●「高橋是清の財政金融政策に学べ」(EJ第3206号)
2011年12月21日 :{Electronic Journal}
12月16日のEJ第3203号は、自民党の山本幸三議員が衆議院財務金融委員会において、国債の日銀直接引き受けについて、野田首相、白川日銀総裁、五十嵐財務副大臣に質問した件を取り上げましたが、その後半で山本議員は当時の野田財務相に対して次のように要請しいているのです。
昭和恐慌のときの高橋是清の歴史をよく勉強してほしい。高橋は日銀の直接引き受けを行い、殺されるまでの間に日本経済は活況を呈している。物価は安定し、上がるといっていた金利は下がり、株価はどんどん上がったのである。それをやるのが財務大臣としてあなたの仕事である。
──山本幸三議員
高橋是清の思い切った財政金融政策によって、日本は昭和初期の深刻なデフレを脱却し、経済の活性化を取り戻したのです。とにかくデフレを脱却することがいま一番の課題なのです。
しかし、これに対して野田財務省は、山本議員に対し、「議員のおっしゃることもわかるが、それとは違う意見を持つ専門家も多数いる。それを総合判断するのが私の仕事だ」と答弁しただけなのです。そもそも国債の日銀直接引き受けが毎年行われていることすら知らなかった財務相の知識レベルでは、高度の政治判断など下せるはずがないのです。変化の時代にこのような人が首相では日本は衰退する一方です。
国債の日銀引き受けは、国が災害などで緊急に巨額の資金が必要なとき、復興債を発行し、それを日銀が直接引き受ける、いわゆる国債のマネタイゼーション(貨幣化)であって、やってはならない異常な方法だと思われています。しかし、高橋是清は国債のマネタイゼーションなど行っていないと池尾和人慶応義塾大学経済学部教授は次のように述べています。
高橋財政期における日銀引き受け比率は、国債発行額の80%以上を占めていた。ここで留意すべきは、国債の日銀引き受けは「発行方法」の1つだという点である。換言すると、国債の日銀引き受けは、引き受けた国債を日銀がずっと保有し続けることを自動的に意味するものではない。 それとは反対に、高橋財政期における日銀引き受けは、売りオペ──民間金融機関への売却を前提として行われたものであった。日銀は、速やかに引き受けた国債の市中売却を進め、高橋財政期中は、総引受額のほぼ90%を売却している。このように実態的には国債は市中消化されていたので、国債の日銀引き受けにもかかわらず、国債のマネタイズ(貨幣化)は抑制され、ベースマネーの増加もそれ以前の緊縮政策によって収縮していた分を回復させた程度にとどまっている。
戦前期の日銀国債引き受けの実態
blogos:2011年05月24日
山本議員が野田財務相に「高橋是清の歴史に学べ」と迫ったのは、ちゃんと史実を検証すれば、高橋是清が単なるマネタイゼーションを行ったのでないことはわかるはずである──このことをいいたかったのだと思います。
まして、未曽有というレベルさえ超えた東日本大震災のようなときに、日銀の国債直接引き受けという発行方法を使わず、増税するとは!?日銀総裁も高橋是清の財政を本当に研究しているのでしょうか。勉強家の白川総裁ですから、知っているとは思いますが、大いに疑問のあるところです。
年内に消費増税の素案を作るスケジュールはいささかも揺るがないと明言した野田首相が苦境に追い込まれつつあります。なぜかというと、公務員給与削減、議員定数削減など自らの身を切る改革に何も手がついていないことが問題になっているからです。
公務員制度改革など最近は話題すらなりません。
かつて野田首相はこのようにいっていたのです。2009年6月17日の衆議院本会議での発言です。
私どもの調査によって今年の5月に、平成19年度のお金の使いかたで分かったことがあります。2万5000人の国家公務員OBが、4500法人に天下りをし、その4500法人に、12兆1000億円の血税が流れていることが分かりました。 その前の年には、12兆6000億円の血税が流れていることが分かりました。消費税5%分のお金です。先の首都決戦の東京都政の予算は、一般会計、特別会計合わせて3兆8000億円でございました。これだけの税金に、一言で言えば、シロアリが群がっている構図があるんです。そのシロアリを退治して働きアリの政治を実現しなければならないのです。残念ながら自民党、公明党政権には、この意欲がまったくないと言わざるを得ないのであります。渡りも同様であります。
年金が消えたり消されたりする組織の社会保険庁の長官。トップは辞めれば多額の退職金をもらいます。6000万、7000万かもしれません。そののちにはまた、特殊法人や独立行政法人が用意されて、そこでまた高い給料、高い退職金がもらえる。
また一定期間行けば、また高い給料、高い退職金がもらえる。またその後も、高い給料、高い退職金がもらえる。6回渡り歩いて、退職金だけで3億円を超えた人もいました。まさに天下りをなくし、渡りをなくしていくという国民の声にまったくこたえない麻生政権は、不信任に値します。
──植草一秀著/青志社刊
『日本の再生/機能不全に陥った対米隷属経済からの脱却』
このときの勢いはどこへ行ったのでしょうか。国民はそういう発言をしていた民主党を支持し、政権交代させたのです。ところが、首相の地位に就くと、公務員改革などどこへやら、ひたすら財務官僚の手のひらで踊っているように見えます。そしてひたすら自らの地位にしがみついているようにしか見えません。まさに民主党の危機的状態です。
── [財務省の正体/32]
≪画像および関連情報≫
●ライオン宰相と高橋是清/晴耕雨読のブログ
昭和恐慌は、第一次世界大戦時の好況の反動が発端である。
1914年第一次世界大戦は起ったが、日本は戦場にならず輸出の増大で日本経済は大いに潤った。しかし大戦が終わり列強が生産力を取戻すにつれ日本経済は落込んだ。1920年以降、日本経済はずっと不調が続いた。
特に27年には金融恐慌が起り、取り付け騒ぎや銀行の休業が到るところで見られた。
ところがこのような経済が苦境の最中の29年に発足したのが、浜口幸雄内閣であり、蔵相が元日銀総裁の井上であった。なんとこの浜口・井上コンビはデフレ下で緊縮財政を始めたのである。ところが浜口首相は「ライオン宰相」として国民から熱狂的な支持を受けていた。
前の田中義一首相が、腐敗などによって国民から反感をくっていた反動と思われる。
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