尖閣諸島は日本の実効支配、竹島は韓国の実行支配、ちょうど表と裏の様相である。よくよく考えると、中国や韓国が領土であると主張する根拠について、ほとんど知識がなかった。日本は明治維新でいち早く産業を興し、軍備を固め、西洋列強と伍し、台湾を日本領とし、韓国を併合したがゆえに、19世紀後半から20世紀前半にかけて、中国や韓国に領土問題でとやかく言われることはあり得なかった。これが日本の領土問題での多くの日本人の(私もそうだが)なんとなくの基本認識になっている。
しかしながら、第二次世界大戦で連合国に降伏し、戦後アメリカ軍が進駐し、GHQの統治が1945年から1952年のサンフランシスコ講和条約の発効まで続き、日本が主権を回復したのは講和条約の発効以降である。1945年の日本の降伏では、中国は戦勝国であり、韓国は即座に独立を果たした。降伏したことで、19世紀後半から20世紀前半にかけての日本優位の状況は崩れたと言える。ということは、中国と韓国の領土問題に対する根拠は江戸時代以前の話を持ち出してもおかしくはないわけである。
尖閣諸島が中国領土であるとの根拠は、15世紀から中国の文献に釣魚島としてあらわれているし、古代から海流の関係で沖縄諸島から尖閣諸島に到達するのは難しいのに対して、台湾の漁民は魚が豊富である釣魚島に頻繁に行っていた。また、日本の台湾統治時代は、尖閣諸島は台湾の管轄であったことも根拠の一つとしている。日本としても反論はたくさんあるが、戦勝国である中国が主張することある意味当然ともいえる。
一方、韓国は日本降伏後、日本が放棄する地域に竹島を入れるよう連合国へ要求したが、認められなかった。しかし、1952年4月のサンフランシスコ講和条約の発効直前の1月に竹島を実行支配。アメリカはこの韓国による竹島の実行支配をあえて止めなかった。1954年アメリカも竹島問題は国際司法裁判所を通じて解決されることが望まれると非公式に韓国に伝達したとされる。アメリカはどちら側の肩も持たず、領土紛争問題の決着をつけず、そのまま存続させた方が都合がよいと判断したとしか思えない。
日本としてはまだ自衛隊が組織される前なので、アメリカに頼るしかなかった。自衛隊成立以前のできごとである。あったとしても、実効支配を止めることができたがどうかわからないが…
1950年の朝鮮戦争勃発時、GHQのポツダム政令により警察予備隊を組織。
旧海軍の残余部隊は海上保安庁を経て海上警備隊、後、警備隊として再編。
1952年警察予備隊と警備隊の2つ統合し、保安庁設置、警察予備隊は保安隊に改組。
1954年に自衛隊法が施行され、陸海空の自衛隊が成立。
もし日本が逆の立場であれば、当然中国と韓国がとっている行動に出てもおかしくないのかもしれない。竹島では江戸時代に両国の漁民が遭遇したことから事件となっているが、現在の様な領土問題としての紛争はなかった。幕府は紛争を避けるために漁民が竹島に行くことを禁止している。明治以降の国家定義が今の領土問題の発生につながっていると言っても過言ではない。近代以前(日本では江戸時代以前)は勢いのある方が支配するのが当たり前であった。
言いたいことは、この領土問題については相手の言い分を問答無用で否定すれば、害こそあれ、交渉ごとに何の益もなく、解決の糸口すら見つからない。従って、日本人はもっとこの問題を冷静に理解し、有利に交渉を進めた方が得策なのではないかと思うわけである。
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