9月13日【内容起こし】小出裕章氏:日本学術会議の高レベル放射性廃棄物処理方法の提言と福島第一原発の失われゆく温度計について@たね蒔きジャーナル
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2012年09月13日23:25 ぼちぼちいこか。。。
20120913 たね蒔きジャーナル 京都大学原子炉実験所助教 小出裕章
【以下、お時間の無い方のために内容を起こしています。ご参考まで】
(千葉氏)今日は毎日新聞論説員の池田あきらさんと一緒に伺います。
まず最初の質問なんですけれども、こんなニュースが伝わっております。
日本学術会議が、今政府が考えている300m以上の地下深くに原発から出る高レベル放射性廃棄物を埋めるという最終処分法は、火山活動が活発な日本では難しいとして、白紙に戻して考え直すよう提言したということなんですけれども、これを小出さんはどう思われますか?
(小出氏)当たり前のことをようやくにして学術会議が言いだしたということだと思いますが、あまりにも遅すぎる・・・と私は思います。
日本の学問を背負ってきた人たちが、これまで原子力のゴミの始末の仕方に関して、何も発言もしないまま、むしろ容認を続けてきたということなわけで、今になっていってくださるのはありがたいけれど、なんで今まで黙っていたのかと私は思います。
(池田論説員)従来から小出さんはおっしゃってましたよね。それが「今になって」ってね・・・。
(小出氏)はい。もう何十年も前からこの問題があるということは、誰の眼にも明らかだったし、日本というような世界一の地震国に放射能のゴミを埋め捨てにできる場所なんていうものはないと私はもちろん思ってきましたし、普通の常識のある方ならどなたでもそう思わなければいけなかったのですが、日本の原子力を進めている人たちは、遮二無二「いや、できる、できる」と言って、今日まで来てしまいました。
(池田論説員)「学術会議が今になってなぜ?」って思われますか?
(小出氏)思います。一体なん・・・この人たちは何なんだろう?と、大変私としては悲しいですけれども、まぁ・・・思ったことは『善は急げ』で、言ってくださったことはもちろん良いことだとは思いますけれども、「なんで今か?」という思いはぬぐえずに残ります。
(千葉氏)あの、今世界中見渡してみても、最終処分法として安全性が確立されたものは無いんですよね?
(小出氏)何一つありません。
(千葉氏)うーん・・・。あの、今回学術会議はですね、
『いつでも廃棄物を取り出せる施設を作って、数十年から数百年を目安に、【一時的に】保管すること』
を提言したということなんですけれども、この保管だけでも簡単にできることじゃないですよね?
(小出氏)もちろん、とてつもなく難しいです。
ただ、今日学術会議が言ったことは、私がもう何十年も言い続けてきたことです。地下に埋め捨てにすることは許せないことなので、とにかく私たちの目の黒い場所で保管し続けるしかやり方がないと、私も言ってきました。
ただし、それ自身が何百年で終えることができるのか、何千年やらなければいけないのか、それすら私にも判らないのです。
(池田論説員)これ、あれですか?これを【一時的】って言えるんですかね?
(小出氏)全く無意味な言い方だと私は思います。
これまでも原子力発電をやることによってでるゴミというのは、たくさんありまして、今学術会議が言いだしたのは、『高レベル放射性廃棄物』というものですけれども、そのほかにも膨大な体積の『低レベル放射性廃棄物』というのが毎日毎日生み出されてきて、それは青森県の六ヶ所村に全て押し付けられることになってきました。
既に20万本を越えるドラム缶が六ヶ所村に埋め捨てにされてしまいましたが、それが「管理を続けていって、管理をしなくてもいいという日は300年後に来る」と日本の政府は言ってきました。
しかし、300年後って私は死んでいますし、原子力を進めてきた人たちもみんな死んでいますし、多分自民党も民主党もありません。
そんな時まで一体誰がどういう責任で面倒を見ることができるのか、私にはそれすらが判らないできました。
ましてや高レベルの放射性廃棄物というのは、10万年、100万年という長い間に渡って隔離をしなければいけないゴミなのであって、そんなものを一体誰がどういう権限で生み出すことができるのか、それがまずは私は不思議です。
(千葉氏)でも、今もうまさに高レベル放射性廃棄物っていうのはあるんですよね?
