http://franceneko.cocolog-nifty.com/blog/2013/01/1228-17da.html
2013年1月 2日 フランスねこのNews Watching
新年あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い致します。
新しい年が皆様にとって平和で実り多き年となりますよう、謹んでお祈り申し上げます。
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
1979年のスリーマイル島原発事故の後にも、1986年に起きたチェルノブイリ原発事故の後ですら、このような言葉を聞くことはなかっただろう。原子力推進派の中でも最も強力な推進派関係者らが、長年数々の問題に目をつぶりながら守り続けてきた「非の打ち所の無い最高のエネルギー」原子力についての疑念を自ら語るまでに至るには、2011年3月の福島原発事故を待たねばならなかった。
ベルギー連邦原子力制御庁(以下「原子力庁」)の最高責任者ウィリー・ドゥ・ドーベレ長官はクリスマスの前日、12月末の退職を目前に次のように宣言した。
「私たちは、原子力の危険を知りつつもまだ受け入れることができるのかどうかを、自らに問わなければなりません。私の考えをそのまま正直に申し上げますと、原子力が持つ危険を考慮すれば、私なら別のエネルギー源を選びます。」
ベルギー国内の原子力分野における安全を所管する最高責任者はこのように述べた。
著名な原子力推進派による方向転換は、ベルギーのドーベレ長官に限った話ではない。ベルギーおよびドイツとともに原子力の廃止を予定するスイスでも、高い名声を誇る「スイス電力関連企業・原子力エンジニア協会」の元会長ジャック・ロニョン教授が2011年、
「原子力はもう信用しない」
と述べている。ロニョン教授は原子力発電について「あまりにも費用がかかり過ぎ、仕組みが複雑過ぎる。そして施設の周辺に住む住民からの理解を得るにはあまりにも問題が多すぎる」として、目覚ましい進歩をとげ既に確立されている地熱発電などの他の電力源の利用が可能であると指摘している。
フランスでも原発の安全神話は既に崩壊している。
「どんなに事故の予防策を取ったとしても、原発事故の可能性をぬぐい去ることは不可能です。」
仏原子力庁の最高責任者アンドレ・クロード・ラコステ長官は2012年1月、こう認めた。ラコステ長官の同僚の一人、フランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)のジャック・ルピュサール所長も又、
「福島原発事故が起きた以上、私たちには『想定外の事態』を想定する義務があります。」
と指摘する。
安全性の問題だけではない。「安い電力源」と謳われてきた原子力の発電費用についても、新たな安全規準を満たす必要性や長期的な費用の不透明性から疑問符がつけられている。多くの専門家は原子力を維持すれば原子力を廃止するよりも更に高い費用がかかると推定しており、原子力セクターの将来に対する疑念を背景に、スイスやアメリカ合衆国では原子力関連企業への就職を躊躇する若いエンジニアが増えている。
科学者たちはこれまで原子力を長期かつ大規模に推進してきた。しかしどんな科学理論も反論が不可能ということはあり得ない。原子力についても、他のエネルギーに対するのと同様の厳密さで、科学的・経済的観点から検討し直さなければならないのである。
(抜粋、一部編集)
●元の記事「疑惑の時を迎える原子力」ルモンド紙(12月28日)
(« Le nucléaire à l’heure du doute », Le Monde, 28.12.2012)