株式日記と経済展望
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反省すべきは日本人ではなく、商業用原子炉を開発した米GE社や米WH社
であり、その根底となっていた安全思想や安全設計に重大な落ち度があった
2012年8月1日 水曜日
◆国会事故調の報告書は「原発の安全」に何の役にも立たない 7月23日 大前研一
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20120723/316908/?ST=business&P=1
究極の事故原因は外部電源がすべて崩壊したことだ
報告書は、現場にいた作業員が地震発生後、津波が来るまでの間に「ゴーッという音」を聞いたと言っている、などを根拠に、1号機が地震によって破損してなかったとは言い切れないと指摘している。
しかし、地震発生から津波到達までの45分間は(非常用)電源が生きていたのでメーターの記録がある。それを見ると配管破断を示すような圧力ロスなどは観察されていない。
すでに本連載で紹介した私のH2O報告や今週発売される『原発再稼働「最後の条件」:「福島第一」事故検証プロジェクト 最終報告書』(小学館)でも述べているように、1号機は地震で配管破断などの損傷を負っていなかったというのが実情だ。
結局、最低限調べればわかるような事実すら検証せずにまとめているのが、国会事故調の報告書なのである。事故には物理的な原因があり、人や組織はそれを防げなかった追加的な原因である。解決あるいは再発防止のためには、まず物理的な事故原因を特定しないといけない。
福島第一原発事故を防げなかったのは外部電源がすべて崩壊したからである。原子炉の場合、外部電源がすべて失われると非常用電源が起動するが、1〜4号機に関しては非常用電源も津波ですべて失われた。しかし外部電源が一系統でも生き残っていれば(空冷の非常用ディーゼル発電機が1機だけ生きていた)5〜6号機のように冷温停止まで持ち込めた可能性が大きい。
つまり究極の事故原因は外部電源がすべて崩壊したことであり、それに対する対策を打ってこなかったのは原子力安全委員会の「外部電源の長期喪失は考えなくてもいい」という指針があったからである。
日本の場合、「送電線が弱い」という前提を置かなくてはいけない。私はこれに関しては柏崎刈羽の事故の時にも本連載で指摘している。(中略)
「原子炉をより安全なものにしたい」という願いが読みとれない
黒川氏は、日本人に対する個人的偏見で報告書をまとめただけでなく、幼稚な報告書を公表することで世界に対して恥をさらしたのである。
現に海外の論調は「この事故を日本独特の文化が原因」とすることは不毛な議論であり、対策も再発防止にも役に立たない、と批判的である。なぜなら世界中を震撼させた福島第一の事故からの教訓を生かし、「原子炉をより安全なものにしたい」という願いは、すくなくともこの報告書からは読みとれないからだ。
多くの国は福島第一の後、原発に対して批判的な世論が増えている。それを防ぐためにも日本がしっかり分析し、役に立つ再発防止策を提示してくれないと困る。
上述の拙著では事故の物理的な分析から再発防止のための物理的な提案をしている。つまり世界中の原子炉の設計者とオペレーターが考えても見なかった現象が、実は簡単に起り、極めて深刻な事態に至るのだ、ということを指摘している。
つまり反省すべきは日本人ではなく、そもそも商業用原子炉を開発した米GE(ゼネラル・エレクトリック)社や米ウェスティングハウス・エレクトリック社であり、その根底となっていた安全思想や安全設計に重大な落ち度があった、ということである。
組織や人の問題は設計段階の重大な欠陥を乗り越える力がなかった、という点で確かに問題ではあるが、それは本質ではない。そのことを突きつめていけば、東電の問題というよりは設計者の問題であり、その設計段階における重大な瑕疵を見抜けなかった世界中の規制当局の問題でもある。(後略)
(私のコメント)