(小出氏)そうです。広島原爆がばら撒いた核分裂生成物に比べると、120万発分を既に生み出してしまって、それがあります。
(千葉氏)それは今、どうやって管理されているんですか?
(小出氏)一部は原子力発電所の使用済燃料プールの底に沈んだままになっています。それは東京電力の福島第一原発も同じでした。
一部は六ケ所村の再処理工場に3000トンという燃料プールを作って、そこの底に沈めてあります。
一部はイギリスとフランスの再処理工場に送ってしまって、そこで再処理という作業をしてガラス固化になった形でまだ残っています。いずれ全てが日本に戻ってきます。
(池田論説員)そうですね、最近のニュースでも、イギリスとフランスが高レベルの廃棄物を引き取れと言ってましたね。
(小出氏)当然のことですね。契約してありますし。
(千葉氏)でも、まぁプールの中にいつまでも入れておくわけにもいかないだろうし、そのガラス固化体の状況になったものも、そのまま野ざらしにしておくわけにもいかないということを考えると、学術会議はですね、
『10万年単位で安全に保管できる容器の開発』
っていうのを提言してるんですけど、10万年前っていうと旧石器時代、日本にナウマンゾウが住んでいた時代なんですけれども<苦笑>、今の科学技術ではそんなことできる・・・可能性ってあるんですかね?
(小出氏)ありません。
(千葉氏)ないですよね?
(小出氏)はい。
(千葉氏)はぁ・・・。
(小出氏)明確にありません。
(千葉氏)ないですよね。っていうことは、『最終処分地というのは、この高レベルの放射線廃棄物と10万年お付き合いしなさいという土地を選ぶ』ということなんですよね。
(小出氏)そうです。日本というこの国でも、原子力安全保安院という組織がですね、その埋め捨てにする場所をこれまで20年近く探し求めてきました。
「調査をさせてくれれば20億円やるぞ」
と金をちらつかせて、候補地を探し求めてきたのですが、流石にこれに関してはどこの自治体も「うん」と言いませんでした。
そのためとうとうこの日本という国は、高レベル放射性廃棄物をモンゴルに捨てに行くという、そういう案まで出すようになっています。
(千葉氏)うーん・・・。今回日本学術会議は、最終処分法で深い土の中に埋めるというのは考え直すようにと言ってますけど、今のような10万年単位で安全に保管できるような容器の開発とか言ってるということを考えると、結論の先延ばしが意図なのかなと思えなくもないんですが。
(小出氏)そうですね。要するに、私も大変申し訳ありませんが、私にしてもどうしていいか判らないのです。
学術会議というのは、日本の学者のトップの組織ですけれども、そこに居る人たちですら、どうしていいか全く判らない課題なのです。
でも、全く判らないということは、私自身何十年も前から判っていましたし、学術会議は当然判らなければいけなかったのですが、今の今まで何も言わないまま、原子力のやりたい放題にさせてきたんですね。学術会議も含めて。
(千葉氏)今回、学術会がもう一つ驚くこととして、
『総量規制、つまり原発から出る廃棄物の量の上限を決めよう』
と提言してるわけですが、ということは、今までは処分法も決まってないけれども、廃棄物はどんどん出していいという、出し放題の状態だったわけですか?
(小出氏)そうです。原子力をやり始めた当時から、原子力はトイレの無いマンションだと言われていたわけで、みんなが知っていました。ゴミの始末ができないということは。
それでも、「いつかなんとかなるだろう」という期待の元にここまで来てしまったのです。
日本というこの国では、まだ原子力発電所の再稼働なんていうことを言ってるわけですし、「2030年に何パーセントだ」なんていう議論をしてるわけですけれども、やればやるだけ、自分で始末のできないゴミが溜まってきてしまいます。
(千葉氏)うーん・・・。わかりました。
もう一問質問させてください。
東京新聞の伝えるところですと、福島第一原発の原子炉内を監視する機械が、今次々と壊れているといったような情報がありまして、まず2号機の原子炉の底にある温度計が4つのうち3つ壊れて、残り一つとなっているようなんですけれども、これが壊れると原子炉の底の温度は測れなくなりますけれども、これによってどんなことが起きる可能性があるんですかね?
