原発遠い再稼働 今秋再びゼロ 不要論拍車も
http://www.tokyo-np.co.jp/article/kakushin/list/CK2013011502000100.html
2013年1月15日 東京新聞[核心]
原子力規制委員会が原発再稼働の条件となる新しい安全基準を今年7月までに決める。だが、新基準ができても、再稼働はさらに先に延びそうだ。新基準を基に電力会社が補強工事を計画→規制委が計画を審査→工事に着手−というステップを踏まざるを得ないためで、今秋、再び「原発ゼロ」となるのは必至。何度も原発ゼロを繰り返すうちに「原発不要論」に一段と拍車がかかりそうだ。(加藤裕治)
◆半年超
「電力会社から申請があっても、3、4日でOKとはいかない。1基の審査に半年、1年はかかる」。規制委の田中俊一委員長は今年最初の9日の記者会見でこう語った。
田中氏が言う申請とは、原発の重要な設備に大幅に手を加える場合に不可欠な「変更申請」手続きのこと。
新基準では、1.電源喪失対策の強化 2.航空機が衝突しても安全を確保 3.テロ対策 4.格納容器のベント(排気)を迫られても、汚染蒸気を浄化してから排出するフィルターの設置─など数々の対策が求められそうだ。
一部の項目は完了するまでの猶予期間が設けられる見込みだが、再稼働のためには新基準の全てを満たすことが必須。電力会社は対策工事を規制委に申請し、ようやく工事に取りかかる。この時点で、すでに来年になっている見込み。
唯一稼働中の関西電力大飯原発(福井県おおい町)3、4号機も今年9月には定期検査に入り、再び原発ゼロになる。
◆難工事
新基準に基づく工事も難しく、大がかりなものになり、長期化が予想される。
ベントフィルターを設置するには、分厚い格納容器に穴を開ける非常に難しい工事が必要になる。航空機衝突対策では、原子炉からやや離れた場所に頑丈な建屋を建設し、制御室や非常用電源、原子炉の冷却装置を備えることが検討されている。
工事には1基当たり100億単位のカネがかかるとみられ、規制委の事務局職員からは「経済的に見合わないと判断し、再稼働を断念する電力会社もあるのではないか」との声も聞かれる。
新基準で再稼働のためには何が求められるかによって、電力会社の経営にも大きな影響が出る。このため規制委の新基準検討チームの会合には毎回、黒や紺のスーツ姿の電力会社の社員らが多数傍聴に詰め掛けている。
◆長期化
国内に50基ある商業用原発のうち、早めに審査が進みそうなのが、活断層などの問題を抱えていない九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)。それでも来夏前に対策工事まで完了するかどうかは微妙な状況だ。
その他の原発は審査に時間がかかる見込み。特に多数の活断層があると指摘される福井県・若狭湾の原発では、大規模な対策工事が必要になる可能性がある。
規制委は「国民の安全が最優先」との理念を掲げ、田中氏は3年以内に全原発の審査を終えるのは不可能との見通しを示している。原発ゼロ、動いてもわずかという状況は来夏を越えて長期化すると予測される。
関電のように、原発依存度が高い電力会社は今後、追加の電源確保を迫られるのは避けられず、コスト削減などの合理化努力も求められる。
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