスだとしても、開き直られるよりはマシに違いない。
とはいえ気楽なものである。深刻な問題を狭い体験や思いつきだけを根拠にペラペラまくし立て、大事が起これば頭を下げてチャラ。案の定と言うべきか、はたして橋下市長は事件を教育委員会不要論や教育行政への首長権限強化に結びつける構えも隠していないのだ。
そもそも石原慎太郎氏にすり寄った人物を信用してよいはずがないではないか。石原氏は体罰バンザイの最右翼だ。あの戸塚ヨットスクールを「支援する会」の会長で、昨年の「東京ビッグトーク」では、「子どもが自我を育てていくためには体罰が不可欠だ。刷り込みが必要で、そのためには強い強制力が必要」だと言い切っている。2006年には文科省にイジメを苦に自殺を予告する手紙を送った主を大人の愉快犯と決めつけ、テレビ番組で「死ぬならさっさと死ね」と罵倒したことも。ただし今回はだんまり。相変わらず卑劣と無責任の塊だ。
教育問題ほど素人の床屋談議が幅を利かせやすい分野も珍しい。誰しも何らかの経験があるからだが、いくらなんでもこの手のゲス野郎にはお引き取り願わなくてはならない時期である。
安倍晋三新政権の方向性は明らかだ。原発のより一層の推進および市場原理主義に公共事業のバラマキを加えた大企業絶対の価値観の徹底、沖縄差別、さらには憲法改正で常にアメリカの戦争に付き従う体制の確立――。
新政権が今月下旬に発足させる「教育再生実行会議」の委員にも、作家の曽野綾子氏や高崎経済大学の八木秀次教授ら、やたら戦争や格差社会を礼賛したがる面々が内定した。副座長には三菱重工業の佃和夫会長が就任するそうだ。
愛国心の美名を盾に、他人の子どもを兵隊か労働力か息をするサイフとしてしか見なしていない手合いばかりがのさばりかえる時代。世襲権力者や軍需産業の親玉の類いに教育を差配されてたまるものか。
許せばわが子も私たち自身も奴隷にされる運命と知るべきである。
◇さいとう・たかお 1958年生まれ。早大卒。イギリス・バーミンガム大学で修士号(国際学MA)取得。日本工業新聞、プレジデント、週刊文春の記者などを経てフリーに。「東京電力研究 排除の系譜」「消費税のカラクリ」など著書多数。