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アベノミクスに群がる外資
金融市場が異常な活況
欧米に続く国債バブル
2013年1月7日付
安倍自民党政府が無制限の金融緩和政策や、10年間で200兆円の公共事業を実行する政策を打ち出したのにともなって、「アベノミクス」(安倍+エコノミクスの造語)バブルが発生し、金融市場が異様な活況を呈している。年初の大発会から東京市場では日経平均株価が292円高の1万688円をつけ、外国為替市場では円売り・ドル買いによって急激な円安があらわれている。東証の時価総額のうち、ヘッジファンドや海外投資家が占める割合は7割まで高まっているといわれている。サブプライムローン危機や欧州危機を経て行き場を失ったマネーが投機を目的にして日本市場に再び流入しはじめ、日銀が量的緩和でバラ撒くマネーを食い物にしていくことや、この間低迷していた株を買い上げて、今度は高値になった段階で売り抜けるという、破綻したマネーゲームの延長戦を懲りずに繰り広げている。
投機目的に日本市場に流入
日経平均は4日の東京市場で292円高の1万688円をつけた。「円安への期待」という格好で、輸出企業の株が主に買われた。解散総選挙で自民党政府が返り咲く過程で、紙屑同然だったシャープ株や、原発事故で同じく低迷していた東電株などが買いあさられていたのも特徴だった。輸出企業の多くは昨年から海外移転や国内労働者のリストラなどを敢行。こうしたお買い得と見なされた安い株を買い占めていたのがヘッジファンドで、散散空売りをしかけた後には、手のひらを返して買いに走っていた。そのため、衆院解散が決まってから日経平均株価は2000円近く上昇。ヘッジファンドに追随する形で、その後は海外の投資家や年金基金が買いに入っているとされている。
外国勢がこれだけ日本株を買い占めるのは、ウォール街が郵政選挙と小泉改革を大歓迎した2005年以来の出来事となった。底値で仕込んでおいて、高値で売り浴びせる手法は過去にも経験してきたことだ。
東京証券取引所が毎週まとめている投資部門別株式売買状況で明らかになっているだけでも、昨年11月以降に海外のヘッジファンドや投資家が買い越している金額だけで2兆円近くに達し、それが日経平均1万円突破の最大要因となっている。
また、株式市場だけでなく4日の外国為替市場での円相場は1時1j=88円台半ばまで下落。90円に迫る勢いを見せた。安倍政府が円高是正を打ち出しているのに加えて、「財政の崖」騒ぎをやってきた米国で量的緩和に早期打ち切り観測が浮上したことによって、米国で長期金利が急上昇し、そのことで円売り・ドル買いに拍車がかかったとされている。米国10年国債の長期金利が2%に迫った要因としては、リーマン・ショック以後、FRBが米国債などを大量購入する量的緩和を繰り返してきたものの、3日に発表されたFRBの委員会議事要旨のなかで、複数の委員が「量的緩和第三弾(QE3)を早く打ち切るべきだ」と見解を示していたことが明るみになったのがきっかけだった。市場では米国債の価格が下落すると見込んで米国債売りがあらわれ、その分利回りが上昇。日米間の状況を反映した「円安」となった。
国家破綻の危機も 国債も中央銀行が買い取り 近づく「限界」
サブプライムローンが破綻した後、2008年には米国を震源地にしたリーマン・ショックが起き、それが欧州ソブリン危機に飛び火するなかで、アメリカでは中央銀行にあたるFRB(米連邦準備制度理事会)が量的緩和を実施し、ジャブジャブのマネーを市場に供給。後は野となれのインフレ政策に走って、危機を先送りしてきた。おかげで米国金融市場や商品市場は説明がつかないほど高値の相場を維持してきた。
欧州でもECB(ヨーロッパ中央銀行)が南欧各国のジャンク国債を無制限に買いとると発表し倒産しかかっている欧州の大銀行が抱えているギリシャ、スペイン、ポルトガルといった破綻国家の国債を中央銀行が引き受け、紙屑を買い取る格好でマネーを供給し、ユーロ暴落をなんとか食い止めてきた。ドルやユーロを輪転機で大量に刷って金融市場にばらまき、その溢れかえったマネーで金融機関の焦げ付きを肩代わりして破綻を先送りしてきたにすぎない。
日本もこの国債バブルを真似して通貨を膨張させ、デフレ脱却というより将来的にはハイパーインフレすら起きかねないコースをたどろうとしている。自民党が「日銀法改正」を掲げているのも、大きくは金融統制に向かっていることをあらわしており、日銀をFRBやECBのような機関にするという狙いも含まれている。
さしあたり、安倍晋三が主張する「デフレ脱却」や「経済成長」を実現するためには、TPP参加や企業の海外移転・グローバル展開、さらに構造改革や規制緩和を徹底的に実行せよという論調がエコノミストや経済界、外資の共通した要求となっている。
