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2012/11/29 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
今月中旬、8日間にわたってイスラエル軍が展開したパレスチナ自治区ガザへの激しい攻撃。実は、イスラエルが立案中のイラン核施設空爆計画の予行演習だったことが分かった。
米国およびイスラエルの政府当局者が米紙ニューヨーク・タイムズに明らかにしたというのだ。
イスラエルのネタニヤフ首相は先の国連総会で核爆弾の図を示しながら「イランは来年春、遅くとも夏までに(核兵器製造の)最終段階に進む」と異例の演説をした。「イランが核兵器製造に十分な濃縮ウランを手にするのを防ぐ」と語った。
イスラエルはその後、国会を解散、来年1月22日の総選挙を決めた。ネタニヤフ首相はこれに勝利し、国民の支持を得て、対イラン武力行使も視野に入れる構えなのだ。
オバマ米大統領は「外交解決を」と対イラン制裁の国際協力を維持することでイランを締め上げてきた。が、それでも核開発を止められなかった場合、イスラエルが来年春から夏にかけてイランを空爆する可能性が高まっている。
ガザ攻撃の緒戦、イスラエルは戦闘機などでハマス軍事部門トップのジャバリ氏らを殺害したが、これは挑発だ。イスラエル側が今回試したのは2点。イランがガザ地区を支配するイスラム原理主義組織ハマスに供給している改造ロケット弾の精度とイスラエルの新型迎撃ミサイルの能力の見極めである。
8日間の戦闘の犠牲者はパレスチナ側168人、イスラエル側6人だったことからみて、結果は上々だったようだ。
しかし、本番がうまくいくとは限らない。
イスラエルがイラン核施設を空爆すれば、イラン側は(1)短距離ミサイル(2)レバノンに陣取るイスラム教シーア派組織ヒズボラからの中距離ロケット砲(3)イランからのシャハブ3中距離ミサイル――などで反撃する。これに対して、イスラエルは迎撃ミサイルを使うが、射程の違うミサイルに対応しなければならないからだ。
イスラエルの情報は、現実にはそれほど明確ではない。慎重な情報評価を求める意見が欧米の一部専門家から出ているが、天野之弥国際原子力機関(IAEA)事務局長までがなぜか、「イラン核開発は進んでおり、(経済制裁の)効果は見られない」とイスラエルを後押しするような発言をしている。
◇春名幹男 早大客員教授。1946年、京都市生まれ。大阪外大卒。共同通信ワシントン支局長、特別編集委員を経て現職。95年ボーン・上田記念国際記者賞受賞。「秘密のファイル―CIAの対日工作」など著書多数。