(小出氏)原子炉の圧力容器の底には、確か4つ、そのまた上部にまた4つくらいずつ、何段階かについているはずですけれども、一番底部の温度計の温度を測ることによって、溶けてしまった炉心がどこにあるのか、或いは再臨界という現象が起きているのかどうなのかということの目安にしてこようとしてきました。
それが次々と壊れていってしまっているということですから、大変、これから難しい状況になるだろうなと私は思います。
ただし、もともと彼ら自身はこんな事故が起きるとは思っていなかったわけですし、圧力容器の底にあった温度計も、もともとこんなこと・・・こういう事故の時の原子炉の状況を知るために設置していたわけではなくて、通常運転時の情報を得るためだったのですね。
それが曲りなりにあったからといって、今の事故の現在の状況を知るために使っているわけですけれども、もともと目的があってそこにあったわけではありませんし、もともと不十分な情報しかくれませんでした。
それすらがこれからどんどん奪われていくということになるわけで、事故の収束というのがますます難しくなっていくことになりますし、でも避けられないことです。機械は必ず壊れます。
(池田論説員)この温度計の修復、修理はできないんでしょうか?
(小出氏)多分できないです。ですから、新しいものをまた差し込んでみるということはできるかもしれませんが、圧力容器にぴったりとくっつけるということも多分至難の業だと思います。
(千葉氏)うーん・・・。じゃあ修復は不可能ということになると、本当に限られたデータの中で推測でこれからはいろんなことを進めていかなきゃいけないということになる・・・
(小出氏)「これからは」というか、今までも推測でやってきたんですね。もともと事故の情報をきっちりと知れるような測定器は無かったわけで、たまたまある測定器の情報から、何とか推測しようとしてこれまでも来たわけですし、これからはまたその貴重な情報の一つが奪われていくということになると思います。
次々と奪われていきます。
(千葉氏)うーん・・・・・
判りました、小出さん、どうもありがとうございました。
(小出氏)ありがとうございました。
【以上】
【参考記事】
核のごみ 地中廃棄「白紙に」 学術会議 原子力委へ提言
東京新聞 2012年9月11日 夕刊
地中深くで最終処分するとしながら、原発で使った核燃料から出る高レベル放射性廃棄物の行き先は一向に決まらない。打開策を検討していた日本学術会議(会長・大西隆東大大学院教授)は11日、地中深くに埋める国の最終処分計画は安全とは言えないとし、処分に関する政策の白紙見直しを求める提言をまとめ、原子力委員会に提出した。
使用済み核燃料を再処理した後に出る高レベル放射性廃棄物は、毎時1500シーベルト(150万ミリシーベルト)と人がわずか20秒で死に至る放射線を放つ。国は2000年、廃棄物をガラスで固め、地下300メートル以上の地層に埋める「地層処分」とするよう関連法で決めたが、処分地は白紙のままだ。
今回の提言は、原子力委から打開の糸口を見つけてほしいと要請された学術会議が、原子力工学や地質学、歴史、社会、経済など各分野の研究者で検討委をつくり、2年がかりで検討してきた。
提言は、地震や火山活動が活発な日本列島で、万年単位で安定した地層を見つけるのは難しいと指摘。
処分場が決まらない理由は、どれくらいの量の核のごみなら受容できるか社会的な合意がないまま、一部の関係者で原発の稼働、そこから出る核のごみの処分といった方針を決定してきたことにあると批判。交付金などのお金で処分地を決めようとする方針は、「かえって問題を深刻化させる」と根源的な問題があると指摘した。その上で、「政策をいったん白紙に戻す覚悟で見直すべきだ」と結論付けた。
安全な処分方法が見つかるまでの数十〜数百年の間は、地中深くではなく、いつでも移送できる形で暫定的に保管するよう提言。保管を担う地域には交付金などで無理やり納得させるのではなく、保管地に政府機能の一部を移転して安全性への信頼を得るべきだと訴えた。
ただ、提言内容の通り、将来に安全な処分方法が確実に見つかる保証はない上、暫定的に保管といっても、事実上の最終処分になってしまわないか、地域の懸念をなくすのは難しい。提言の実効性には疑問があり、核のごみの根源的な問題点を見せつけた。 (榊原智康)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2012091102000233.html
【日本学術会議HPより】原文
高レベル放射性廃棄物の処分について
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-22-k159-1.pdf