靖国放火容疑の中国人、日本へ引き渡し拒絶 ソウル高裁[日経新聞]
2013/1/3 20:09 (2013/1/3 22:23更新)
【ソウル=小倉健太郎】靖国神社に放火した疑いがあり、韓国で拘束されていた中国人の劉強容疑者(38)の身柄について、ソウル高裁は3日、日本への引き渡しを拒否する判断を下した。日本は犯罪人引き渡し条約に基づき引き渡しを求めていたが、劉容疑者は同条約が送還の対象外と定める政治犯と認定した。改善基調にある日韓関係に水を差す可能性もある。
ソウル高裁は「政治犯の劉氏を日本に引き渡すのは韓国の政治秩序と憲法理念だけでなく、大多数の文明国家の普遍的価値を否認する」ことになると説明した。韓国法務省は近く同容疑者を釈放する。劉容疑者の弁護士によると、本人は中国に戻る意向を示しているという。日本は中国との間で犯罪人引き渡し条約を結んでおらず、今後は日本が劉容疑者の身柄を拘束するのは難しくなる。
劉容疑者は2012年1月に在韓日本大使館にも火炎瓶を投げ込み、この事件では韓国で有罪が確定、11月まで服役していた。その取り調べ過程で、11年12月の靖国神社放火も自供したため日本政府が引き渡しを要請し、韓国法務省は刑期終了に合わせ、身柄の扱いに関する審査をソウル高裁に請求していた。
韓国メディアによると、劉容疑者は韓国での裁判などで祖母が朝鮮半島出身で旧日本軍の従軍慰安婦だったと説明。日本が同問題に関する日韓協議を拒否したため腹を立てて靖国神社での犯行に及んだと話しているという。中国政府は同容疑者が政治犯だとして日本に引き渡さないよう求めていた。
◇
日本政府は3日、ソウル高裁の判断について、在韓国日本大使館を通じて韓国外交通商省に抗議した。日韓犯罪人引き渡し条約上、日本に引き渡すべきだと改めて要請した。
日韓関係は12年8月に李明博(イ・ミョンバク)大統領が島根県の竹島(韓国名・独島)に上陸したのを機に悪化。ただ、最近は両国とも指導者が交代するのを機に改善機運が浮上していた。4日には安倍晋三首相の特使として額賀福志郎元財務相が訪韓し、朴槿恵(パク・クンヘ)次期大統領と会談する。日本政府は劉容疑者の身柄引き渡しは引き続き求めていくが、日韓関係全体に影響することは避けたい考えだ。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM0302W_T00C13A1FF8000/?dg=1
首相「韓国は重要な隣国」 額賀特使と会談、関係改善に意欲
安倍晋三首相は1日、東京・富ケ谷の私邸で、首相特使として4日に訪韓する日韓議員連盟幹事長の額賀福志郎元財務相と会談し、昨年の李明博(イ・ミョンバク)大統領の竹島上陸以降、悪化した日韓関係の改善に意欲を示した。
首相親書を携え朴槿恵(パク・クンヘ)次期大統領と会談する額賀氏に「韓国は民主主義や市場主義などの価値観を共通する重要な隣国だ。両国新政権のスタートがいい船出になるようにしたい。しっかりと自分の思いを伝えて来てほしい」と伝えた。額賀氏も会談後、記者団に「若干ギクシャクした日韓関係を立て直すため、議員外交の立場からも環境を整備していきたい」と強調した。
額賀氏は先月21日の訪韓を予定したが、韓国側の態勢が整わず、先送りとなっていた。議連幹部の逢沢一郎元国会対策委員長、河村建夫選挙対策委員長も同行する。金星煥(キム・ソンファン)外交通商相とも会談予定。
[日経新聞1月3日朝刊P.2]