アベノミクスとかかわって表舞台に登場してきたのが安倍内閣の内閣官房参与に就任したイェール大学の浜田宏一や、日銀の次期総裁候補にまで名前を連ね、再びテレビ番組に出演し始めた竹中平蔵、財務省のアメリカ代弁者といわれる武藤敏郎のような小泉改革の首謀者たちで、経済破綻を引き起こした原因である新自由主義改革を更に徹底する方向に進み始めている。今年からは復興所得税等の増税がはじまり、社会保障の切り捨てや国民負担の増大が次から次へと迫っている。このなかで一方では国債バブルによるゼネコン事業や金融市場へのバラマキが始まろうとしている。
ただ、「打ち出の小槌」のように取り沙汰されている国債発行も、度外れれば度外れるほど国家破綻につながっていくことは、欧州危機が示している。日本の国家債務は1100兆円にもなり、もはや大盤振舞する余裕などない。35兆円の国家債務でデフォルトしたギリシャの比ではない。ところが、世界有数の借金大国でありながら、お金がないなら刷ればいいというのがアベノミクスの特徴で、日銀の国債買い取りが取り沙汰されてきた。
米国や欧州各国と違って、これまで日本国債は国内の金融機関が預金者のお金を原資にして買い取ってきた。ゆうちょ資金などはその代表格だ。国民の金融資産といわれる約1400兆円に対して国債発行残高は1000兆円を超え、その九割を国内金融機関が人人の預金を使って買いとっている。銀行が買いとれるうちはまだしも、国民の個人金融資産も目減りしているなかで、いずれ限界が来ることは以前から指摘されてきた。国債の中央銀行買いとりがこの時期に出てきたことは、国内で消化できないこと、国民の金融資産をみな食いつぶして「限界」が近づいていることを示している。最近では外資も100兆円近く日本国債を購入しており、国債暴落局面を作り出して売り浴びせていくことすら懸念されている。
国債を大量に発行すれば、国の赤字、債務はさらに膨らんでいく。赤字が膨らみ続けて国債の信頼が失墜したときは、国債の買い手が見つからず、国債の長期金利が暴騰し、例えば1000兆円の国家債務に対する利払いが1%上昇しただけで年間10兆円の支払いが上乗せされ国家財政がパンクすることになりかねない。現実に、無制限の金融緩和を打ち出した安倍政府発足と歩調を合わせるかのように、日本国債の長期金利は上昇し始め、年末段階で30年物国債金利は1・98%にまで上昇し、2%台突破も視野に入れる動きを見せている。
この間、欧州危機で紙屑同然となったギリシャ国債などは八%台などを推移し、国家破綻で買い手が付かないために法外な利率を記録してきた。いざ買い手がついて国債を発行できても今度は高い利率のおかげで利払いに苦しみ、国家運営がままならない事態へと向かった。米国も欧州でも「国債バブル」で急場をしのいできた先進各国の国債金利が昨年末から上昇しはじめ、世界的に国債売りが顕在化している。そして一方では、理解し難い株高現象が起きている。実需にお構いなく、マネーが世界をさ迷っているのである。
実需伴わない金融博打 国民生活は窮乏化
国家債務を雪だるま式に膨らませてきた張本人である自民党が、再び借金によるゼネコン政治、バラマキを復活させるだけでなく、日銀のマネーを世界中に大盤振舞して、米国債を買いとったり、ヘッジファンドの食い物にさせる方向があらわれている。小泉改革によって空前の好景気といわれながら、国民生活は窮乏化したのと同じように、安倍バブルではしゃいでいるのももっぱら金融業界や輸出企業であり、実需が伴わない金融博打の世界が活況を呈している。
国の借金はさらに巨額なものになり、おかげで財政削減や福祉切り捨てが国民生活に背負わされ、遠慮のない消費増税がやられる。インフレ目標も物価だけが上がって賃金は上がらず、それどころか企業の海外移転によって雇用すら奪われる状況にますます拍車がかかろうとしている。
気狂い沙汰の金融緩和がいずれ破綻することは明らかである。最後の大散財・ニューディールをやった後、戦争に突っ込んでいったのが70年前の第2次世界大戦だった。最終的には第2次大戦後に「リセット」したのと同じように、戦争という非常時のどさくさに紛れて過酷なインフレによって国民の金融資産、銀行に預けている預金等を無価値にさせたり、預金封鎖や通貨切り下げ(デノミ)といった国による国民資産の巻き上げ(国家債務の帳消し)すらやりかねない情勢を物語っている。
世界資本主義の破綻のなかで経済のブロック化が台頭し、そのなかで日本社会を巡っては中国包囲網としてのTPP参加を米国から迫られ、対中戦争の鉄砲玉にされかねない緊張が高まっている。大恐慌が深刻になり、世界的な争奪戦が激化するなかで、アメリカを救うために日本を食い物にし、戦争の盾にするというものである。外資が食い物にするアベノミクス、日米軍事同盟の強化は切り離れたものではなく、資本主義の行き詰まりと戦争の危機に対して全国民的な斗争が迫られている。為政者に国民生活を心配する者など一人もおらず、人人はたたかわなければ生きていけないことを示している。
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