ドタバタ劇 迷作「近いうち」
http://www.olive-x.com/news_ex/newsdisp.php?n=130543
2012/08/11 18:30 徳山 勝 olivenews
来年の大学入試には、“「近いうち」と「近い将来」の違いについて述べよ”との出題がありそうだ。それにしても、昨日まで「消費税増税」で民主党と組んでいた自民党が突然、野田内閣を「不信任だ」「問責だ」と言い出した。そして「近い将来」が「近いうち」に変わったら、消費税増税法案に賛成すると言う。それだけではなく、不信任決議案の採決には欠席するが、野田内閣を信任している訳ではないと言う。
一体、何がどうなったのかさっぱり分からない。そう云う人が多いことだろう。それもこれも、マスコミ報道が野党6党(参院は7会派)の動きを正しく報道しなかったと言うか、隠すようにしか報道しなかったからである。全く国民を愚弄する政局遊びなのだが、マスコミは何も批判しない。ここで何が起こったかを、今一度整理する。
先ず、参院特別委員会で審議中の「税と社会保障一体改革」に関し、小泉進一郎議員が3党合意の破棄を谷垣総裁に直訴した。自民党内にある「野党が解散権を握る政局なんて滅多にない。消費税増税法案を人質にして、不信任案を出してでも、解散に追い込める」との強い意見が、その背景にある。その強い意見の根拠は、今、選挙をすれば、自民党は過半数に迫る220議席以上獲得との選挙情勢調査の結果のようだ。
当初、充分な審議を尽くすと言って、8月20日ころ特別委員会での採決をする予定だった野田内閣は、自民党の強硬意見に慌て、法案採決を8日にすると議員運営委員会で取り決めた。そこで法案に反対する自公を除く参院野党7会派が、7日夕、野田首相に対する問責決議案を参院に、衆院野党6党が不信任決議案を衆院に提出した。この不信任決議案に、今度は同じ野党の自民党がどう対処するか慌てた訳である。
前回も書いたように、大増税を実施して歴史に残る大宰相を夢見る野田首相。消費税増税という甘い果実を得て、政権党に返り咲く夢を追う自民党谷垣総裁。二人には早期解散回避と早期解散要求という違いはあるが、財務相経験者で財務省に洗脳され、「増税法案だけは何としても成立させる」という思いだけは一致している。処が、野党6党が不信任決議案を衆院に提出する事態は想定していなかったのだろう。
そこで慌てた自民党執行部は、内部からの突き上げもあり、突如として野田内閣「不信任」「問責」と言い出した。新聞の見出ししか読まない人は、野党6党が不信任決議案を提出した事実を見落としているから、何が起こったのか分からない。民主党内から造反者が24名でない限り不信任決議案は成立しない。だからデンと構えておればいい野田内閣なのだが、3党談合の前提が崩れかかったので慌てだしたのだ。
今回のドタバタ劇は、どう考えてもおかしいだろう。自民党は、3党合意では社会保障について全て国民会議に先送りさせるという譲歩を得て、消費税増税に加担した。処が、解散総選挙を急ぐあまり、増税法案を潰す気もないのに、「不信任」「問責」を言い出した。挙句の果て、「近い将来」が「近いうち」と替わっただけで、解散の確約もなしに、法案成立で野田内閣に協力することになった。「腰砕け」である。
マスコミは、解散時期が「近い将来」から「近いうち」になったと騒ぐが、何がどう違うのだろう。それよりこの言葉の言い換えは、首相の専権事項である解散権を、内閣不信任案や問責決議案の否決との取引に使ったものだとして、マスコミはその密室談合政治を指摘し、批判するべきだ。それがジャーナリズムである。民主党輿石幹事長は「近いうち」にこだわる必要はないと言っているが、当にその通りなのである。
内閣不信任決議案は、理由は何であれ、一国会で一回しか提出できない。しかも自民党は、消費税増税法案成立後に内閣不信任案を提出すると予て公言していた。それならば、どのような理由であろうとも不信任決議案に賛成するのが野党第1党として、自民党がとるべき態度である。そもそも法案成立後に不信任決議案が提出ということ自体が自民党の党利党略。彼らに国民の生活を負託する訳にいかない理由である。
10日に衆院に提出された野田内閣不信任決議案の採決に自公両党は欠席した。正確に言うと、自民党から7名の議員が出席し不信任決議案に賛成投票したのだが、何と強弁しようとも、決議案に賛成すべき野党議員の棄権は、支持率22%の野田内閣を信任したと見做される。そのような政党・政治家を国民は支持するのかと問いたい。
そして10日参院で消費税増税法案が、民・自・公3党によって賛成可決された。だが、参院民主党・予算特別委員会の櫻田議員が認め、批判しているように、「消費税増税法案」の【中身】の議論はまだ不十分であったのだ。11日の朝刊には、尤もらしい改革案が書いてあるが、よく見ると分るが一体改革にほど遠い内容である。