15. 2012年10月31日 10:32:55 : HNPlrBDYLM
現在の日本においては、新古典派経済学者たちが続々と「みんなの維新の会」側に集結しつつあり、「竹中氏が書いたんじゃないの?」という疑問を持っていたら、どうやら本当にそうだったらしい維新八策がオープンになりました。
民営化、規制緩和、自由貿易、地方主権的道州制、TPP、グローバリズム。
中央政府のあらゆる規制を排除し、政府機能を極小化せよ。
グローバリズムに基づき、モノの関税をゼロにし、サービスの輸出入を妨げる各国の社会制度、文化、伝統は「非関税障壁」として排除せよ。
当然、牛肉や遺伝子組み換え作物の輸出入を妨げている規制は撤廃し、「遺伝子組み換え作物」だからと言って、ビジネスに支障が出ないようにせよ(パッケージの表示を禁止せよ)。
国境を越えて、モノ、カネ、ヒトが自由自在に動き回るようにせよ。
公的サービスを民間に開放し、株式会社化せよ。教育も株式会社化し、「株主利益」のための教育を可能にせよ。電力も自由化せよ。
社会保障は大きな政府の典型なので、負の所得税法式のベーシック・インカムにせよ。
混合診療を認め、いずれは全てを自由診療にせよ。
公的保険サービスは「ムダ」の極致なので縮小し、代わりに民間の医療保険サービスが自由にビジネスができるようにせよ。
法人税と富裕層の所得税を減税せよ。結果的に預金が増え、金利が下がり、企業の投資が増えることで国民全体が潤う「はず」だ(トリクルダウン理論)。
公共事業や国債発行は可能な限り減らせ。国債発行をすると金利が上がり、民間が金を借りられなくなり、投資が減る(クラウディングアウト)。しかも、国債発行による金利上昇は通貨高をもたらし、輸出が減るので財政出動分の需要はキャンセルされる。どうしても公共事業をやりたいならば、民間の投資会社主体でやらせ、政府は「利用料」を支払う形にせよ。
失業者は自発的失業者か、職種のミスマッチがあるだけだ。自由貿易や規制緩和で失業者が出ても、彼らは「瞬時に」別の職に就けるから問題ない。つけないとしたら、失業者の能力が足りないというわけで、まさに自己責任だ。
上記を全て実現すれば、グローバルに株主利益を最大化できるじゃないか。
何か問題あるか?
ものすご〜くグロテスクに書くと、新古典派の政策は上記のイメージになります。現実には、
「デフレで物価が下落して困っているときに、規制緩和や自由貿易で競争を激化させ、さらに物価を押し下げてどうするの?」
「スペインやギリシャの失業率は25%超えているけど、これもやっぱり自発的失業か、職種のミスマッチとやらなの?」
「法人税引き下げても、企業は銀行預金を増やすだけじゃないの? 法人税引き下げていない状況でも、日本では企業の銀行預金がひたすら増えているけど?」
「日本は95年以降、政府の負債(国債など)が二倍以上になっているけど、金利は三分の一未満に落ち込んだよ。クラウディングアウトはどこにいったの?」
「デフレだと国債発行や財政出動と関係なく円高になり、どっちにしても輸出減らない?」
「政策金利がゼロで、長期金利が0.8%未満でも企業は投資しないよ。富裕層に減税して、法人税引き下げて、なぜ投資が増えると断言できるの? それ以前に、日本はすでにして銀行が過剰貯蓄状態だよ。だから金利が低いわけだけど、投資増えていないじゃん」
「エネルギーとか教育とか、国家の根幹にかかわる部分を『株式会社』化して、本当にいいの? 政府って曲がりなりにも『主権者』である国民の投票により成立しているけど、株式会社化すると国民主権が歪められない?」
などなど、「絶対それ、違うだろ〜っ!!!」 と言いたくなる政策のオンパレードです。無論、インフレ期にはクラウディングアウトやトリクルダウンも成立する「かも」知れませんが、デフレ期にはどちらにせよ不成立です。
すなわち、新古典派経済学者や新自由主義者たちは、現実の日本を見ていません。彼らが見ているのは、机上の「経済の教科書」だけなのです。
机上の教科書に沿った「間違った政策」が行われているのは、別に日本に限らず、世界の主要国の多くがこの罠にはまっています。結果、フランスでは明確な対立軸で選挙が行われ、日本もこのままいけば、どうやら「新古典派」対「実践主義」の戦いになりそうです。現在の与党は、両者の間で埋没して消滅してしまうでしょう(というか、そうしなければなりません)
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