原発再稼働反対デモは、毎週金曜日に国会前で行われていますが、私自身は原発には条件付き賛成派になります。一基当たり5000億円以上もする原発を作ってしまって、まだ使えるにもかかわらず廃炉にするのはもったいないのではないかと思う。既に40年以上が経過した老朽化した原発は廃炉にすべきなのでしょうが、使える原発は安全性を高めて使うべきだろう。
大前研一氏が国会の事故調の報告書を批判していますが、事故を起こした根本原因は「そもそも商業用原子炉を開発した米GE(ゼネラル・エレクトリック)社や米ウェスティングハウス・エレクトリック社であり、その根底となっていた安全思想や安全設計に重大な落ち度があった、ということである。」と指摘しています。
非常用発電機が水冷なら海に面したところに作る必要がありますが、空冷の非常用発電機が高台にあれば5号機6億号機のように安全に停止できただろう。このような安全対策がなかったからメルトダウンまで行ってしまいましたが、全電源喪失という事態を想定していなかったことが致命傷になった。日本の送電もは非常に細くて脆いものであり、各地の電力会社間の電力融通体制も十分ではない。
高圧送電線も鉄塔を並べて送電していますが、安全性を考えれば地中送電線もカストがかかるが建設すべきだろう。福島第二原発も同じような地震と津波に襲われましたが、非常用発電機が一機使えたために最悪の事態は防げた。壊れた発電機も急遽交換して使えるようになり福島第一の二の舞は防げた。福島第一は悪い条件が重なり、その僅かな差が大事故まで行ってしまった。
福島第一原発の現場では、非常用自家発電機の問題を指摘する人もいたのですが、原発安全神話が一人歩きをしてしまって東電の上層部には届かなかった。大前氏が指摘するように全電源喪失という事態に対する対策が取られなかったことが一番の原因であり、地震や津波自体は原子炉本体には影響をもたらしてはいない。急遽移動電源車を持ち込んでも配電盤が水没してしまったらどうにもならない。
福島第一と福島第二の安全対策の差は僅かであり、一部の非常用発電機が水没をまぬがれたことであり、女川原発も一部の電源が生きていたから停止ができた。だから地震や津波で周辺設備が壊れたり使えなくなったことが一番の原因であり、これは柏崎原発が地震で受けた被害も周辺設備の脆弱さが問題になっていた。
反原発派の人にとってみれば、今回の原発事故の恐ろしさをアピールする絶好のチャンスでもあるのでしょうが、全停電事故を想定していれば防げた人災だろう。しかし使用済み核燃料などの問題を考えれば原発は限界に来ており、特に軽水炉型の原発は今回の原発事故によって危険性が明らかになった。最終的には自然停止するような原発に作り変えるべきであり、地下深くに作って最悪の場合でも水没させればいいような場所につくるべきだろう。
以前に書いたように日本人は極端から極端に走る傾向が有り、冷静さを失わずに感情的な扇動に惑わされないことが大切だ。先日も書いたように原発は止めたところで100%安全になるわけではない。原子炉建家の中には使用済み燃料棒が1000本以上も入っており、常に冷却水を循環させていなければならない。この使用済み燃料棒が処分できなければ100%安全にはならない。しかしその方法が見つからない。
さらに非常事態が起きた時の政府の対応は最悪であり、SPEEDIや米軍が測った実測値も隠蔽して周辺住民を見殺しにしてしまったことだ。東京都から消防車を派遣しても追い返されたり、現場の対応も混乱を極めた。水素爆発が次々と起きて最悪の状況になりましたが、当時の現場の状況や政府官邸がどのように対応したのか公開されていないのは自己原因究明の大きな妨げになっている。
日本は原子力発電の専門家が山のようにいるはずなのですが、多くの人が沈黙を保っているのが不可解でならない。おそらく政府から緘口令が敷かれているのでしょうが、大前氏は元原子力技術者として発言している。メーカーである日立から見れば東京電力は殿様であり、地域独占経営で殿様商売をしている。それが今回の事故原因にもつながっているのですが、政府は今後のエネルギー政策をどのように考えているのだろうか。