02. 2012年3月16日 00:01:27 : 3CNLte9sGM
小笠原誠治の経済ニュースに異議あり! トップ |
中国の地上げ物語
2012/03/08 (木) 11:22
経済成長のスピードが落ちていることに多くの人が不満を抱いています。名目GDPがもう長い間
増えていないではないか、と。給料が増えないどころか減っているではないか、と。
インフレを起こして景気を良くして欲しいと願い人は、バブルの頃を忘れられないのかもしれません。確かにあのころの日本は勢いがあった。怖いものしらず。
では、昔はいいことだらけだったのか?
しかし、幾ら経済成長率が高くても、公害が起これば我々人間の生命まで危険にさらされてしまうのです。それに、バブルの頃は地上げなどというものが流行り、お札でほっぺたを叩くような行為がまかり取っていたのです。
多分、バブルの夢をもう一度と願う人は、そんなこと忘れているに違いないのです。
いずれにしても、高度成長には土地の価格上昇がつきものであり、今、中国でも地上げが起きているのだとか。しかも、日本顔負けの暴力団まで登場するのだ、と。
中国の温家宝首相は、全人代でこんなことを言っているのです。
We will work harder to build clean government. We will fight corruption and give a high priority to solving serious problems that the people are resentful about.
「我々は、クリーンな政府にするために一生懸命働く。我々は、腐敗に立ち向かい、人々が憤っている諸問題を解決することを優先させたい」
温家宝首相のいう腐敗とは一体何なのか? 本日は、そのことを考えてみたいと思うのです。
以下、BBCのサイトが報じる内容を、分かりやすい日本語でまとめてみました。
タンは憤っている。彼は一農夫であり、パートで働く溶接工でもある。彼の一家は、小さな土地を保有していて、小麦や果物を栽培していた。
彼は、地方の共産党幹部と争いになっている。彼らが土地を奪おうとするからだ。彼らは、付近一帯の土地を買占め、新しい商業地区を建設しようとしている。
現地の共産党関係者と警察は、タンが事件を公表しないように望んでいる。しかし、タンは、彼の家族が共産党関係者に抵抗したときに受けた被害に憤り、事実を録画しようと決意した。そして、BBCの記者に伝えようとしたのだ。
録画の内容は、暗がりの映像で始まる。小さな銀色の車が映っているが、窓が粉々に割られている。次に、地面に倒れ呻いている老人を映し出す。その老人は、タンの父であり、その隣にはタンの兄も倒れていた。
「父と兄は、土地を守ろうとして、門のところで番をしていたのだ」とタンは言う。「昨年の11月5日の夜のことだ。地元の共産党幹部から雇われた暴漢たちと当局関係者がここに来て、父たちを襲ったのだ」
「兄はテントの中にいて、父は車のなかにいた。暴漢たちは車を叩き始めた。父は外に出ようとしたが、襲ってきた。兄も殴られ、背中の骨が折れた」
タンは、BBCの記者に問題の土地を示した。その時タンは、彼の家族を襲った暴漢たちが、自分たちのことを見張っているのではないかと神経質になっていた。
付近一帯を指さしてタンは言う。「この辺り一帯を商業地にしようとしている。ショッピングモールを作るらしいが、付近の土地を保有している家族は100世帯にも上る」
ここに来れば、何故この土地に価値があるのかが分かるだろう。通行量の多い通りの向こう側には、役所の新しい建物が立っている。大きくて白くて光っている。その隣には、新しい警察署もある。そして、この一帯の開発計画を示したポスターが掲示してある。
ウェイファンは、人口が100万人あり、急速に発展している。巨大なオフィスビルやマンションが立ち並び始めている。地方政府は、農民から安く土地を買収し、そしてそれを高い価格で売ることによって利益を挙げる。
中国には現在、この規模の開発計画が100件ほどあり、中国全土で紛争が絶えない。タンと村民たちは言う。補償金が余りにも安すぎる、と。開発がなされた後には、彼らの土地は100倍の価値になる、と。
タンが憤っているのは、余りにもやり方が酷すぎるからだ。家族を襲撃するなんて。タンは、家族を襲った者たちが厳しい措置を受けないのは何故なのかと警察に聞いた。何故地元の共産党のトップは、一時拘束された後、釈放されてしまったのか、と。
地元警察は、村の共産党の幹部が別の地元の幹部と会い、そして彼らが地元の暴力団に電話したことを認めている。また、村の共産党幹部が2万元(3100ドル)を支払ってタンの一家を襲撃させたことも知っている。
暴漢は今警察に拘置されている。しかし、共産党幹部は仕事に復帰しており、事件は決着していない。
どうして殺人未遂まで犯しておきながら厳罰に処せられないのか、どうして共産党幹部は、釈放されたのかについてタンは釈明を求めている。
警察は、彼らは喧嘩をしたという微罪で処分を受けるだろうと言う。
「地方政府のやりかたは酷すぎる。こんなことが許せるか」とタンは言う。「地方政府は暴漢を雇い、
我々を殺そうとした。ここでは生きていくことができない。北京に行って、誰か偉い人に会いたい。ここでは問題の解決しようとしないからだ」
しかし、タンは北京にはいかなかった。彼は、この話をBBCの記者にした後、警察に連行され、決してウェイファンから離れないように警告された。そして、現在はずっと当局から監視されていると言う。
この事件は、余りに典型的な事件だ。地方政府、警察、裁判所、そしてメディアが全て共産党に属するとき、明らかな利益相反が生じる。説明責任が果たされることはなく、腐敗の根絶は難しいということなのだ。
全人代で、中国の首相が腐敗という言葉を口にするほどだから、実態は大変酷いものでしょう。